第30話

 僕は彼女──深山がどうしてムシカゲを殺したのかについて考えていた。


 日本にいた彼女だったらトカゲ如き気にもかけなかったはずだ。


 なのにあの時、僕の部下とも呼べるムシカゲを殺した。


「天使……」


 僕は最初、彼女に発現したスキル、天使の仕業かなと思った。それ以外に考えられる要因がなかったからとも言えるが。


 だからこの村に来た理由の中の一つとして、教会に行くというのも含まれていた。


 この村の教会は少しだけ特殊で、何と伝承で神カルナルが舞い降りた地だと言われているのだ。

 だから死にかけだったあの男も頑なにカルナル教の教えを信じていた、というわけだ。


 くだらない。


「スバル、グリモンド、縮まないと入れないよ」


『おう』


『あんまりしたくないんだがな……仕方あるまい』


「貴様、魔獣を教会に入れるなああああ!!!」


「うるさいね、この子。頑張るなぁ」


『そんな風に感心してないでさ、そろそろ鬱陶しいから黙らせていい?』


「駄目だよキエル。生き残ったこの子には真実を知る義務がある」


 そして僕は村に建てるにはあまりにも不釣り合いなほど壮大な教会の扉を開いた。


 ギギギ……。


 飛び散った血で錆び始めたのか、それとも経年劣化か知らないが、嫌な引き摺り音を立てながら扉は動き、その奥にあるものを僕たちに見せてくれた。


「……」


 中は死体だらけだった。


「そっか。ここに避難したんだね」


「あ……ああああ」


 死体の正体はこの村に住んでいた女子供、そして老人らだった。

 この村にいる人間を根絶やしにしてって言ったら男衆ばっかで子供とか見当たらなかったんだよね。


 ここにいたんだ。


「あっ」


 と、その死体の一つの上に見覚えのあるものがあった。


 ムシカゲだ。


「ルールイの指示かな?」


『そう。自分たちが見つけた。褒めて』


「うんうん、偉い偉い」


『えへへ──ふっ』


『っ!?』


 ルールイはいつものようにキエルを挑発した。

 仲が良くなってきたかな?


「あ……か、母さ──」


「行こっか。教会の奥に」


「あ、待って……」


「待たない。そんな時間ないからね。僕らがいなくなったら好きなだけすればいいさ。スバル」


『なんだ?』


「クォーバルグレムリンに連絡を」


『分かった』


 僕はスバルに伝達係を頼んでから、死体を掻き分け教会の中に足を踏み入れて、奥へと向かった。

 そして僕についてくる形でみんなが中に入った。


「なっ!?何で……」


 その時、縛られている少女がグリモンドたちを見て驚いていた。

 

 僕には何で驚いているのか分からなかったが……。


「魔獣が教会に近づくこそができて……あまつさえ教会の中に入れるなんて」


『は?教会にそんな力ないだろ』


「そうなの?グリモンド」


『あぁ……俺たち魔獣だってカルナル教の教会に入ることは普通にできる。というのは今知ったんだが……前にな、魔獣を遮る結界とか何とか貼られてるって聞いたんだよ。でも俺の目にはそんなのが見えないからな。デマだったんだろ』


「へぇ、そうなんだ」


「あ、あなた何で魔獣と会話できて……」


「ん?別にどうでもいいでしょそんなこと」


「はっ?どうでもいいって……あなた魔獣なのよ!?分かっているの!?」


「はいはいそれじゃあ奥行くよー」


 彼女の言葉を無視して、僕たちは教会の奥──この教会に勤務していた牧師の部屋へ。


 僕は躊躇いもなくその部屋の扉を開ける。


『そこ』


「了解」


 そしてルールイの指示で僕は部屋にあった本棚のとある本に手をかけた。


 それは聖書だった。


「これがカルナル教の聖書、ねぇ……」


 僕はパラパラと中身を確認する。

 一体どんなものが書いてあるのか──





「──」


 



 燃やした。


「あ……せ、聖書が……牧師様の大事な聖書が」


 そして未だ僕の手の中で燃えているこれを床に捨てた。


「……あった。これだね」


 僕は聖書汚物が置いてあったところの奥を覗き込む。と、そこにはボタンがあった。


 それを僕は押した。


 ゴゴゴ……。


「な、何……!?」


 地響きがこの部屋の中で起こり始め、そして本棚がゆっくりと動き出した。


 隠し部屋がその本棚の奥から姿を見せる。


「入るよ」


 僕はその隠し部屋に入る。

 中にあったのは地下に続く階段だった。

 

 ジメジメとしていて、苔がところどころに生えている。ここがほとんど使われていなかった証拠だ。

 まぁほとんど使われなかったと言っても年に一度は使ったんじゃ無いかな。


 牧師と


「それじゃあ行こっか。狭いと思うけど……キエルいけそう?」


『うん。問題なし』


「っ!?」


 そう言ってキエルは彼女の縛り方をこんな狭いところでも通れるようにするために少しだけ変えた。

 

 そして僕たちはその階段を降り始めた。


『うおっ』


 時折後ろから滑りそうな声が聞こえたが、僕は気にすることなく先に進む。


『『「っ!?」』』


 そして階段を降り終えた僕たちはその先にあったものに驚愕した。

 

「魔法陣……」


 階段の先にあったのは牧師の部屋と同じくらいの広さの洞窟で、地面いっぱいにそれはそれは巨大な魔法陣が描かれている。


「この魔法陣は……なんだ?」





『これは……?』



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 追記

 9/29 ちょっとだけ修正しました。


 

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