第8話
「おぉ……素晴らしいですね。流石勇者、と言うべきでしょうか」
「ありがとうございます、アラン団長」
魔力の操作を覚え、鍛えること一週間。俺はアラン団長に練習の成果を見せていた。
俺が自在に魔力を操作している様を見て、アラン団長は笑みを浮かべた。その顔は俺の成長を素直に喜んでいるようで……その後何やら考え始めた。
そして一度頷いた後、俺の方を向いてこう言った。
「これから実践を交えた模擬戦を行っていきましょう」
「はい」
予想できたことだったので俺は素直に頷いた。
その後俺たちはそれぞれ木剣を手に取り、向かい合う形でそれぞれ手に持っていた木剣を構えた。
そして俺は木剣に魔力を込め始めると、少しずつ木剣が黄金色に光始めた。
「いいですか?」
「はい。いきます」
俺は体中に魔力を流し始める。これはアラン団長から教わった技術で、身体強化、というものだそうだ。
それは言葉通り体を強化するというもので、魔力を自覚して最初に覚えることだとか。
俺の場合、最初にやったことが光の剣の生成だったので、それをアラン団長に言ったら、
『それは……凄いですね。まさか最初にそれを成せるとは……今後訓練を厳しくしても問題ないですね』
と笑顔で言われた。
俺の寿命はもうすぐで尽きるかもしれない。
「はぁっ!!」
俺は思いっきり地面を蹴ると、一気にアラン団長に肉縛する。
しかし彼はそれを軽くいなすと、すぐさまカウンターをかましてきた。
「っ」
俺はそれを瞬時に察知し、離れ際に光の斬撃を彼に飛ばしつつ一度その場から離れる。
俺に追撃しようとした団長はその斬撃に対応せざる負えないだろう。
だが彼は俺の想像の遥か上の行動を取った。
「なっ!?」
なんと彼はその斬撃に向かって突進し、それを真っ二つに斬ったのだ。
その驚愕の光景に俺は一瞬動きを止めてしまった。
それに気づいたときはもう遅かった。
「惜しいですね」
「くっ」
一度、二度と彼の猛攻を受け止めんと木剣を振るうが、あまりにも力の差というものがあるためか、俺の手はどんどん痺れていき感覚を失って行った。
そして遂に手に力を入れられなくなり、
「あっ」
「勝負ありですね」
俺の木剣があらぬ方向に飛ばされたと同時に俺の首に団長の木剣の切先が触れた。
「参りました。難しいですね、やっぱり魔力操作をしつつ戦うと言うのは」
「初めての模擬戦でこれだけ動けるのは素晴らしいとしか言えません。慣れていけばもっとスムーズに身体強化を扱えるようになるだけでなく、勇者スキルの威力も上がりますよ」
「そうですね。頑張ります」
「その意気です」
俺は団長の手を借りてゆっくりと立ち上がった。
まだ俺の両手はジンジンと痺れていて、結構痛い。しかしこの痛みが俺を強くしてくれる。
俺はそう信じている。
「少し休憩した後、基本的なところの確認をしましょう。後、魔力の扱いにも慣れておかないといけませんね。それも一緒にやりましょうか」
「はい、わかりました」
俺はアラン団長と別れた後、城の治療室へと向かった。
「失礼します」
「お、患者一号だね。ミウ、それじゃあ練習しようか」
「はい」
そこにいたのは俺たちが転移されたあの場所にいた回復術師の一人、カリナさんと回復師のスキルを手に入れていた、
「それじゃあ治療を始めますね」
「ミウ、魔力の流れを意識するんだよ」
「はい」
俺は席に座り彼女と対面する。
「今日治療してほしいのはどこだい?」
「両腕です。痺れていて……」
「あぁ、訓練ではよくあるね。聞いたねミウ」
「はい」
「ではやってみて」
「はい」
さっきからこの子、はいしか言ってないが……まぁ教室でも内気な感じで俺もあまり話したことなかったから元々そういう性格なのだろう。
カリナさんの指示通りに俺の両手を治療するため、目を瞑った彼女は両手を前に出し、魔力を手のひらのみに込め始めた。
「緑光」
そして彼女がそう呟くと、彼女の手のひらから文字通り緑の光が俺の両手に向かって流れていった。
「おぉ……」
「……」
「……?」
俺の両手が見る見る治っていく様に感動していると何やら視線を感じたので顔を上げると、曽我が俺の方を見ていた。
一体なんだろうと思っていると──
「お疲れ様、ミウ。うん、ちゃんと治ってるね。どうだい勇者、何か違和感とか感じないかい?」
「あ、はい。大丈夫です」
「そうかそうか、それはよかった」
「ありがとうございます」
それからカリナさんから軽く注意を貰ってから、俺は曽我とカリナさんに礼を言ってから治癒室を出た。
「……ちっ」
何故か後ろから舌打ちのようなものが聞こえたが、俺は気のせいだとあまり深く考える事をしなかった。
「ん?」
と、俺がまたアレン団長の元に戻ろうとすると、ふと視界の端に小さなものが見えた。
「……トカゲ?」
そこには小さなトカゲがいた。そう、日本でよく見るような、どこにでもいる普通のトカゲだ。しかしこの世界にもトカゲはいるんだなぁ、と感動していると丁度そのトカゲと目が合った。
そしてそれは俺を見つめた後、スッとどこかに走って行ってしまった。
「こんなところにトカゲ……まぁ、いるか普通に」
俺はそんなことに違和感を覚えることなくそのトカゲのことなどすぐに忘れ、その場を去ったのだった。
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追記
明日は二話投稿するので気を付けてください!
追記
9/8 第2話で金田のスキルが間違ってましたので修正致しました。金田のスキルは格闘家ですので宜しくお願いします。
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