第29話
「はぁ……はぁ……あ」
「Grrrr……」
「あ、あ、あああ」
「GAAAAAA!!!!」
「ああああああああ!!!」
深夜。
また街を飛び出しスバルの背に乗り移動すること約2時間。
僕は今とある村に来ていた。
この村は辺境に位置しており、王都から馬車で行こうとすると1ヶ月以上かかるところにひっそりとあった。
うん、そうだ。
ここが一番都合がいい。
ここの周りは森に囲まれており、易々と見つかることは無いし、もし見つかったとしてもすぐに始末できる。
噂を根元から断つことができる。
「グリモンド、ここはどうだい?」
『ふむ……いいんじゃないか。しかしこれは……掃除が大変だ』
「食べ物とか何食べてるの、魔獣って」
『基本的には魔力とか、あとは魔力が含まれているものだ。それこそ──この人間とか、な』
そう言ってグリモンドは地面に転がっていた瀕死寸前の男の体を掴んで持ち上げた。
その際体から大量に血がドバっとあふれ出し、地面を赤黒く染めた。
しかし、まだ息はあったようで、口を動かして何かを言おうとしている。
「……人殺し」
それは僕に対して言っているのだろうか?
「あはは」
僕は思わず苦笑してしまった。
「……狂ってる。何で人間なのに、魔獣の……味方してるんだ。魔獣は、あの憎き魔王の」
「魔王が君に直接何かしたってわけじゃないだろう?魔獣が起こした事を何でもかんでも魔王のせいにするなよ。だからこの世界の人間はつまらないんだ」
「……何を、言って」
「思考が硬いよね、ほんとさ。どうせカルナル教とかの教えだからとか、そうでしょ?それを疑ったこととかなかったわけ?」
「……疑うも何も、それが真実……カルナル教は絶対だ」
「気持ち悪っ……うん、やっぱつまらないわ、ここ」
僕は慣れてきた魔力操作で右手に魔力を込め始め、形を作り始める。
「食べる?」
「……ひっ!?」
『いらねぇよ、こんなの。腹の足しにもならねぇ』
「オッケー」
グリモンドがそう言ってくれたので、僕はすぐさま腕を振るった。
スッ……。
そしてグリモンドが今まで掴んでいた人間は断末魔さえ言わせず細々に切り刻まれ、塵と化した。
「これで終わりだね。後生き残りはいるかな?」
『……お前は同族を手にかけても何も思わないのか?』
「だったらグリモンドは何か思うのかい?」
『……』
「それが答えだよ」
そう言って僕とグリモンドは村の奥へと進んでいく。その間グリモンドは何も言おうとしてこなかった。
「生き残りはこの子、だけねぇ……」
「……」
「僕を睨んでどうしたんだい?」
「あなたが、お父さんと母さんを……!」
「僕が?まぁ指示を出したのは僕だから、確かにそうとも言えるよね。で?どうするのかな?」
「殺すっ!!」
そう言って彼女は何も持っていない手で僕を殴ろうとした。
確かに威勢はいいしその目に宿っている憎しみは何度も見てきたもので僕には慣れたものだが、それでも人の黒く染まった感情のパワーというのはなかなかどうして、計り知ることができない。
「おぉ……」
彼女の拳が黒く光り始めた。きっと今の彼女は気づいてないだろう、今自分の体に起こっていることを。
「キエル」
「っ!?」
『呼ばれる前から終わらせてるよ』
するといつの間にか彼女の体に魔法で出来た鎖が彼女の両手両足を締め付けていた。
それでも抜け出そうとする彼女を鎖は更に締め付けた。
「アアアアア!!!」
これだと両手両足千切ってでもやってきそうだ。
「キエル、彼女を拘束したまま連れて来れる?」
『ちょっと大変だけどまぁ、行けるでしょ』
そう言いながらキエルはスッと別の魔法を使って彼女を浮かした。
同時に別の魔法を使うのはムシカゲ曰くめっちゃキツいらしいが……キエルはいとも簡単にやってのけた。
『むぅ……』
胸ポケットの中にいるルールイが悔しそうに唸っている。
彼女らが一度もできなかったものが目の前でされるというのは相当きているようだ。
正直ムシカゲたちの方がエゲツない気がするのだが……本人たちは無自覚なのが恐ろしい。
「とりあえず行こっか」
僕は気持ちを切り替えてグリモンドたちを引き連れて先に進み、目の前に聳え立つ、立派な建物──カルナル教の教会の中に入った。
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追記
現在24058文字(話数換算およそ11話ほど)書き溜めることができています。
それが切れた瞬間が私の寿命ですね(大袈裟)。
まぁ少し先の話をさせてもらうと、今書いているところが丁度起承転結の転に当たるところの最初辺りですね。
なので、もうちょいで終わるかな……?
新作書きたい欲が出てきたのでそれがぶっ放される前にどうにかこの作品を書き終えたいと思っております。
なので、この作品をフォローして、☆や♡で応援してもらえると、この作品を書く意欲が湧いて魔王討伐編以降も書くかも……?
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