第46話

「……っ、このままで、終わってたまるか……!絶対春樹を殺すんだ!!」


 まだ麗華は諦めていないらしい。が、そんな彼女にアグライアは無慈悲な一撃を繰り出した。


美の神アプロディテ!!」


「斬首」


 麗華がスキルを発動させた瞬間、アグライアは監獄の上にギロチンの刃を生み出し、それを彼女の首に向けて落とした。


「あな──」


 そして麗華はあっさり死んだ。最後に何かを言おうとして。


 僕を止めようとして、なんともまぁ……ある意味一番僕に人生を狂わせられた人、と言えるのかな。


 どうでもいい。


 彼女が勝手に熱くなって、変な事を言っていた。それだけだ。例え下位の神々に誑かされていたとしても、一部彼女の言葉には本心が見え隠れしていた。


 つまり彼女は進んで味方したのだろう。


 今後最上位神たちはこんなことが起きないように気をつけて欲しいものだ。


「さて、と……」


 周りを見ても、どこもかしくも死体だらけ……むごい。


 地獄絵図そのものだ。


「片付けめんどくさいなぁ──」


 僕がそう思いながらネヴァの手を繋いて魔力を補充しようとした、その時だった。




ドンッ!!!!




「「っ!?」」


 突然地震かと思うほどの振動が僕たちを襲った。

 原因は一体──


『っ!?ま、まさか──!?』


 ヴァニッシュドラゴンが王都の外を魔法で見たのだろう、驚愕の声をあげていた。

 しかし、スタンピードがなんで今起きて……まさか。


「天使が死に際に使ったあの美の神アプロディテで、王都周辺の魔獣を呼んだのだろうな。全く、余計な悪あがきを……めんどくさい」


 確かにアグライアの言う通りめんどくさい。


 対処……どうしよっか。


「取り敢えず行こっか」


「えぇ……私もうメグに体戻していい?」


「あなたが殺したんだから最後まで責任を持ちましょう」


「……はぁい」


「ネヴァもいいかい?」


「……うん」


 僕らはキエルにもう一度転移魔法を使ってもらい、王都の外へと向かった。


「……うわぁ」


 そして目の前の光景に思わず嫌な声を出してしまった。

 

 視界いっぱいに広がる魔獣魔獣魔獣。正直気持ち悪い。


「……これ、どうしよ」


 目算だが魔獣の数はおそらく万を超えているだろう。きっとメグがいた村にいたグレムリンらとかも来てるんだろうなぁ……走れば辿り着ける距離だし。


 数だけ多いグレムリンとか、ウルフとか……処理がめんどくさいだけだ。


 一掃したいが僕にはその手立てがない。


「……ミリア王女に全てを任せたいなぁ」


「──それは良くありませんね」


「?」


 すると突然、ここにはいないはずの声が後ろから聞こえた。


 振り向くとそこには──




「──あなたも最後まで働いてもらいますよ。このように、ね!」


 そう叫びながら少女──ミリア王女が横に腕を振るった。それは僕らがこの世界に召喚され、あの国語の教師を殺した時と同じように。


「「「「GAAAAAA!!!!」」」」


 その瞬間、彼女の腕から風で出来た巨大な刃が魔獣の群れに向かって放たれた。

 その結果は凄まじいもので、流石は、その威力は通常放たれるものよりも遥かに凌駕するものだった。


 目の前にはさっきとはまた別の地獄絵図が出来上がった。


「ふぅ……全く、余計な事を死に際にしてくれたものですね」


「ミリア王女、神の権能を使ってはいかがでしょう?」


「それを私の前に横にいる2人に言っては?」


「確かに」


「私は別にいいけど……戦闘向きじゃないのよ」


「私は……近づかないと」


「だそうです」


「むぅ……まぁいいでしょう。これで報酬の件はチャラってことで」


「えぇ……それとこれとはまた別でしょう」


「ですが、これはあなたと同郷の者が起こしたものですよ?」


「その同郷の者を誑かしてこのようなことができるようにしたのはあなたの同僚ですが?」


「む……」


 するとミリア王女は僕の言葉に何も言い返せずに少しだけ黙った。


「……いいでしょう」


 もうこれ以上は無理だと悟ったのか、ミリア王女は嫌々承諾した。その顔にはめんどくさいと言いたげな感じではあったが。


「魔獣の中には彼女の魅了に誑かされなかったものもいます。魔獣とはいえあんなものでも私たちにとっては子供同然。人間と同じように扱わなければなりません。ですが、今回、神の座に胡座をかいたばかりかいらない欲を出してしまったものに巻き込まれてしまった。仕方ないでは済まされない。これから行うのは我々神による罪造つみづくり。今後このようなことがないよう、改めて行かなければいけない」


 そう告げながら、彼女は少しずつ力を貯めた。魔力とは別の、得体の知れない神々しいものだ。


「今から起こることは戒め。私が私自身に刻む戒めです。これを見ている下位、中位の神共、見ていなさい。私は今からあなたたちの尻拭いをしますよ」


 そして、彼女は静かに言葉を紡いだ。


「私はこの身に刻む。。アグライア、ネヴァルガル。あなた方も刻んでもらいますよ。流石に私だけだと、ちょっと辛いです」


「あぁ」


「わかった」


 瞬間、彼女たちの身に黒い杭のようなものが胸に刺された。


「「「っ!?」」」


 3人は苦しそうに顔を歪ませるが、それでもなんとか耐える。


 確かアグライアにとってこの戒めは二つめだった気がするが……大丈夫なのだろうか。


「っ、ちょっとこれはまずいね。流石に今まで見たいに力は振えなくなるか……ま、仕方ない。元々最上位神っつう立場からは退こうとは思ってたんだ。丁度いいね」


「ですが、下手な中位よりも力は残ってるではありませんか。バカなことは言わないでください」


「へっ、まぁそうだけどね。でもこの地位はちと堅苦しい上につまんないからね。メグの今の生活を見守っていた方がずっと面白いさ」


「確かに。私もハルキと街を見て回りたい。ミリア──ガブリエルが作ったこの街を」


「むぅ……そう言われると照れますね。確かに、私も王女として働いていた時の方が面白かったのは事実ですし……どうせこれが終わっても大量の報告書を処理しないといけないんでしょうね……」


 そうやって軽口を3人で叩いていると、黒い杭は静かに彼女たちの中に入っていった。


「ふぅ。これで大丈夫ですね。では、始めましょう」


「僕も、できる事をやりましょうか」


 僕も思考加速アクセルを施し、拳に魔術を込める。


 そして彼女たちがさっきよりも近づいてきた魔獣の群れに攻撃しようとした、その時だった。







「──最上の猛炎グランドファイア


 魔獣の群れの奥から、強烈な炎が吹き上がった。


「……あれは?」


「どうやら、間に合ったようですね。大丈夫です。あれは僕の協力者のものですよ」


最上の猛炎グランドファイアにしては威力が強すぎるのでは?」


「彼女曰く、んだと。それに加えてスキルによって効果を上げた強化魔法によって威力と速度を上げています。なのでこのように──」








 ──火の海を作り出せる。



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 追記

 やったぜ5万PV。


 

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