第37話
一週間後。
「ここが……死の荒野」
俺たちは道中魔獣を駆逐しながら、とうとう魔王がいるとされる死の荒野に辿り着いた。
血の匂いが濃くなっている。
「何もない……ね」
「あぁ……」
みんな目の前の光景になにも言葉を発せなくなっていた。
「……アラン団長」
「ええ……どうやら、私はここまでのようですね」
そして俺たちの目の前に一体の魔獣が現れた。
その魔獣は今の俺たちでは容易に倒せる魔獣だが、今時間を喰う訳にもいかない。
もしこうなった場合、アラン団長を始めとした赤紅騎士団が対処することになっていた。
「それでは……お願いします、皆さん。一人欠けることなく生還し、無事魔王を討伐してくることをここで願っています。なるべくこいつらをすぐに倒して向かいますが……おそらく間に合わないでしょう。それに向かっても足手まといになるだけ……なので、後援は期待しないでください。ですが大丈夫」
そしてアラン団長は剣を一気に抜いて、剣先を目の前の魔獣に定めた。
「あなたたちは強くなった。誇りなさい、あなたたちは一人一人が一騎当千の英雄だ。それを胸に、どうか」
「「「「「──はいっ!!!!」」」」」
「GAAAAAA!!!」
「させませんっ!!行きますよ!!赤紅騎士団!!突撃っ!!」
「「「「「「うおおおおお!!!」」」」」」
アラン団長の声に呼応して、後ろで構えていた赤紅騎士団の騎士たちが大声を上げる。
それに魔獣たちが少しだけ怯んだ。
「今っ!!」
俺の声にみんなが走り始めると、一気にトップスピードになって魔獣たちの横を抜き去った。
その瞬間、赤紅騎士団と魔獣らが衝突した。
鉄と鉄がぶつかり合う音がいくつも響く。
俺たちはその音と喧騒を背に、走り続けた。
魔王を倒す。それだけを胸に。
「──いた」
そして遂に俺たちは魔王の姿を目にした。
この世のものとは思えないほどの威圧感。これは彼女の強大な魔力によるものだろうか。
それに彼女のそばにいる二体の魔獣。彼らから感じる魔力も凄まじい。今までの魔獣とは比べ物にならないほどだ。
これが──魔王。
「みんな、気を引き締めろ。幼女に見えるからって気を抜くな」
俺は静かに剣を抜き、構える。
そしてみんなの戦闘準備が終わったところで、ようやく魔王は俺たちの方を向いた。それはまるで俺たちのことなど眼中になかったかのようで……その態度が少しだけイラついた。
「……あぁ、彼らが」
「GURRR……」
「ふぅん。そう……そっか。グリモンドとクォーバルは……に向かって」
「GA!?GAAAA!!!」
「大丈夫。別に私が死んでもその時は道連れにするから、問題ない」
「……GURR」
「……分かった」
すると、そばにいた二体の魔獣はどこかに行ってしまった。
あまり聞き取れなかったがどこに行ったのかは大体想像がつく。
「……私が行く」
と、俺と同じような考えに至ったのだろう、深山さんが静かに手を上げた。
しかし……彼女の実力は未知数なことが多い。
確かに戦闘時では多種多様な魔法を使っていた。だがその威力は常葉の放つ魔法よりも少しだけ劣っている印象があったのだ。
常葉の魔法の威力は結構強い。それに多少は並んでいること自体凄いのだが……。
やはり彼女のスキル、天使の存在が俺にとって得体のしれないものになっている。
「いいんじゃない?」
と、そう言ったのは常葉だった。
その言葉が少しだけ悩んでいた俺を後押ししてくれた。
「……分かった」
「ありがとう」
そう言うとすぐに彼女は身体強化を自分に施し、すぐに団長のところに向かって行った。
「……終わったの?」
「……あぁ。待たせたな」
「ううん。どうでもいい」
「っ、そうか……よっ!!」
そして俺は光の斬撃を魔王に放った。
それが戦闘開始の合図になり、俺と西、そして久馬たちは一気に魔王に近づいた。
それと同時に岸本や常葉などの後衛は左右に分かれながら魔王に攻撃を仕掛けた。
「はぁっ!!」
「
岸本の指から強靭な糸が伸び、魔王を縛ろうとする。が──
「……」
「なっ!?」
その糸が魔王に近づいた瞬間、ボロボロと自壊した。
更に
最初俺の放った光の斬撃にはちゃんと対応していたので他の攻撃も効くと勘違いしてしまった。
俺は自分の認識の甘さに歯噛みするが、それを胸の奥底にしまって俺は剣を振るった。
「はぁっ!!」
光り輝く、勇者の剣は真っすぐ魔王に迫っていく。
しかし次の瞬間、その剣は行くべき対象を見失い、見事空振りをしてしまった。
魔王が転移したのだ。
「ライトニングっ!!」
「ホーリーショット!!」
しかし、魔王の転移先に向かって常葉ら魔法士たちが牽制をかましてくれた。
それらの魔法に対し魔王はその魔法に向けて腕を一振りした。
「「「っ!?」」」
それだけで全ての魔法が消え去ってしまう。
彼女は今のところ一度も俺たちに攻撃を仕掛けていない。
それに俺たちがどれだけ攻撃しても、全て彼女にいとも容易くいなされてしまっている。
やはり魔王の強さは強大だ。
それにここら一帯に結界を張っているのか、少しだけ魔力の扱いが鈍くなっている。
「……っ」
みんな思うように魔力を扱えないからか、少しだけ顔に焦りが見え始めている。
このままでは負けてしま──
「っ!!」
駄目だっ!
考えてはいけない!!
俺たちはこの世界の悪である魔王を倒さないといけないんだっ!!
「うおおおおお!!!」
俺は頭の中の考えを払うために魔王に突撃するのだった。
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