第34話
「……今日からこの城で働くことになりました、メグと申します。よろしくお願いします」
パチパチパチ……。
僕の時よりは少ないが、それでもこの城に勤めている従業員の半分がこの小さなホールに集まっていて、静かにお辞儀をした彼女に拍手をした。
あの村での出来事から数日後。
アグライア改めメグは僕が勤めている城で雇ってもらえることになった。
「部屋はそうですね……正直ハルキさんと同室なのはあまりよろしくないのですが」
「それでもいいです」
「……分かりました。でしたらそのように手配しましょう。今日からメグさんはメイド見習いとして、数か月の研修を受けてもらい、その後メイド採用試験を受けてもらいます。もしそこで落ちてしまった場合は別のところに配属になるので失業などと言う心配は無用です。今この城は人手不足で悩んでいるので少しでも人手が欲しいのです。分かりましたか?」
「……はい。ありがとうございます」
そう言ってメグはメイド長のクラリスさんにお辞儀をした。
それを見たクラリスさんは笑みを浮かべ、一人のメイドを呼んだ。
「彼女が今後あなたの上司に当たる人です。基本的な指示は彼女から貰ってください」
「カンナです。今日からよろしくお願いします」
「メグです。こちらこそ、よろしくお願いします」
その後諸々の説明が行われた後解散となり、それぞれの持ち場へと向かった。
僕もロンダーさんと一緒に今日手入れする庭へと向かった。
そしてロンダーさんとどこをやるか話し合った後、それぞれの作業に入った。
「にしても」
と、近くにいたからか、ロンダーさんが僕に話しかけてきた。
「メグさん、でしたっけ。可愛らしかったですね」
「……ロンダーさん、何が言いたいのですか?」
「よかったですね、同室で」
「……よくないですよ。今まで気ままに過ごせた個人部屋が無くなるんですよ?」
「まぁ、それは確かに」
そう言ってロンダーさんはハハッ、と軽快に笑った。
「やっぱり若者はいいですね。いい刺激になる」
「ロンダーさんも十分若いですよ」
「私より若いハルキさんに言われても説得力無いですよ」
「それは確かに。ですが、相対的にもロンダーさんは若いと思いますよ?」
「まぁそうそうくたばるつもりもありませんからね。できる限り頑張りたいと思いますよ」
「そうですか」
そこで僕たちは会話を止めて、各々の作業に戻った。
「……ハルキ」
「ん?」
夜。
風呂から上がったメグが僕を呼んだ。もう入っていいのだろう。
「いいのかな」
「うん」
ということで風呂に入ることに。
「はぁ……」
ここ最近は本当に疲れた。
深夜にあの村に行って諸々処理を行った後急いでこっちに戻って仕事をし始め、それが終わってまた深夜になるとまたあの村に戻って……というのを延々と繰り返していたのだ。
その為いつ寝るかと言えば移動中の間しかなく、その移動中でさえしっかりと眠れるような環境ではなかった。
それも今日で終わりだ。
あぁ……ここで、寝ちゃいそう……。
っ!?
いや駄目だ。ここで寝てはいけない。
僕は急いで体を起こし、体を洗ってから濡れた体をふいて着替えてすぐにベッドにダイブした。
「ふぅ……」
「もう寝るの?早くない?」
「僕はメグと違って昨日まで深夜からずっと動いていたの。もう寝たい。おやすみ」
「……ねぇ、ちょっ──早っ。寝てるし」
そして僕の意識は深い闇の中に沈んだ。
***
(side 銀上明久)
「──行くぞ」
突然魔獣に動きがあったとの知らせを受けた俺たちは急いで身支度を整えその場所へと向かった。
「……いない」
しかしすでにそこ──グレムリンの巣だったところにはグレムリンの姿が一匹も見受けられなかった。
「どうしてだ?まさかもう街に──」
「それはありえないわよ。だったら街の方に来いとかって連絡が来るはずでしょう?」
「……確かに」
となると他には……まさか──
「──移住?」
「っ!?まずいぞっ!今すぐその事を知らせないと──」
「落ち着いて銀上君!まだそう決めつけるには早すぎるよ!今はとにかく、捜査をしましょう?」
木山さんにそう諭され、俺は自分自身を恥じた。確かに、さっきの俺は明らかに冷静さを失っていた。
「とにかく、現状を調べて、そのデータをもとに他のグレムリンの巣がどうなっているか調べよう。いいか?」
「「「「了解!!」」」」
そして俺たちは突然いなくなったグレムリンたちを見つけだすための手がかりを探し始めたのだった。
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追記
ということで一つの区切りがつきました。
やっぱり勢いで書いた分、誤字やら脱字やらが多い希ガス。
希ガス……覚えられてないんですよね、僕。理系なのに。
覚えゲーの化学やっぱ嫌い。
追記の追記
10/3 誤字修正致しました。
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