椿と太一

カルテ19 連休の前夜

私の勤務するとやま病院は公立病院なので、土日、休日などは休みである。

土日は呼び出しもあまりないので、休日がある事は良いのだけど

一太は休日も仕事の事が多く、なかなかデートをする事が出来ない。

最低月に2回は会って、大人がする事はしてはいるがただそれをするだけに会っている。

結婚の話もそろそろちゃんと進めていきたいし、なにより休日を丸1日一緒に過ごしたい。


『今度の連休は珍しく全部休みだから、デートしないか?』


金曜日に仕事を終えて携帯をみたら、一太からメッセージが届いていたが

もちろんOKに決まっている。

すぐに返信をしたら、一太からすぐ返信が来て


『仕事が終えたら、すぐ俺の部屋に来る?』


とあったので、もちろん行くが一旦家へ着替えを取に行き

火曜日の出勤は一太の部屋から行く事にした。


「椿ちゃん、なんか嬉しそうだね」


着替えて帰ろうとしたら、先輩医師の佐野道久に声をかけられた。

佐野先生は元女性の男性医師。


「連休は彼氏の所に泊まる事になりました」

「そうか、それでね。椿ちゃんも彼氏の前だとかわいいんだな」

「もうすぐ35ですよ、かわいいなんて言われる年齢でないです」

「かわいいに年齢は関係ないっって。それに、お堅い椿ちゃんも彼氏の事になるこうなるだ」

「や、やめてください」


見た目が堅そうに見えるだけで自分で堅いと思ってはいないけど、周りには

私は堅いと思われている。


「なかなか見られない椿ちゃんを診れたのは貴重だったよ。彼氏に会いたいのに

引き留めて悪かったかな」

「一度帰宅するので、大丈夫です」

「そうか。楽しんでね」

「はい。では、火曜に」

「じゃ、火曜日にね」


佐野先生と別れて、病院を出て1度帰宅する。

今日から火曜日まで一太の家に泊まるので荷物は少し多め。

3泊も一太の所に泊まる事のも初めて。

3泊もするけど、旅行に行く訳でなく一太の部屋でのんびりして街へでかけるぐらい。

あとは一太の部屋で大人がする事もするけど、どちらかというとこれが一番の目的。

3年も付き合うと、マンネリになり飽きがくるが月に2回会うだけなので3年経っても新鮮味はある。


 部屋に戻ると、シャワーを浴びてバスタオルをまいたままで

持っていく服と下着を選ぶが服はデートする時に着ていく服を適当に選んだが

下着は先日買った新しい下着を持っていく。

一太の場合、色気を出すよりもむしろ日常的なタイプの地味の下着が好き。

しかも、年齢の割にちょっと若めの下着が好き。

なので、高い色気のある下着よりも安い下着の方が良いのである。


「でも、流石にこれはどうかな……」


3セットあるうちの1つはピンクと白のストラップのブラとショーツだけど

何でこんなものを買ったのだろうと自分でも思ってしまう。

流石の一太でも、これはどうかなって思ったが試しに持って行く。

あとは化粧品や呼び出しがあった時のために、病院に着ていく服は

火曜日の出勤用以外に複数持って行く。


「あと、これも必要ね……」


新しく買って置いた避妊具も入れて、服を着る。

荷物の準備もできたので、一太に連絡をするとすぐに通話にでた。


『椿、いまどころ?』


わたしより一太が話し出すが、自宅で荷物を取に来たというと


『今、部屋だから、待ってるよ』


一太はそう言うと、すぐに通話を切ったがそれだけ早く会いたいと言う事だ。

あと、する事も早くしたいという事でもある。


 私は3日も留守にするので、各種確認をし戸締りをして一太の家へ車で向かう。

一太の家は車で10分とやや離れているが、地方ならそんな遠くではない。

病院を出たのは20時過ぎなので、金曜日でも21時を過ぎれば地方は道は空くので

普段よりも早く到着した。


 車を止めると、私もはやる気持ちを抑えて一太の部屋のインターホンを鳴らと


「椿、待ってたよ」


ほぼ同時に一太が出てきたが玄関で待ってた訳じゃないよね?


「一太、久しぶり」


私が一太に抱きつく。


「椿、胸が思いきり当たってるぞ

「いい大人が3年も付き合って、やる事やっててそんな事言うんだ」

「それとこれは別というか……」

「要は、我慢できないんでしょ」


私は抱きついたまま、一太にキスをすた。


「椿、キスするのはいいがせめてドアを閉めてくれよ」

「それだけ私も我慢できないって事よ」

「気持ちはわかるけド、中に入れよ」

「そうね」


部屋に入り、荷物を置くとすぐにベッドルームに向かう。

私は帰宅した時に時にシャワーを浴びたが、一太も部屋着なので

シャワーか入浴を済ましているので、そのまま行為にはいったのであった。


 行為が終わって、ピロートークの時間。


「今日も良かったわ、一太」

「俺もだよ」

「一太のは大きいから最初はどかと思ったけど、今はちょうどいいわ」

「恥ずかしい事言うなよ」

「そう?男なら大きいて言われたいでしょ?」

「小さいよりはいいけど、俺は大きいと言われて喜ぶタイプでもないけどな」

「ふーん、そう言う事してあげる」


口ではこう言うが、顔は喜んでいる。

やはり、大きいと言われる事は嬉しいと言う事。


「椿は元男だけど、男とこういう事するのに抵抗はなかったのか?」

「あら、今になってそんな事を聞く?」

「確かに今更だけど、なんか気になってな」


付き合って3年経つけど、元男性と言う事はちゃんと伝えたけど

人生の半分は女性として過ごしてて、あと1か月で女性でいる方が長くなる。


「童貞のまま女性になったのもあるせいか、気にならなかったわね。

経験するのは遅かったけど、抵抗とか怖いからしなかったというより医大の受験勉強と

入ってからの勉強や実習でそんな暇がなかったからなんだけどね」

「そうか。どうせなら椿の初めても俺の方が良かったな」

「何、元カレに嫉妬?」

「そう言う訳じゃないし、処女がいい訳ではないが俺より先に椿と付き合った

男はどんな奴かなって思ってね」

「気になるの?」

「気になると言えば気になるけど、会いたいまではない」

「なんかよくわからないわね」

「俺もだよ」

「もう、余韻に浸ってたのにこんな話しないでよ」

「触れ欲しくなかったのか?」

「そう言う訳じゃないけど、私の今の彼氏は一太だからね」


私はそう言って、キスをする。


「だから、もう一度しよ」

「……わかった」


私と太一は、ふたたびお互いの肌と肌を合わせたのであった。



 再び、余韻に浸っていると一太はそのまま寝てしまった。

どうやら、仕事の疲れが出てしまったようだけど、このまま寝かしておきましょう。

わたしはシャワーを浴びて、冷蔵を空けるが3年も付き合ってると

時々太一の部屋で料理もするので、冷蔵庫を自由に開けるぐらい問題ない。

中はお酒とおつまみ、簡単に調理が出来るものがあるぐらい。

男の1人暮らしってやっぱりこんな感じなのかと思いつつ、あまり飲まないビールを

取り出してバスタオル1枚の姿でソファーに座り、ビールを口にする。


 普段はお酒を飲まないが、実はお酒自体は好き。

若い頃は結構飲んでいたいけど、仕事も忙しくなりここ数年は年に数度飲むぐらい。

公立病院なので休みは多く、他の診療科よりは急な呼び出しは少ないものの

昔の失敗もあって、お酒はあまり飲まないようにしている。

ただ、今日は飲みたい気分になって、こうしてビールを開けてる訳だけど

冷蔵庫の中の物は自由に飲食していいと言われてので、大丈夫。


「一太と結婚か……」


ビールを飲みながら、一太のとの結婚生活を考える。

自分としてはやはり子供は1人産みたい。

できれば、2,3人産んでもいいけど、年齢的に2人までかな。

性別は気にしないけど、お互いの家系から言ってTS病にかかりやすいかも。

行ったの家もTS病の家系だけど、一太はTS病に罹患してないが弟2人がTS病に罹患している。

そして、両親もともにTS病に罹患しているので、私の家と全く一緒だ。

なので、途中で子供性別が変わっても気にしないと思う。


「自分が子供を産むってどんな感じなんだろう」


思わず、下腹部を触っているけどここに赤ちゃんが出来るは、医者であっても本当に不思議。

特に生まれた性が男性だったので、子供が産める身体になった事はさらに不思議。

女性になったこと自体も不思議でもあるけど、この身体のお陰で太一に出会えた。

ただ、自分が男のままだった一太とであったたかは気になるけど、いい男友達になれたのか・

でも、やっぱり女性として太一に出会えたことはとても嬉しい。


「やっぱり、私って太一が好きなんだな……」


私は少し酔ったせいもあってつぶやくと後ろから


「そうか、ありがとな、椿」


と太一の声がしたのであった。


私はまだ寝ていると思ったので、慌てると同時に顔が真っ赤になる。


「結婚しようとしてるから、当たり前でしょ」

「そうだけど、以前は飽きるぐらい何度も好きって言ってけど、今じゃあまり言わないだろ」

「3年も付き合えばいわなくなるわよ」

「その割に、顔が真っ赤だぞ」

「ビールを飲んだからよ」

「ザルの椿が1本目でそうなる訳ないだろ」

「正直に言うわ、照れただけよ」

「照れるって今更か」

「いいでしょ、3年経ってもそれだけ太一が好きなんだから」


私は年甲斐もなく拗ねるが、3年経っても太一が好き。


「俺もだよ」


太一はそう言って、ソファー越しに抱きしめるが

私と顔を合わせて、少しの沈黙の後、自然とキスをする。


「お互いまだ裸だからこのままベッドへ行くか?」

「そうね……」


私は残ったビールを飲みほすと、バスタオル姿のまま太一とベッドに向かったが

連休の前日の夜はさらに更けていった。

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