第44話
「……アグライア」
深山がそう呟いた。その声に少しの期待が含まれているのはなんで──あぁ、そう言うことね。
「
彼女は焦っているのか今の状況を把握していなかった。
よりにもよって一番の悪手を取ってしまったのだから。
「……ふん」
転移魔法によって呼び出されたメグ──神アグライアは即座にそれをいとも容易くレジストした。
どころか──
「うっ!?」
逆に深山が苦しむ結果となった。
まぁ無理もない。未だ深山はこの世界の神の序列についてちゃんと理解していないのだから。
まさか、アプロディテも序列下位だとは思うまい。
僕たちの世界ではアグライアはアプロディテの下だったが、この世界では逆だ。しかも、アグライアがアプロディテの上司ですらある。
故に、効かない上に跳ね返してしまう。
「馬鹿だよね。ほんとさ」
「……っ」
「さっきの話聞いてなかったの?麗華の持つ神の権能はどれも下位の神だけなんだよ?」
「っ、でもっ!」
「でも?神の序列はこの世界の中で一番厳しいんだよ?だって神はこの世界を管理しなきゃいけないんだからね。そこをしっかりしないと反乱が起こった瞬間世界が終わるんだもの」
アグライア、ネヴァルガル。こっちには最上位神が二柱揃っている。
に対して向こうは下位神三柱。
魔獣とランバルトは正直話にならない。だってこっちにはヴァニッシュドラゴンがいるのだから。
「キエル」
『ええ分かったわ。今から使うからちょっと待ってなさい』
そう言ってキエルは咆哮を上げながら秘めていた魔力を解放させ、本来の姿を取り戻した。
圧倒的な力の塊に、麗華たちは体を硬直させてしまった。
ヴァニッシュドラゴン。
この世界に他といない唯一の
そして龍神も最上位神の一人。その
実際はどうなのか見たことはないけれど。
『グリモンドドラゴンたちは任せて!すぐに殺すから!』
「うん、よろしく」
と言うことで彼らのことはキエルに任せて、僕とアグライアとネヴァルガルは麗華に向き合った。
その麗華は顔を盛大に歪ませながら、僕たちを睨んでいた。
「……っ、どうして、どうしてこんな──」
「どうしてって……何を今更。そもそも僕を捕まえる準備をするんだったら証拠を残しちゃ駄目じゃないか」
そう言って僕は懐から一枚の紙を取り出した。古びた紙だ。だが、これのおかげで今の状況を作り出せたのだから。
「これはね、とある人が残した手記だよ。書いた人物は、エヴォルガル」
「っ!?」
その名を僕が口にした時、僕の横で驚いたように体をビクッとさせた人がいた。
──ネヴァだ。
「お、お父さん……」
そう、僕は前に一度だけネヴァがいた村の跡地を訪れていたことがあった。
ネヴァの村は数年前に滅んでいる。その事をネヴァは知っている。
そして村を滅ぼした人物も、知っている。
でも──
「エヴォルガル……ネヴァのお父さんはね、まだ幼かった頃にその頃何があったのかを綴った日記を記していたんだ。その中に警告とも呼べるようなものが記されていた。それが──」
──天使の皮を被った悪魔が我らの国を支配しようとしている。
──これを読んでいる人がいたとしたら気をつけて欲しい。
──あれは神の使いではない。
──我らを滅ぼそうとする死神だ。
「そう、死神だ。魔族からしたら死神そのものだったんだよ、麗華は」
「……全ては、あなたを止めるため。仕方ないのよ。必要な犠牲だわ」
「必要以上の犠牲が生まれているよね。僕だったら必要最低限の犠牲は超えないよ」
「……そんなの、どうでもいいわ。あなたを止められるなら、それで──」
そして麗華は体の魔力を動かし始めた。徹底抗戦をする気なのだろう。
下位の神などという紛い物ではない、本物の、最上位の神に。
「ミリア王女が言っていたことは正しかったようだ。下位の神々が近々反乱を起こそうとする、と」
「む、そうなのか?」
「うん、そうだよ神アグライア。下位、中位の神々は今の地位に不満を持っていて、それを改善するために麗華を使ったんだと。でも彼女が僕を止めるだけに行動していたから途中でアプロディテが思考を少しずつ操作して、今のこの世界の状況を作り上げた──カルナル教と言う宗教を生み出し陰からこの世界を回し、信仰心によって自分達の神としての格を上げる……とミリア王女は言っていたよ」
「なるほど。下位、中位の神が、ねぇ……現界している神は私とネヴァルガル以外にいないのかい?」
「神ガブリエルが。それ以外だと……キエルに聞かないと分からないかなぁ……あ、でも待ってその前に──」
そう言って僕は自分の中に少しだけ残っている、前にネヴァから吸収していた魔力を練り始める。
それに気づいた麗華は即座に僕に向かって攻撃を仕掛ける。
「
透明な弾丸が彼女の手から発出される。それは空気を横に裂いて真っ直ぐ僕の方に向かってくる。
速度からしてきっと対物ライフル以上だろう。つまり、当たればひとたまりも無い。僕の体は粉々になってお陀仏確定だ。
が、問題ない。
自分に向かってくる攻撃が遅く感じる。
「……っ!」
そして僕に当たる直前、僕は拳をその空気の塊にぶつけた。
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追記
10/13 誤字修正致しました。
追記
新作書きました!!良かったらこちらも読んでください!!
チョロイン、覚醒す〜彼女を陰から見守る僕の観察日記〜
https://kakuyomu.jp/works/16817330665421236123
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