第3話 死に値する罪
他の施錠も念のためふたりで確認した後、幸はハーストの部屋に呼ばれた。
お茶を持って部屋に入るとハーストは神妙な顔をしていた。
椅子に座るよう促され、幸は素直に座る。
「君やポチが俺の減刑を歎願してくれている気持は嬉しく思う。だが、もう諦めてほしい」
「えっと…………」
「タマも戻ってきたし……、大事になってしまえば他にも同調する者が出るかもしれない。だが、俺はそれを望んでいない」
「ハーストさんは……ご自分がなぜ死刑になるのか、分かっていらっしゃるんですか?」
「……ああ。君には話しておこうと思って呼んだ」
「ポチくんも、きっと聞きたいと思います」
「君から話せる範囲で伝えてやってほしい。あいつはまだ子供だから」
「私だって……そんなに大人じゃありません……」
「君の故郷ではそうかもしれないが、ここでは君はしっかりやれている。故あって俺の事情は魔族には話せないし、俺は君になら話して大丈夫だと判断した。それでは駄目だろうか?」
幸は膝の上で手を握りしめる。
「わかりました。私で良ければ、聞かせていただきます」
幸は一度深呼吸をして、冷めかけたお湯でお茶を淹れて、ハーストと自分の前に置き、また椅子に座る。ハーストは睫毛を伏せてカップを見つめていた。
「俺には、祖父、父母、それに歳の離れた姉と妹がいた。だが俺の家族がもう死んでいることは知っていると思う」
「はい」
「有翼種、俺や団長の種族はもう俺達二人だけだ」
「……はい」
「去年。俺の家族と、団長の父上、三家残っていた他の有翼種の家系、最初の使用人達、その全てが魔王陛下に弓引いた。俺のせいで」
「え」
「俺の罪は反逆罪だ。俺は、もうすぐ公開処刑で首を刎ねられる」
言葉も出なかった。何故、どうして。疑問はなにも解消していないのに。
「俺が素直に刑を受ければ契約で団長の職責は問われない。俺は団長には生きていてほしい」
「は、すと、さんが、焚きつけたん、ですか?」
息が苦しい。なんだ。なんで。
「俺は、生まれてはいけなかった」
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