第38話
「くっ……!」
「はぁ……はぁ……」
何度も何度も何度も何度も、俺たちは攻撃を魔王に喰らわせた。
だがすべて片手間で片付けられてしまった。
「……」
全ては俺たちの火力不足……俺たちが放てる最大火力を放っても彼女にはかすり傷一つつかなかった。
「……強すぎる。今まで出てきた魔獣の比じゃない」
「真田……魔王の弱点はあるのか?」
「……あるにはあるのですが……銀上君頼りになってしまいます」
「なるほどな。教えてくれ」
「ですが……これをしてしまうと銀上君の寿命が削れてしまいます」
「……」
真田は俺のスキルを自分のスキルで調べたのだろう。
確かに、勇者スキルには秘技と呼ばれる、強力な技がある。
だがそれは溜が物凄く長い上に、俺の今の魔力量では足りないため、生命力を魔力に変換しないといけない。
その為俺の寿命が減ってしまう。
だが──
「構わない」
俺と真田が今こうして話している間、みんなが魔王の足止めをしてくれている。
そして一人、また一人と傷ついている。
その傷は決して魔王からの攻撃によるものではなく、自分たちの攻撃を魔王が反射しそれに当たったり、魔王が放つ圧によって精神が脅かされたりしてできたものだ。
にしても、何故魔王は攻撃をしてこないのだろう。
いや、考えても無駄だな。
きっと俺たちを舐めていて、眼中にないからだろうな。
攻撃するだけ無駄とでも思っているのだろう。
そう考えるだけでイライラしてしまう。俺たちの力のなさと、勇者として魔王を倒すと誓ったのにそれが出来ていない不甲斐なさ。
それが俺の心を更に苦しめた。
「……」
自然と剣を握る力が強くなった。
「……俺は、やるぞ」
「……僕のスキルによると、寿命が20年以上縮みますが」
「構わない。俺は、魔王を倒さないといけない」
俺は弱くない。
勇者として世界に平和をもたらすため、そして勇者は最強だという事を示すため、彼女を殺さないといけないんだ。
「真田、みんなに指示を……俺の代わりに頼む」
「……分かりました。我の声を響かせろ──拡声」
そして真田は両手を前に出し、空中に魔法陣を魔力で組み、そして──
『みなさん、今から銀上君が溜め始めます!!なので、それまで引き続き足止めをお願いしますっ!!』
「「「「「──了解っ!!」」」」」
俺を信じ、みんなを信じてくれた。今頑張っている彼らの為にも、俺は──
「聖剣よ」
俺は持っていた剣を鞘にしまい、目を瞑って意識を集中させて魔力で剣を生成する。
「聖剣よ」
俺は生成した剣に更に魔力を込める。そのせいでミシミシと剣が音を立てて軋みだし、そして──
バリンッ!!!
粉々になった。
剣は持ち手だけになり、魔力の破片が俺の周りに散らばった。
が、それでも俺は魔力を込め続けた。
「聖剣よ」
周囲の魔力の破片が浮き始める。それは少しずつ俺に近づき、俺が着ている鎧に付着しはじめ、馴染み始めた。
更に持ち手だけだった剣が壊れた部分から再び生成され始める。
「聖剣よ」
そしてもう一度剣が完全に生成されるが、構わず魔力を込め続け、また粉々に砕け散った。
その破片がまた浮いては鎧に吸収された。
それを何度も繰り返す。
すると少しずつ俺の鎧が形を変え始める。
今まで感覚ではできるということは分かっていたが、しかし実際にやってみるとこうなるんだと、どうでもいいことを考えてしまった。
集中。
「聖剣よ」
鎧が完成した。その時点で俺の魔力は底をつき、寿命5年分の生命力を魔力に変換していた。
しかし、それでも俺は魔力を剣に込め続ける。
「聖剣よ」
何度も何度も壊れた聖剣は、何度も何度も生成されるたびにその強度を強くしていった。
一定の強度に達した聖剣はどれほど魔力を込めたとしても壊れることは無く、刃の鋭さ、強度、切れ味を増していく。
何度も何度も敗れたとしても立ち上がり、そしていずれ強大な敵を倒す……そんな勇者に相応しい剣へと変貌を遂げていく。
「──聖剣、エクスカリバー」
真名を告げる。
その名は俺たちの世界にいた、かの騎士王が手にしていた聖剣のものを借りたわけではない。
俺のスキル──勇者。
その真の名が、聖剣エクスカリバーだったのだ。
「──行くぞ」
さっきよりも体が重く感じる。一気に20年歳を取ったからだろう……だが問題ない。
俺は静かに歩み始めた。
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