第13話

「お邪魔します」


「おう、入れ」


 僕はボロボロの家の中に入る。すると入ってすぐ僕の視界に入ったのは、地下への入り口だ。

 ランバルトに続いて僕もその地下へと入っていく。


 中は少しだけジメジメと湿っていて、油断したら滑りそうだ。


 松明の光を頼りに奥に進むこと5分くらい。


「おぉ……」


「ここが、魔神教の本拠地だ。ま、邪教だから規模は大きくないからな」


 目の前には魔神と思われるものを模った像が、その前には謎の魔法陣と思われるものが書いてある。

 よくフィクションの映画とかに出てくるような儀式場そのものだった。


「ま、この魔法陣は書いてあるだけで何かが発動したりしないんだよな実際。そもそも、これを書く意味もないし」


「そうなの?」


「あぁ。俺たち魔神教は魔神様を崇拝しているだけで何もしていない。ただ魔神様の教えを広めているだけだ」


 ……ただの宗教じゃん。



 この世界の宗教は火の神カルナルを始めとした12の神がこの世の最高神であると説いている、カルナル教というのが主流である。


 そのカルナル教は各国と密接に繋がっており、その力はカルナル教の信者のみで一国が出来上がる程だ。


 そのせいでそれ以外の宗教は基本邪教と認定されている。


「で、君たちはその魔神を信仰しているけど、魔王様も信仰対象なのかい?」


「ああ。そんなもん当たり前だろう。魔神様の教えはただ一つ──大事なものに全てを尽くせ、だ。だから俺たちは今苦しんでいる魔王様を助けるために動こうとしていた。そこに、お前だ。なんでも、俺たちを魔王様に会わせてくれるらしいじゃねぇか」


「まぁ、一応その側近と思われる人に聞く必要があるんだけどね」


「なるほどな……俺たちの苦労がこうしてすぐに解決するかもしれないとは」


「具体的に君たちは何をしようとしているのか、聞いてもいいかい?」


 僕がそう尋ねると、彼らは奥からとあるものを持ってきた。


 それは一目見るとただの短剣のように見える。しかし装飾が施されており刀身の色が紫に光っている。


「これは……?」


「これは破魔の短剣。魔法の効果を打ち消す短剣だ」


「破魔の短剣……」


 魔力がない僕でもわかる……これから感じる、不気味なものが。


「これを僕に見せてもよかったのかい?まだ協力関係になったわけでもないだろう?」


「だがこれを見せればお前はもう逃げられない。ここにはそういう掟が存在するのだ。それにそのお前の情報収集力は侮れないからな。こうして脅しをかけておけば……」


「成程ね……どうやら僕はなんとしても魔王とのコネクションをつかみ取る必要があるようだ」


「それに彼女には……いや、これはまだいいだろう」


「ん?」


 何やら不審な言葉が聞こえた……彼女?


「とにかく、お前は今日から俺たちの仲間、協力者となった。それでいいな?」


「うん。僕もそれが目的で来たからね。達成できてよかったよ」


 僕はこの魔神教の教祖でなるランバルトと握手を交わした。それに周りの信者たちは拍手してくれた。


 これで同盟は結ばれた。


「それじゃあこの子を置いていくよ。いいかい?絶対に殺さないこと。いいね?」


「もちろんだ。これがないと連絡できないんだもんな」


「うん、そう言う事」


 僕はその後彼らと今後の話をちょっとしてからこの場を離れた。

 そして裏路地を抜け、表へと出る。


 空気が変わった。


「ふぅ……これで、あとは帰るだけだね」


 四の鐘が鳴るまでまだちょっと時間はある……。


 でも今日は大人しく帰ろう。


「それじゃあ帰るか」


『そうだね』


 こうして僕たちは帰路に着いた。





 夜。


「それじゃあ魔王の近くにいるムシカゲとパスを繋げてくれるかい?」


『うん』


 そしてルールイが一瞬だけ目を閉じる。


『できた』


「近くになんか魔獣とかいるかな?」


『いる。とてもデカいの』


「僕の声って届く?」


『もちろん。なんだったら向こうの音がこっちでも聞ける』


 ……それってもう電話じゃん。


 まぁいいや。取り合えず気を取り直して。


「それじゃあそいつに話しかけようか」





 そしてその大きいと言う魔獣──クォーバルに話しかけ、こうして彼女──魔王の元までたどり着くことができたのだ。


 まぁ、見ることはできないから性別は声から判断したんだが。


 とにかく、僕は念願の魔王とコンタクトを取ることに成功したのだ。


「こんにちは、魔王さん。改めて自己紹介を。僕の名前は甲崎春樹。異世界から召喚された人間だよ」


『……私の名前はネヴァルガル』


「そっかネヴァルガルね。よろしく」


『……まず最初に誤解しないで欲しいことがある』


「……何かな?」


 ルールイの向こうから、緊張しているのだろう息を吸って吐く音が聞こえた。

 

 僕は彼女が言い出すのを待っていると、彼女の声が静かに聞こえ始めた。





『──私は、魔王であって、魔王じゃない』





「……」


『分かってほしいのは、もしあなたがこの世界に混沌をもたらそうとして、それで私を利用しようとしているのなら、私はあなたを仲間に入れないし、私は真っ先にあなたを殺しに行く』


「……」


『それを承知したうえで聞く。仲間になる?』


「……ははっ」


 成程……やっぱり、これは──





 ──面白くなりそうだなぁ。



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