カルテ9 女性から男性へ

私の患者は基本的には男性から女性になった患者であるが

時々、女性から男性になった患者も診る事がある。


「えーと、つまり、わたしは男性になるのですね?」

「血液検査でTSマーカーがありますし、先ほど性器を診た所既に陰核が

肥大して5㎝ありましたので、間違いなくTS病ですね」

「そうですか……」


学校の制服を着た女の子はわかっていたが、やはり落ち込んでいるが

発病したら変化を止める手立てはない。


「ショックですか?」

「ショックと言えば、ショックなのですが、仕方がないです」

「そうですか。これからの症状を説明しますが……」


私は女性から男性に変わる時の症状を説明します。

男性から女性よりも急激な症状は出ないが、体型が変わっていくため

同様に身体の痛みが出るほか、ホルモンバランスが変わるの体調の不調がでます。

他に性欲の増加やひげや体毛も濃くなっていきますが、これらは個人差があります。

あとは、性器の変化がありますが、陰核が徐々に大きくなっていき

陰茎、つまり男性器へ変わっていき、尿道が男性の位置になります。

そして、卵巣が精巣に変化して陰嚢に降りてきます。



「はぁ……」


一気に説明したせいか、理解が追い付いてないようだけど仕方がない。

患者の名前は木村まりん16歳。

陰核が5㎝まで肥大化しているということは、ステージIIの前期に

入っていると思われるが、確定するには詳しく検査しないとならない。

女性の場合症状が緩やかなため気づく事が遅く、ステージIIに入ってから

発見される事が多い。

またステージIIに入ると、月経が来たり、来なかったりなるため

月経不順によって、発見されるケースが多い。


「一気に説明したらから、わかりませんね。もう一度、説明しますか?」

「い、いえ、理解は出来てします。ただ、実感がなくて……」

「そうですか。今の所、陰核が肥大しているだけですが、これから

変化が進んでいくと実感してきますが、悩み事も増えますので

その時は何でもお話してください。もちろん、性的な事も聞きますよ」

「そ、そうですか。実はすでに話したい事がありまして……」


海さんはもじもじしますが、性的な事でしょう。


「あ、あの、興奮するとク……陰核が大きくなて膨らみがはっきりかるのが……」


やはり、勃起する事を気にしていますが、弛緩時で5㎝ありますので勃起すれば

下着の上からもわかるサイズになるのでしょう。

女性から男性になる場合、この事がかなり問題になっていきます。

TS病とわかれば、学校も対応はしますが、外見はまだまだ女性ですので

トイレや着替えの問題が出てきます。

ただ、股間の膨らみ関しては下着で対応する事は出来ます。


「ふくらみに関しては、補正下着がありますので膨らみを無くすことが出来ますよ。

海さんの大きさならば、大きくなっても大丈夫です。

学校に届けてをすれば対応してもらえますので、書類を書きますね」

「わかりました」

「あと、他に気になる事がありますか?」

「こ、これも性的な事なんですが……」


海さんはまたもじもじしますが、遠慮なく言ってくださいとというと


「じ、実は……彼女がいるのですが……」


と答えたが、同性の恋人がいる事は別におかしい事ではない。

ただ、この年代だと気にする子も多い。


「同性が好きな事は気にしませんよ」

「わ、わたしもそれについては、気にしてはいないのですが……

彼女と……その……もうしてるので……」


つまり、そういう事をしてると言う事を恥ずかしがっているようです。


「海さんの年齢になれば、興味もわきますし、やっていてもおかしな事でもありませんよ。

つまり、今は女性同士なので、男性になって受け入れられるのか不安と言う事ですか?」

「そ、それもあります……大きくなったのを……して……」

「なるほど、そう言う事ですか。他の女性から男性になった患者さんも

陰核が肥大した状態だけでも、女性とそう言う事をしてますので

気にしなくて良いですよ」

「そ、そうですか」

「彼女さんも受け入れているようですし、気になくてもよいですよ。

ただ、年齢的に悩むのはわかりますので、気になる事は相談してください」

「わ、わかりました。彼女も喜んでいますので……安心しました」

「それは良かったです」


海さんは安心してくれましたが、さらに身体が変わっていくと

問題が増えてきますが、またその時になったら相談すればよいので

先の事は今は触れないでおきます。


「でも、性別が変わる事は不安です」

「私も元は男性でしたが、最初は戸惑いますが今は受け入れています。

受け入れるのは大変で時間はかかりますが、相談は何でもお受けしますので

何かあったら、なんでも遠慮なく話してください」

「わかりました。ありがとうございます」

「いえいえ。本当ならば、女性から男性になった先生が

診察するのですが、今日は会いにく出張でいなかったので私が診察しました。

このまま私が診察しても良いのですが、希望があれば

元女性の先生に替える事も出来ますよ?」

「花巻先生は話しやすいです。なので、花巻先生でお願いします」

「わかりました。ただ、専門は男性から女性なので、場合によって変わってもらうかもしせんが」

「その時は仕方がないと思います……」

「わかりました。それでは次回の予約を入れておきます」


海さんは診察室を出て行きます。

私は女性から男性になる患者の診察は何度かしていますが

男性から女性の患者の方が主なので、本当は史乃矢君か福沢先生に

見てもらった方が良いのですが、本人の希望なので。

ただ、話しをしやすいと言うのは、医者として嬉しいです。

私は自分でももっときつい感じがあると思いますが、自分が思っているよりも

私は柔らかい人間と言う事なので、考えを変えた方が良いのでしょうかね。

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