第39話

「──ふっ」


「っ!?」


 俺は一瞬で魔王のそばまで近づき、片腕を切り飛ばした。


 さっきよりも身体能力が上がっている。


 これがスキル勇者の真の力だ。


 ついに魔王の顔を焦燥に染めることができた。


「みんなっ!!今なら魔法が効くはずだっ!!」


 俺は聖剣で奴の体を切ったと同時に、奴の特性だった魔法耐性も無効化していた。

 奴の魔法耐性は強すぎたせいで魔法を跳ね返すほどにまでなっていた。


 それを俺は無効化することができた。


最上の猛炎グランドファイア!!!」


「風神切断!!」


「ハイドロブラスター!!!」


 みんなが最高火力の魔法を放つ。それに合わせるかのように西や久馬ら前衛組も自分が放てる最高火力の技を放った。


「絶剣、楼斬り──改っっっ!!!!」


あぎとっ、ストライクバイトっ!!!!」


裁縫さいほう──棘束縛!!」


「ファイアスラッシュ!!」


「っ!?」


 魔王がみんなが今できる最大の技を何とかしのごうとするが、間に合わなかった。

 俺が片腕を切り落としたことも影響したのだろう、彼女の体にえげつない程の傷がついた。


「はぁ……はぁ……」


 俺がただ腕を切り落としただけでこれほどまでに戦局が変わった。


 これが、俺の目指すべき強さだ。


「これで──終わりだ、魔王」


「……っ、ま、まだ」






「これで終わりだっ!!!!勇者の一撃ブレイブスラッシュっっっっ!!!!!」






「あああああああ!!!!!」


 魔王の断末魔と共に、今までで一番の強烈な光の斬撃が奴を襲った。


 

 その斬撃は光そのもので……俺以外の全員がその眩しさに目を背けた。それほどまでにその光は強烈だった。



 それはまるで一つの悪を滅ぼせると否が応でも確信させてくれる。



「……」



 徐々に光が薄れ始め……さっきまで魔王がいた場所を確認すると、そこには何もなかった。


 それを確認した俺たちは、少しずつ胸の奥底からあふれ出しそうな喜びを必死に抑えようとするが、そんなことは無理だった。




「「「「やったあああああああ!!!!!!」」」」




 俺たちは──ついに魔王を討伐したのだ。










「──は?」


 しかし、その喜びもすぐに打ち消された。


 俺たちが来た道を戻り、団長たちが戦っている場所まで行くと──






「だん……ちょう?」


 未だ残っていた数多の魔獣らの中心で──






 ──赤紅騎士団が壊滅していたのだ。



***



(side 甲崎春樹)


 僕は今、スラムにある魔神教の本拠地に来ていた。いつも通り、ランバルト達との打ち合わせを行うためだ。


 が──


「ランバルト?」


「──すまねぇな」



 グサッ!!



「っ!?」


 いつものように魔法陣がかかれたところに行くと、突然ランバルトが振り返り、何やら悲しそうな笑みを浮かべながら僕に謝った。


 そして僕がそれに疑問を覚える暇もなく、僕は突然襲いかかった横からの強い衝撃によって倒れ込んでしまう。


「うっ!?」


 脇腹に鋭い痛みを感じた。

 

 どうやら僕は刺されたようだ。

 

 いつもの僕だったら耐えてすぐに立ち上がれたはずだったが、うまく力が入らなかった。


 そのせいでその場に倒れたまま立ち上がることができないでいた。


「なん……で……」


「これも、仕事なんだ」


「し……ごと……?」


「あぁ。


「……」


 あぁ……久々に感じる腹の痛み。


 懐かしいな。


 僕はふと視界の端に脇腹に刺さっているもの──短剣が見えた。それで僕を刺したのだろう。

 しかしその短剣に僕は見覚えしかなかった。


「あれは……」


「そうだ。破魔の短剣──と偽ったものだな。本当の名は。刺した相手のスキルを封印するものだ。破魔の短剣?んなもんあるわけねぇだろ」


 なるほど。おかしいとは思っていた。


 あの時破魔の短剣と言っていた物に底知れぬ不気味さを感じたので前に少しだけ調べたことがあった。その効果は刺した相手の魔力を無くす、と言うものだった。

 しかしその時載っていた短剣の絵と違かったのが引っかかっていたのだ。


 あの時ランバルトはこの短剣は魔法の効果を打ち消すと言っていた。が、調べるとそれは嘘だった。


 それを調べたかったがランバルトが初めて会ったあの日以降見せてくれることはなかったので疑惑程度に留まっていたのだが……。


「しかし……誰に指示されたんだい?」


「やっぱ、そこは勘づくか。ま、使


「──あぁ」


 そして奥から足音が聞こえ始めた。


 僕は何とか顔だけ動かしてその音がした方を向いた。


 そこには僕が予想していた通りの人間がいた。




「久しぶりだね、麗華」


「……あなたを止めに来たわよ、春樹」




 めんどくさい相手であり、この世からすぐに消したい邪魔者の、深山麗華がそこにいた。


「そして、はいこれ。私からの再会を祝したプレゼントよ」


 そう言って彼女が倒れている僕の目の前に投げ捨てたのは1匹のトカゲだった。











「……キエル」



 僕は頭と胴体が別れた彼女の死体を見て、静かにその名を呟いたのだった。


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