第28話
「それではここに仮拠点を設置しましょう。各自準備を始めてください」
「「「「はい」」」」
アラン団長の指示を受けた俺たちはリュックからテントなどを取り出して、今後死の荒野の攻略を進めるための拠点を作り始める。
今日から予定では二か月くらい、俺たちはここで生活することになっている。
魔王と対峙する日も近いだろう。
不快の森を抜けたところであるここから先にあるのはグレムリンの巣やオークの縄張りが数多く存在しており、それらを解体しながら進んでいくことになっている。
「どのくらいあるとされているんですか?それらは」
「そうですね……予測としてはそれぞれ20ずつはあるとされていますね」
「20……多くないですか?」
「不快の森周辺に出現したグレムリンやオークの数で判断したので詳しい数はこれではないですが、それでも最低数がそれですね」
「……」
グレムリン一つの巣に大体20匹のグレムリンが生息しているとされているので、そう考えるとかなりの数がこの奥に生息している。
いつその数のグレムリンが街に降りてきてもおかしくない状況だ、少しでも数を減らした方がいいだろう。
俺たちは気を引き締めた。
「……」
だがそうするたびに俺はあの時の光景を思い出してしまう。
金田の最後を。
この世界に来る前、あいつとは同じクラスってだけでそんなに話したことは無かった。
だが俺が勇者になると、あいつは俺に話しかけてきた。今までそんなことなかったのに。
だから最初は警戒をしていたが、彼もこの世界の住人を案じていること、そして魔王を討伐するというその決意を持っているという事はすぐに分かった。
そして俺たちは互いの背中を預けることができる、戦友になれたんだ。
「……」
しかし、俺はそんな戦友を死なせてしまった。
それに、あいつに結構頼ってしまっていたところもあった。そのせいで今俺たちの間で綻びが生じ始めてもいる。
何とかしないといけない。
ここは、俺がみんなを引っ張っていくしかない。
しかしそう考えると何故か不安が心に広がってしまう。
「あ、銀上じゃん」
声を掛けられ後ろを向くとそこには何かを頬張っている木山さんがいた。
「……何食べてんだよ」
「え、これ木の実。さっき拾って真田君に調べてもらったものだよ?」
「……度胸あるな」
「まぁ引っ越す前は山に近いところにいたからね。これくらい慣れてるんだよ」
そう言って俺が立っているそばに座り込んだ。
……何で座ったんだよ。
「金田君のこと考えてた?」
「っ!?」
「あ、やっぱり?」
俺は彼女にズバリ言い当てられてしまい、それが顔に出ていたようですぐにバレてしまった。
そんな俺をおかしそうに笑った彼女は続ける。
「あれは不慮の事故ってやつなんだよ。だから銀上君一人で悩んでも仕方ないんだよ?」
「不慮の事故……?あれは──」
そう言って俺はあることが頭によぎって言葉を止めた。
あの時の金田の動き……いつもと違って精細に欠けていた気がする。
「いや、まさかな」
「ん?」
「あれはやっぱり俺のせいなんだなって」
「ううん、こう言ってはなんだけど、あれは金田君の不注意と偶然が重なった、もう一度言うけど不慮の事故なんだよ」
「不慮の事故じゃないだろう。俺がもっと声掛けをしていれば──」
「そこまで行くと、勇者じゃないよね」
「……は?」
「君一人で仲間全員を守りながら戦う?そんなの、傲慢だよ」
「……何言って、俺は」
「勇者が守るべきなのは私たちじゃないでしょ?この世界に住んでいる人たちなんだよ。決して私たちなんかじゃない。私たちを守るだなんて考えを持ってるから銀上君はいつもちゃんと戦えてない。まぁ、銀上君が言ってることも分かるよ。そりゃあ自分のせいにもしたくなるよね。自分だけ戦いに集中できてなかったんだから」
「……」
そう言われて俺は何も言えなくなった。
確かに俺はいつも戦いの中で仲間のことを気にかけていた。
「……俺は仲間の事」
「信じてるって?ンな気持ち悪いこと言わないでよ?」
……確かに、それは今言っても信ぴょう性ないか。
俺は自分に呆れて、思わず苦笑してしまった。
「そうだな。確かに俺は無意識のうちにそう考えてしまっていたのかもしれないな。それが、金田を死なせる結果となってしまった……」
「それだけじゃないけどね。むしろ、それが原因だとは到底言えないんだけど。だから、銀上君は今後それを直していく。私たちをもっと信頼してもらう。そして私たちは一切の油断を捨てる。金田君の死を無駄にしちゃだめだよ」
「……あぁ」
俺は今度こそ、前を向くことができた。
俺の中に在った不安はいつのまにかなくなっていた。
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追記
10/2 誤字修正しました。Fate Samurai Remunant楽しい。
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