第11話

 それから僕はムシカゲのリーダーに僕に最初に話してくれた子を指名し、今後はその子──ルールイと名付けた──を介して指示を飛ばすことにした。


「と言う訳でルールイ、これからは僕のそばにいてね」


『分かった。自分頑張る』


 そして早速僕さ最初の命令を下した。


「ルールイ、まず城にいるムシカゲに命令だよ」


『うん』


「全てのムシカゲを二手に分け、半分はこの城の各地に潜伏して情報収集、もう半分はこの城にある図書館にある本全ての暗記。できるよね?」


『もちろん。任せて。見て聞いたものは全て共有されるから絶対に忘れない。情報の精査もした方がいい?』


「いきなりそんなことできるのかい?」


『できるようになった』


「……取り合えず怖いからすべての情報を頂戴」


『分かった。初仕事頑張る。皆、聞いてたよね。そういう訳だからよろしく』


 そうルールイがその他のムシカゲに伝えると、足元にいた小さなトカゲたちは一瞬にして消えた。


『明日から随時知らせる』


「分かった」


 



 それから大体三日が経った頃だろうか。


「今日はここからあそこにある大きな木のところまでです。分かりましたか?」


「はい」


 今日も今日とていつものように城の庭を手入れしていた時だった。


「……あれは」


 僕の視界の端に、一人の少年が廊下を歩いていく姿が見えた。

 えっと……名前は忘れたけど確か勇者スキルを手にしたってやつだっけ。顔だけ憶えとこ。


『あれは勇者銀上だね』


「あぁ……そう言えばそういう名前だっけ。まぁ身なりだけ覚えとけばいっか」


 僕は顔をさっさと仕事をするために戻した。

 庭の手入れというのは何も適当にやっていいものではないからだ。


 一度枝や葉を切ってしまえばもう戻すことはできない。もしそれで間違えてしまって庭の全体のバランスが崩れてしまったら……考えたくもない。


『あっ』


「ん?」


 と、僕が作業をしていると突然ルールイが声を上げた。

 一体何事かと思い聞いてみると、


『殺された。城にいた一匹が』


「……殺された?一体誰に」


『深山って呼ばれてた女。天使のスキルで殺された』


「……ちっ」


 深山……めんどくさっ。


「はぁ……まぁいいや。あいつ昔からトカゲ嫌いだった気がするし。あまり気にしないでいいよ。一応予想はしていたことだし」


『そうなの?それは一匹は殺されるってこと?それともその深山ってやつに仲間が殺されるってこと?』


「どっちもだよ。どっちも予想出来たことだからね」


『そうだったんだね』


「まぁ深山への復讐はまた今度ね」


『それは別にいいや。あの女なんか。目が合った瞬間吐き気が凄かった』


「それは天使スキルの影響?」


『それもあるし、その人そのものっていうか、その人を構成している全てから来てる気がする』


「生理的に嫌って事かい?」


『うん』


 まさかルールイがこんな強烈な言葉で彼女を否定するとは……これは相当なものだと思われるな。


 こればっかりはどうしようもないな。


「でも何とか情報は集めて欲しいな。無理しない程度で」


主人あるじのため、何とか頑張る』


 そう言ってその小さな手(?)をグッと握った。可愛い。


『あ、それと──いたよ』


「お、いたか。繋がれる?」


『問題なし』


 よし。

 僕はそれだけを確認してからまた仕事に戻った。


 こことここを切ってから……うん。


「ロンダーさん、こっち終わりました!」


「ありがとうございます!でしたらこっちの、高いところを手伝ってください!何か乗るものも一緒に持ってきて!」


「分かりました!」


 僕はロンダーさんの指示の通り、すぐに脚立が置かれている倉庫まで向かい、脚立を取り出すと、すぐにそれをロンダーさんのもとに持って行った。


「ではここに立てておいてください。今日はハルキさんの仕事はこれで終わりです。お疲れさまでした」


「あれ、いいんですか?」


「はい、ハルキさんが来てくれたおかげでだいぶ早く作業を終わらせられそうですから。後あの高いところを軽く整えるだけで終わりです」


「そうだったんですね。ではお言葉に甘えて」


「最近働き詰めでしたからね。明日は休みにしてもいいかもしれません」


「本当ですか!?」


「はい。後でクラリスメイド長に申請してみましょう」


「ありがとうございます」


 僕は彼に礼を言ってからこの場を去り、自分の部屋に戻った。

 そして来ていた服をクローゼットにしまってから、ルールイと向き合う。


「よしそれじゃあルールイ、今日の成果を報告して」


『うん主人あるじ。まず最初にさっきのことの続き。魔王がいる死の荒野の近くに同胞が生息してた』


「意思疎通とれたかい?」


『バッチシ。大丈夫だった』


「よし、それじゃあ魔法──城の図書館の方はどうだい?」


『お目当てのものは見つけられた。この国の歴史、スキルの歴史、魔力の使い方について……あと今まで魔力炉を持たなかった人の存在についてとか』


 僕が彼らに城の図書館を調べてもらったのには知識を得る必要があると思っていた。

 しかし、それ以上にその中で恐らく魔力炉もなければスキルによる補助も無しに魔力を操作する方法が記されている本がこの城の図書館にあると踏んでいたからだ。


「やっぱり、魔力が使えないってのは辛いからね。少しでも使えたらいいんだけど……どうだった?」


『大丈夫。平均よりも圧倒的に少ないけど、それでも魔力を扱えるようになる方法は書いてあった。でもそれはすぐにはできない。だから主人あるじが前に話してくれた通話は諦めて。それは自分たちでやるから』


「……できるの?ていうかその魔法があったの?」


『あった。完全に人間用に作られてなかったからヨユーだった。イエイ』


 そう言って少しだけ胸を張ってドヤっているルールイ、可愛い。


「それじゃあ君たちを介して魔王と話そうかな。あ、もしかして声とか乗せれる?」


『改良すれば多分……知識は得たし、思考力を上げるのは自分たちの思考を共有すればヨユー』


 考え方としては、大量のCPUを繋げてそれを一度に稼働させて情報の処理能力を上げているスーパーコンピューターみたいな感じか。


「ルールイ、ムシカゲってどうやって数を増やすんだ?」


『生殖行為。一夜にして100匹増やせる。けどちゃんと使えるようになるには3か月必要』


「だったら数を少しだけ増やしてもらおうかな」


『どうして?』


「最優先事項を今から伝える。図書館に潜んでいるムシカゲを全て動員してもいい。だから情報伝達の魔法を今すぐ改良しろ」


『っ!?分かった!』


 これで魔王と直接会話ができるようになるかな。

 あのトカゲモドキのドラゴンを介してじゃあ遅すぎるからね。


 そうだ、明日ちょっと街に出てみよう。何か面白いものが見れるかもしれないし。



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 追記

 明日休んでもいいですか?

 ストック無くなってきたんで……。

 それに秋葉原行くし。


 追記の追記

 総合ランキングに入りました!

 これも皆さんのおかげです!!ありがとうございます!!!!


 追記の追記の追記

 10/2 誤字修正致しました。

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