カルテ21 何時もの店で

結婚の話をしたが、1日中家に引きこもっていてもあれなので食事にをしに外出をした。

車を少し走らせて、繁華街へ行くとそこにあるなじみの店で食事をする。


「2人ともいらっしゃい」

「女将さんどうも」

「注文は何時ものでいいかしら」

「はい、それでお願いします」

「わかったわ。お父さん、何時ものでお願いね」

「おう、わかった」


この店は常連なので、何時もの出と言うだけで通じる。

この店はいわゆる町中華なのだけど、今の旦那さんで4代目だと長く続く店だ。

店は新しくなっても今時の個室の店にになってはいるが昔ながらの町中華が安く食べられる。


「椿ちゃん、今日も呼び出しがあるかもしれないからお酒はダメかしら」

「呼び出しは大丈夫そうですが、どちらにしても車ですから」

「あらそう。それじゃ、太一君付き合って」

「少しだけですよ。女将さんは強すぎるです」

「太一君が弱いのよ」


病院からの呼び出しはないとしても、ここまでの運転は私がしたので

どのみちお酒は飲めない。

完全自立型の自動運転があれば運転席に座ってなければ、飲酒しても問題はない。

ただ、私の車はACCはあるものの、完全自立型の自動運転機能がない。

完全自立型の自動運転機能の車も買えなくはないが、私は自分で運転するのが好きだから買っていない。


「女将さん、注ぎ過ぎですよ」

「別にいじゃない。それでは乾杯」

「乾杯」


太一と女将さんはお酒で、わたしはソフトドリンクで乾杯をする。

350mlのグラスに注がれたお酒……さらに言うと日本酒を女将さんは1度に半分程のむ。


「女将さん、相変わらずの飲みっぷりですね」

「日本酒なんて、水よ水。椿ちゃんだってザルでしょ?」

「そうでもありませんよ」

「何言うのよ、わたしより強い子は椿ちゃんと後1人ぐらいしかないわよ」


女将さんは笑うけど、女将さんはとてもお酒が強い。

その女将さんと数年前、お店が終わった後もそのまま飲み明かした事があるけど

私と女将さん、一緒に居た病院の仲間3人飲んで、最後まで酔い潰れなかったのは私だけだた。

その時は日本酒の一升瓶を5本空け、その他にもビールやハイボールをとにかく沢山飲んだ。

医者からしたら、急性アルコール中毒になりそうなぐらい飲んだけど

その後は二日酔いどころか、三日……いや四日ぐらいアルコールが抜けない感じだった。


 飲んだアルコール量を考えると、完全にアルコールが抜けるまでどれぐらいかかったの気がする。

そして、それ以来お酒を飲むのをかなり控えるようになった。

仕事でミスをした訳ではないんだけど、かなり身体にダメージが出たからだ。


「太一君、全然飲んでないじゃないの」

「料理が来る前に酔い潰れたら困ります」

「それもそうね」

「そうだ女将さん、実は私と太一、結婚する事になりました」

「え、そうなの?もう、先に言ってよね。お祝いの料理サービスするわ」

「そんな、気を使わなくても」

「何言ってるの、常連のおめでたい日を祝わないなんて罰が当たるわよ」

「そう言うなら、お願いします」

「では、お父さんに言ってくるわね」


女将さんは個室をでていて、厨房へ向かう。

料理は何時ものと言えばわかるので、料理が届くまでにお酒と一緒に運ばれてきた

サービスのおつまりをつまむ。

今日はネギチャーシューであるが、厚切りのチャーシューが6枚もあるこれがサービスで無料。

私たち常連だからでなく、これがこの店のサービス。

ネギチャーシューはメニューにもあり、値段は1200円だけど

メニューのネギチャーシューは12枚もあり、3~4人で食べられるのでとても安い。


「女将さんはいい人だけど、どうしてもお酒がね」

「別にいいじゃない。1杯だけだし」

「その1杯が多いんだよ。日本酒の350mlってほぼ2合だぞ、1合でも多いのに」

「サービスだからいいじゃない」

「そうだけどさ」


先程のお酒も実はサービスであるけど、これは私たちだけのサービス。

しかも、日本酒を350mlだからこれ1杯で十分な量。

太一には多い量だけど、料理が出て車で時間がかかるのでいつも全部飲むので問題は無い。

ただ、帰る何時も飲みすぎてはいるけど。


「しかし、家族以外に結婚するというと、結婚する実感がしてきたな」

「そうね、なんだか急に恥ずかしくなってきたわね……」


女将さんにプロポーズの話をしたら、急に結婚を実感しはじめて

お互い恥ずかしくなったが、恥ずかしけど同時に嬉しさもあった。


「これはわたしとお父さんからのサービス」

「フカヒレではないですか、良いのですか?」

「2人の婚約祝いよ」


この店は町中華にしては珍しく、本格的なフカヒレがメニューある。

あるけど、1度も頼んだ事ないが、女将さんがお祝いと言う事でサービスしてくれた。

正直な所、フカヒレの味がわからないけど、値段のせいか美味しいと感じた。


「俺もフカヒレなんて食べた事ないが、美味しい……気がする」

「わたしもよ、多分……美味しい気がする」

「まったく、2人ともそんな感想じゃ、お祝いで出した甲斐がないわよ」

「す、すみません、俺たち意外と高い物は食べないんで」

「ええ、なので、正直な感想です」

「あらそなの?それじゃ、仕方がないわね」

「お祝いなのにすみません」

「謝らないでよ、お祝いなんだし」

「わかりました」

「それに、お祝いだからこうしてお酒が飲めるしね」

「女将さんは何時もですよ」

「それもそうね」


3人で笑い合うけど、やはり私たちは定番の町中華のメニューが口に合う。

青菜炒め、エビマヨ、餃子、回鍋肉にサービスのフカヒレを食べながら

女将さんと太一はお酒を飲むけど、私はただただ食べる。

女将さんもお客さんの相手をしながら、手があいたら私たちの所に来て

お酒を飲むけど、お酒を飲んでも注文を間違えたりミスをしないから凄い。


「そろそろ、締めの頃かな」

「そうね、女将さん、ラーメンを2つお願いします」

「ええ、わかったわ。わたしの分を入れて3つね」


女将さんはそういって、ラーメンをお願いする。

そして、ラーメンが出来るまでの間、女将さんは


「わたしもTS病で性別が変わったけど、結婚するかは悩んだわ。

でも、したら、したらで案外、何もないわね。

子供も3人産んだし、元の性別なんて関係ないわよ」


と話しすけど、つまりこれは元の性別なんて気にしなくても良いという事だった。

これを聞いて、私は感じてなったのに喉のつかえがとれ気がした。

もしかしたら、無意識に元が男性だったこと気にしたかもしれない。

それに、女将さんの言葉を聞いて、なにか気が楽になったのであった。


「ラーメンが出来たみたいだから、持ってくるわね」


女将さんがラーメンを取りに行くと太一は


「俺は椿が男だった事は気にしてないし、今はちゃんと女って事はわかってるから」


と言うけど、わたしも


「そうね」


と一微笑んだのだった。


「はい、ラーメンよ」


女将さんがラーメンを運んで来ると、3人でそれを食べる。

ただ、太一はラーメンを食べ終わると、そのままダウン。


「太一、帰るから寝ないでよ」

「わかってるけど……今日は平気と思ったら……やっぱりこうか……」


太一は珍しく、最後まで何もなかったので、今日は平気かと思ったら

やはり、最後の最後でダウンした。


「ほら、太一君、起きて起きて、椿ちゃんがお勘定すましたから帰るわよ」

「わかりました……」


女将さんに支えられて、店の隣の駐車場の車まで支えてもらい、車に乗り込んだ。


「女将さん、ごちそさまでした」

「いえいえ、2人もおめでとうね」

「ありがとうございます」


わたしは太一にシートベルトをして、帰宅をする。

そして、部屋につくと太一の服を脱がしてベッドに寝かすけど、わたしはそっと太一の頭をなで


「太一、これからずっとよろしくね……」


とつぶやいたて、車を走らせたのだった。

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