第一章 希望選士ガムダル編

かませ犬令息ジュリアン・メレッセ

仰臥のままヘッドボードの宮棚からカガミをとり、覗く。


絹糸のような長い金髪を胸許にまとめた碧眼、白い肌。


「女か?」


発声して男だと気づく。

肝が冷えたぜ・・・


ハマミ殺した妻がこよなく愛していたスーパー人類、白人だ。


は?害虫のような言い方すんなって?白人に対する差別だ??


おいおいヒガミはよしてくれよカラードの諸君www

今じゃ俺が白人、超越という品詞はそのまま差別属性のハイクラスにあるという意味さ。


「さ」とかで〆ちまったぜ、まったく美しい人種てのは罪深いぜフフフ・・・


おっと、つい「ぜ」とかいっちまっ・・・キリねえ。


なんか天使とか書かれた薄暗い天井からびみょ~にキラキラしてる薄絹の垂らされたフッカフカのベッドに起き上がると、そこはデカい部屋だった。


ベッドの外は天井もめたくそ高い。


つかベッドで寝たのなんて何年ぶりだよ・・・嫁にいびられるので怖くて家に帰れずネット喫茶泊まりの生活後は留置所→拘置所→刑務所キャンセル死刑だったし・・・あ、留置所はベッドだった。つか、今寝てるコレ↓と比べたら足のついた寝板て程度だが。


・・・いや、比べなくても板だったわw脚も無かったwww


懐かしの前世はともかく、さっそくウソムーヴ開始だな。


「誰ぞある!」


こんなベッドに寝てんだから貴族だろ。

貴族語などなろう小説読み専の俺なら楽勝にすぎる。


・・・誰もこねーよ。


突然、前方右横に輝く窓が開き、白人美女のバストアップが投影された。


「リィル、起きて熱が下がってたら学校へ行くのよ。お母さんも父さんも来週までもどらないからってサボっちゃだめよ?ではね」


消えた。


・・・魔法か?!


いや、かーちゃんの服カラーブラウスにジャケットだったな。

髪は波をそろえたショートパーマだった。


どーみてもゴシック系貴族て感じではない。


つかリールてなんよリールて。北欧神話か?


栗どらに名前だけ出てきた・・・海洋神だっけ。

マナナンとかおいしそうな名前がついてた・・・


風鈴のような音が部屋に響いた。


「よいぞ」


何がいーんだよ、とヒトリ突っ込みしながら入室を促す。


「ジュリアン様、お召替えです」


どやどやとおば・・・お姉さま方が入室してきた。


五人か。


よし、ここからか?


「おい、わたしはどうなったのだ。昨今の記憶が無いのだ」


「お召替えをどうぞ」


やべえ、地球の言葉が通じない。


ベッドを降りるとすばやくお姉さま方が傅き服を着替えさせてくれる。

つか俺の背丈、けっこうあるんだが・・・みんな俺の肩より低いし。


足台に登ったお姉さまが金の長髪をブラシで掬い上げ、高く掻き上げながら前方へと倒れ込むリーゼントのようなヘアスタイルにまとめてゆく。


これつべの垂らしたままのがモテる髪型七選で見たことある。


身だしなみがすむと、ドアへむかってズラリと整列する。


出るしかねーじゃんwww


部屋を出、天井の高い廊下を足の向くままに進んでゆくとドンツキ廊下の突き当りの大扉の前で二人の白服が礼の後ドアを開ける。


何人雇ってんだよ、なんて感覚が現代の延長て感じで全然落ち着かない。


めたくそ広い部屋の真ん中にクロスのかかったテーブル。

奥に五人()ほどの弦楽団。


おば・・・お姉さまが引いた椅子に座ると、ヒィ~とバンシーの悲鳴のような音からゆったりと明るい和音になり涼やかな音楽が流れる。


楽譜通りしっかり弾いてる感じだ。えらいぞ。

大学んときの弦の奴らを思い出す。

マジで楽譜みねーやつばっかだったからな・・・


そうだ、白人になったんならスタビ抜きでバイオリン咥えられるかもしれんな。

試してみるか。


カリ城で伯爵が食ってたような卵をシュポンと食うと、楽団に向かう。


「バイオリン、貸してくれ」


演奏を止め、二人のヴァイオリンヴァイオルとヴァイオリナか?がむちゃくそ「はぁ?!」てカオしてる。

まあ、商売道具だし無理か。


「フン、失礼だったかな。済まん」


なんで謝罪すんのに鼻で笑うムーブすんだよ俺。


「いえ、どうぞ」


席に踵を返そうというところでヴァイオリナの方がネックを立て差し出してきた。


「うむ」


ナプキンを・・・椅子に投げ、給仕に新しいハンカチをとらせ、畳んでアゴ当てに置き咥えてみる。


「ほぉ~、肩と鎖骨だけで安定するか」


鎖骨までの広さか。

それとも肩の位置かな?


「どうぞ」


弓を差し出してくる。


「いや、それはいい。赤松のヤニをべっとりと塗らんとスコスコ音しか出せんのだ」


「赤松?・・・ダークならこちらをお使いください」


二本目の弓と粉を噴いた濃い紅茶色のヤニを差し出してくる。


「フフ、音を出すまで許さんか」


はい、と小首を傾げ軽く笑むヴァイオリナ。

めたくそかわええええ!!!!!!


張りを見、それなりの量を擦りつけ腕とボウの長さを見る。

二弦ずつ擦って音を見る。

まぁ弾いてたんだし合ってるよな~と、四弦解放からの怒涛のアルペジオで一気に一弦まで駆け上がる。


このゴエゴエ音から一気にバイオリンの骨頂、高く細い哀調に移行すんのがもう何度やっても射精モンのエクスタシーなワケよ。つかウデも長いのかすんげーたっぷりとボウイング出来る。やっぱ白人専用楽器ってワケか・・・




あ、やべwwwヤニ(松)のケムリ立ってるwwwww


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