第7話
「なんですか?確か……」
「金田智弘です」
「ああそうでした、トモヒロ。で、なんでしょう?」
「ええと。私のスキルは格闘家なんですが……」
「あぁ、そうでした。確かにあなたのほかに数人ほど剣を使わないスキル持ちがいましたね。ではその方々はこちらへ」
この日から厳しい訓練が始まった。
俺は特に勇者だからというのもあるのだろうか、アラン団長自らが俺を鍛えてくれた。
剣の扱いについては、昔剣道をやっていたためかすぐに慣れることはできた。
が、それに対しスキルの育成には難航していた。
そもそも魔力を使うと言う、日本では経験したことのないことをやれと言われているのだ。それにこの世界の住人は生まれた時から無意識に魔力を扱えるので、それを言葉にするのは難しいと言われた。
なので、自力で感覚を掴むしかない。
「むむむ……」
「私もスキルを持っているのですが……発動するにはやっぱり魔力を使う必要がありますね。なのでやっぱり最初は魔力を感じてもらう事から始めるしか……」
「そう、ですよね……頑張ってみます」
しかし難しいものは難しい。
ここは思考を変えて、よくラノベに書いてあるイメージというものを固めてみよう。
「……」
俺は静かに目を閉じる。
そして、体の中に違和感があるかどうかをまず探す。
しかし、何も感じることができなかった。
「……ラノベとかだと丹田あたりに違和感を感じたりするんだけどなぁ」
「お、銀上。どうだ?魔力の操作」
「……金田ぁ」
「あはは……苦戦しているようだな」
「頑張れよ。お前は俺たちを引っ張る勇者なんだからな」
「久馬……お前もか」
俺が魔力の操作に苦戦していると、丁度休憩を貰ったのだろう金田と久馬が来た。
俺がこの世界に来る前から一緒に遊んだりしていた親友であり、この世界に来てからは良きライバルになった。
彼のスキルは“
こいつも近接戦闘ができるということで今はスキルの他に剣の使い方などを学んでいる。
そして、俺よりも先に魔力の操作に成功した人物の一人でもある。
「久馬、魔力ってどういう風に操作するんだ?」
「ん?ああ、それは人それぞれだからな。さっき
「そうか……でも一つでもいいからヒントが欲しい。頼む」
「分かったよ」
「あ、俺も聞きたい」
「金田もか……お前ら」
呆れたように頭を抱え、息を吐いた久馬は自分の手のひらをパッと開いた。
そしてその手のひらに赤色の点々が集まり始めた。
これが久馬の魔力……。
「俺が魔力を操作するときに意識してることはしっかりと吐き出すってことだ」
「「吐き出す?」」
それは何だろうか。口から異物を“ヺエッ”って出すことだろうか。
ンなわけないか。
そんな馬鹿な考えをしている俺を他所に久馬は続ける。
「吐き出すってのは、俺は最初魔力をだそうにも何かがつっかえてるって感じがしてたんだ。だから魔力でそのつっかえを無理矢理押して、そして外に魔力を出してるって感じにしたら……こうなった」
そう彼が言った瞬間体全体にさっきの赤い魔力が迸り始め──
「「っ!?」」
両手と両肩に凶悪な牙を携えた、何でもかみ砕けそうな口が生えた。
「これが俺のスキル、“顎”の正体……って言うか俺の中で出た答えってやつだな。体の好きなところにこうした顎を生やすことができる」
「す、すげぇ……」
「これは……見た目が」
「あぁ……それが問題なんだよな。だから最近は手に持った剣とかに生やせないか試してるんだ。赤紅騎士団の人にも手伝ってもらいながら試行錯誤してる。今のところ盾には生やせた。魔力消費はえげつないけど」
「そうか」
「俺とお前とでは魔力の操作の仕方は違うはずだ。だから自分の魔力操作を見つけろよ。俺はまた剣術指南を受けつつスキルの試行錯誤をしてくる」
「おう」
「じゃあな」
久馬は俺たちに手を振った後、急いで来た道を戻っていった。
「なるほど……つっかえか」
「結構参考になったな。だが結局のところ自分なりのイメージでやるってのが最適解な気がする」
「確かに」
俺はもう一度目を閉じて、魔力を感じようと体の中に違和感がないか調べ始めた。しかしさっき同様何も感じることはできなかった。
「……だったら」
俺は今度は体の周りに意識を向けた。
「──むっ?」
その時、俺は右腕の、それも手首辺りに何か変なものを感じた。
俺は右腕の、一番脈を感じることのできる手首裏のへこんでいるところに親指を当てた。
そして──そこを強く押した。
「っ!?」
その瞬間、俺の体の中に力の本流とも呼べる、今まで感じたことのないものに襲われた。
これが──俺の魔力。
そして次第に収まってくると今度は体の中に心地よい何かが巡り始めた。
まるで太陽の優しい光を浴びたときに感じるあの時の温かさのような、そんな気持ちのいいものを感じた。
「……あっ」
そして俺はゆっくりと視線を自分の腕に向ける。
そこには黄金色の魔力が俺の右腕を包んでいた。
「──ふっ」
右手をグッと握って、俺はイメージした通りに動かす。
魔力はしっかりと俺の指示に従いその形を形成し始めた。
しかしまだ魔力を感じたばかりだからか、まだ魔力を動かすのに慣れていない。
その為か魔力操作にかなりの難航を示した。
が、時間をかけてゆっくりと集中しながら少しずつ形を作っていた。
「──できた」
俺の手には、勇者の証とも呼べる──光の剣が出来上がっていた。
これが俺のスキル──勇者の力の、その一端。
「勇者の、剣」
俺は自然と、そう口にしていた。
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追記
投稿して一週間?(多分一週間)くらい経ったんだけどなんか☆の数がビックリ仰天43個(9/7 0:02時点)!それに♡の数も49個だし(9/7 0:02時点)!
嬉しいですね。
夏休みのせいで時間間隔めっちゃ狂ってるから凄いスピードで☆とか♡増えてるって錯覚しちゃってる。
これもこの作品を読んでくれている皆様のお陰です。ありがとうございます。
今後も大学の夏休み期間中に話数貯金を作れるように頑張ります。
大学の夏休みが終わったら……察してください。
こんな……こんな、いとも簡単に深夜テンションに為れるわけないんだからなぁ(切実)!!!
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