第41話

 120年前、とあるカルナル教の教会にて。

 これはとある村の教会の牧師による証言に元付いたものである。


 その日はいつも通りだった。森から流れる心地いい風と、村から聞こえる元気な子供達の声。

 

 牧師がいつものように教会にて神に祈りを捧げていた時だった。


「っ!?」


 牧師が祈りを捧げた後ゆっくりと目をあけたその瞬間、教会全体が光に包まれた。

 あまりの眩しさに思わず手で目を覆ってしまった。


「……あ、あれは」


 それが収まった後、牧師は静かに目を開けた。すると突然教会の上から光が差したと思ったら、そこから人がゆっくりと降りてきたではないか。


「……あ、あなた様はもしや──」








「私が──神です」


 空から降りてきた私は、咄嗟にそう名乗ってしまった。が、ある意味間違ってないと思う。だって私は天使で、一時的にとはいえ神の権能を使えるのだから。


 そして私は思いついた。


 120年前である今、私が神カルナルとしてカルナル教に指示を出して、少しでも春樹を止める手段を増やすことができるのではないか、と。


 別に私は春樹を殺そうとは思っていない。ただ静かにどこかで何もせずに暮らしてほしいだけだ。


 彼はひとたび考えて行動するだけで人災が起こってしまう。それも故意にだというのだから質が悪すぎる。


 だったら何もしてもらわない方がいいだろう。彼の性根は変えることができないところまで来ているのだから。


「牧師様」


「は、はい!」


「今すぐ私を教皇のところまで連れて行きなさい」


「ははぁー!」


 それから私は偶然降り立った教会の牧師様の案内で、カルナル教の総本山へとやってきた。


 当然いきなり教皇に会わせろと言っても無理があるので、ちょっと美の神アプロディテを使い、カルナル教を私の言いなりにした。


 これで美の神アプロディテも残り二回。


 しかし、回数制限が億劫だなと感じていたその時、教皇が声をかけてきた。


「カルナル様」


「なんでしょう」


「ご無礼を承知で申し上げますが、今のカルナル様には地上へ顕現為された影響か、スキルに制限が設けられているのでは?」


「おや、分かりますか」


「ええ、それは勿論、私ほどの信仰心があればカルナル様の不調など一目で分かりました。故に申し上げます。スキルの制限を掃う数あるうちの一つの方法──覚醒についてです」


「覚醒……」


「はい。覚醒というものはある特定のスキルに起こる、スキルの限界の殻を破るというものです」


「なるほど。頭打ちとなったスキルを更に強化するための方法、ということですか」


「はい、ですがその解釈では少し異なります。スキルを強化するのではありません。。今回、カルナル様は未だ不完全な状態に在らせられます。その原因はスキルにあると思われます。なので、元の神の姿に生まれ変わることができれば、十全な力を振るうことができると、私は愚考いたします」


「なるほど……」


 それから私はスキルの覚醒について教えてもらった。


 スキルを覚醒させるにはまず魔力操作の技術を上げる。

 スキルは魔力によって運用されているため、その操作が長けていればその分スキルも上手く使える、ということだ。

 だがそれではただスキルが上手く使えるだけ。そこからスキルを生まれ変わらせるには一旦


 スキルを空にする。私はそれを聞いてもピンと来なかった。


「スキルを空に……どういうことですか?」


「単純です。覚醒できるスキルというのは必ず。故にその制限を取っ払うために、スキルを使い切るのです」


「……」


 スキルを使い切る……なるほど。


 つまり空になったスキルに新たなスキルが、それも元のスキルを強化したようなスキルが生まれると解釈すればいいのかな。


「……分かりました」


 だったらなるべく有効活用しないとね。







 彼の思考を逆算する。


 きっと彼はこの世界でも暗躍と言っていろんな人の人生を狂わせるだろう。そうした時彼は何を利用するか。


 そう考えた時真っ先に思いついたのは魔獣だ。


 意思疎通ができない魔獣を本当に使うのか分からないが、魔獣を味方につけておけばきっと優位に立てるだろう。


 そう考えた私は早速魔獣全てを私の従僕にするために、天使スキルを使った。


時の神クロノス、起動」


 まず最初に私以外の時を止める。これをすれば魔獣は気づくことなく私の従僕になるだろう。


美の神アプロディテ、起動」


 そして時が止まった世界で美の神アプロディテを起動させる。

 私を中心に何かが広がった。


 美の神アプロディテの効果は単純で、敵味方関係なく私に従わせることができるというもので、その効果は対象の無意識のところに侵食する。そのため私にもし命令されたとしてもそれに対して違和感を持つことなく従ってくれる。


 言ってしまえば洗脳である。


 それを全ての魔獣に植え付けた。


 そして時の神クロノスの効果が切れた。と同時に私の視界は色を取り戻した。


 その後適当にスキルを使い果たすと同時に魔力操作の訓練を行った。

 しかし流石天使スキルと言うべきか、魔力操作はすぐにマスターすることができた。


 そしてついにその時は起こる。


「っ!?」


「始まりましたか」


 突然強烈な力が私の空の器に満たされ始めたのだ。



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 追記

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 追記

 ☆が下がりました(10/10 17:23時点)。なんで。

 

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