第36話
「ねぇねぇ、スバル」
『ん?なんだ?』
「ちょっとネヴァのところに飛ばしてくれない?」
『ええぞ』
という事で僕は死の荒野へとやってきていた。
ルールイからすぐ近くまで勇者たちが近づいていると言われているが、別に気にしない。
すぐに用は終わるしね。
「ネヴァ」
「……ハルキ」
「今日はネヴァ一人だけかい?」
「……うん」
「よかったー。ちょっと話しておきたいことがあってさ。今後のことで、二人っきりで話したいんだけど」
「……他の人に聞かれちゃ駄目なもの?」
「うん。あ、そうだ」
そして僕は人差し指に魔力を流し込んでから空中で円を描くように動かす。
するとその円が僕とネヴァの周りに広がって、僕とネヴァを包むようなドームを作り出した。
これは最近僕が作り出した遮音魔術だ。
「これは……なに?見たことない」
「まぁ何でもいいでしょ。それよりさ、今から大事なこと話すから。心して聞いてほしい」
「大事なこと?」
「うん。今後の動きについて」
「でもそれはグリモンドとか交えた方がいいんじゃ……」
「まぁ、最初に長に話しておくのが筋ってものじゃない?知らんけど」
「……なるほど。まぁ、分かった」
「ありがとう。それじゃあまず──」
その後僕と彼女はこのドームの中で1時間以上話した。
まぁ内容は至って単純、今後の僕がしようとしていることとそれに合わせて彼女にして欲しい動きについてだ。
「それじゃあ転移魔法覚えておいてね?一応メグにも言っとくけど」
「……メグって子会ったことない」
「大丈夫。多分向こうから来てくれるよ。それじゃあ、また今度ね」
「……これが終わったら、またお菓子食べれる?」
そう言って彼女が抱えているのは今日僕が持ってきた、前彼女に渡したのと同じクッキーだ。
それ以外にもいろんなお菓子を彼女の為に持ってきた。まぁこれは交渉のためだ。あんまり効果は無かったけど。
「勿論。というか、こっちで暮らしたいんでしょ?」
「うん。行きたい……辛いけど」
「そこは我慢してほしいとしか言えないかなぁ。というか、薄々気付いていたでしょ?」
「……うん。どんなに目を背こうとしても
「……全て終わったらそこから解放できるから、待ってて」
「うん。私、頑張る」
「そうだね。頑張れ」
そう言って僕は遠く離れていたスバルを呼び、自分の部屋に戻ったのだった。
『にしても、どうして急に姐さんの元に行きたいなんて言ったんだ?』
「あぁ、ちょっと頭の中で組んでいた計画に狂いが生じたからね。それを修正するために彼女に話さないといけないことがあったんだよ」
『なるほどな。その計画を俺とかには話せないのか?』
「無理だね。こればっかりは。でも君たちの見ている先と僕が見ている先は一緒だという事だけは言っておくよ。その為に動いているんだから」
『分かった。それだけ聞けりゃあ問題ない。そんじゃあな』
そしてスバルは用があるとのことで僕の部屋から出て外に行ってしまった。
「キエル」
『何?』
「カオリと連絡とれる?」
『ルールイとかじゃないの?それ担当って』
「ルールイいないんだもん」
『あ、本当だ。どこにいるの?』
「知らないけど見当はついてる。問題ないよ。ということで改めて聞くけど、出来る?」
『うーん……まぁ、できないことは無いけど。結構きついかな』
「カオリは数少ない味方だからね。少しでも連絡を取り合いたいんだけど……仕事間違えたかな……?」
今思うと本気でそう思ってしまう。でも彼女以上に適任もいないのも事実だ。
「まぁ今はいいや。取り敢えずいつでも彼女と連絡を取れるようにしといて」
『むぅ……分かったわ』
そして彼女は早速魔法の作成に取り組み始めた。
「あ、ルールイおかえり」
『ただいま、
「大丈夫だよ。それじゃあランバルトに早速繋げて?」
『分かった』
そして彼女はすぐにランバルトの近くにいるムシカゲと繋げてくれた。
「もしもしランバルト?」
『なんだ?』
「どのくらい進んでる?」
『そうだな……予定よりちょっと遅れてるな。すまない。手こずっててな。だが7割は完了している』
「それくらい進めてくれたんだったら問題ないよ。後は僕がやろうか?」
『いいや、これくらいやらせてくれ。あとちょっとで王都最大の商店を掌握できるんだよ』
「なるほどね。分かった。ちゃんと契約書とかもらってくるんだよ?」
『分かってる。忘れるなんてへまはしない』
それから今後のことについて軽く話し合った後また進捗があった時に連絡する旨を伝えてもらってから通話を切った。
うんうん、いい感じに進んでるね。
ランバルトの遅れも予定通りだし。まさか7割まで進めているとは思わなかったけど。
もう少ししたら完了するはずだ。
──王都の経済の掌握が。
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追記
ということで今話は作業回でした。
これが彼の休日です(その中でも特に忙しかった日をピックアップ)。
今後これがどんな形に作用するのか……。
作者にもわかりません(駄目やん)。
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