第45話
「──は?」
「ふぅ……」
正直不安はあった。だってなんも練習もなしにやったのだから。スキルの効果を消すなんて事。
ベットしたのは僕の命。
そしてその賭けは見事成功した。
「な、何をしたの……?魔力を頭に流しただけで、思考加速をさせただけでそんなこと……神の力に対抗できるなんて……ありえないっ!!!」
悲痛な叫びがネヴァが作り上げた世界に響く。
「ありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないありえないっ!!!!!!!」
彼女の叫びは咆哮へと変わり始めた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!」
彼女の魔力が高まり始める。そして彼女は手を伸ばし、そこから溢れんばかりの空が吹き出した。
「
自尊心の塊。
きっと彼女は僕を止めるとか言っていても、どこかで僕を見下していたのだろう。日本で散々僕に辛酸を舐められたらしいけど、そこで学ばなかったのかな?
僕よりも劣っていると。
「僕よりも強いスキルを得て舞い上がったのかな?どうでもいいけど」
「お前は殺す!!神に逆らうなァァァアァ!!!!」
そして溢れた空は弾丸の形へと変わり、僕らに向かって音速を超えて飛んできた。
「残り魔力、結構心許ないけど……まぁ使い切るか。
魔力を頭に流すだけ、と彼女は言っていたけれど、実際口にするのとするとではかなり違ってくる。
だって、頭というかなりデリケートな部分を強化するのだ。一歩強化具合を間違えれば、脳が破裂する。頭蓋骨の中が脳の破片でいっぱいになるのだ。
考えるだけで恐ろしい。
そこで僕は一つの技術としてそんな危険な行為を確立させた。
それが──魔術。
「魔術なら、魔力を元々あったレールの通りに動かすだけで適切な効果を引き出してくれるからねぇ!!」
だが欠点として、決まった魔力を流すため突発的なパワーアップが行われることはない。
魔法みたいに感情を昂らせて効果を上げるとか、スキルの効果を重ねるとか、そう言ったことができないのだ。
が──
「魔法が使えない僕にとって、かけがえのない奥義みたいなもんだ!!」
思考加速によって引き延ばされた時間の中で、透明な空気の塊に色をつけて視界に写す。
そして向かってくるその塊にさっき同様拳を重ねる。
だが自分の動きもスローになっているので、それを考えて動かないと認識と動きのズレが生じてしまうので気をつける。
ちなみに、スキルの効果を消す、という魔術は存在しない。
「このままだと動きが間に合わないかな……?」
「うん……それだとすぐにガス欠……私の魔力、使う?」
「うん。よろしくお願いするよ。でも大丈夫?
「問題ない。今グリモンドたちの魔力を吸収したから」
なるほど。つまり──
「……」
「……気にするな、とは言わない。けど、これも定めだよ。乗り越えなきゃ」
「……うん」
泣きそうなネヴァにあえて少し厳しめの言葉を告げる。今まで一緒に過ごしてきた、あの時だけは家族同然だったのだ。
僕は逆に、そう悲しめる優しさが残っていることに安心した。もう僕の魔力は無くなりそうなのだが。
「まだ……続くのかな?」
「あぁ、それはもう大丈夫だ。私が終わらせる」
「アグライア?」
と、僕が弱音を吐いた時、横で適当に対処していたアグライアが初めて動き始めた。
「ちょいと待ってな」
そう言って彼女は自分に向かってきた弾丸を全て弾き返しながら魔力を片手に込め始めた。
「ここに来た時発動させた
そう言って彼女は地面に両手をつける。
「魔王ネヴァルガル、君のフィールドは穢さないから安心して欲しいな。あくまでも、ピンポイントに私のスキルを挟み込むだけだから」
そしてとある場所──麗華のいるところの地面から突然鉄の棒が飛び出した。
「っ!?」
その瞬間、今まで出ていた空気の弾丸が止まった。
「これは……!」
「これが
制裁を加えると言っても、それが暴力か法か……いろんな方法が存在する。その中でもその監獄は法で裁く、というコンセプトなのだろう。
この場合の法はアグライアか。
「神の法。不愛の監獄」
「な、何これ……出れないっ!!」
麗華が何をしてもその監獄にヒビが入ることはなかった。
「弱いものいじめは正直美しくないから……終わらせてもいいよね?ハルキ」
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