カルテ6 後輩の相談事
TS病は男性から女性になる割合の方が多いが、女性から男性にもなる。
女性から男性へは急性期の死亡率が男性から女性になるより低く
C型急性期も起こらず、実際に報告されていない。
理由は男性から女性は肩幅と肋骨が広がるため、肺と心臓が
圧迫されないためとされていて、実際に最初のTS病の生存者は
女性から男性になった例であった。
「花巻先輩、おはよございます」
「おはよう、
「美浜先生、おはよ~」
わたしは後輩の医師美浜史乃矢に挨拶がいるが、一緒に挨拶をしたのは
同じく後輩の医師板垣
史乃矢君29歳であるが女性から男性になったのだが、研修医であった
26歳時に発病。
そして、28歳に完全に男性になったばかりで、男性の身体には慣れたが
まだ女性としての振る舞いが抜けなくて悩んでいる。
「身体の調子はどう?」
「男性の身体にはなれましたが、癖で女子トイレや女子更衣室に
入りそうなってしまいます」
「完全に男性になって6か月ぐらいだったかしら」
「大体、それぐらいです。
月経が無くなったのは楽ですが髭を毎日剃るのが面倒です」
「月経に比べたら楽だって。
わたしは18歳で完全に女になったから、髭剃りはあまりしてないけど」
一方、由芽さんは17歳で発病した。
TS科の一番の若手で研修医の期間が終わったばかり。
話し方は軽いけど、性格はかなり真面目で覚えも早い。
「他に悩んでいる事はありますか?」
「そうですかね。あと、男性の性的反応って……思ったより頻繁なんですね」
史乃矢君の一番の悩みがこれで、男性の生理現象になれない。
「男性は女性より短い期間に精の処理が必要ですが、美浜先輩は出来てます?」
「板垣、朝から何を……」
「元男性として言ってるのですよ」
「そうだとしても、射精経験は精通から数年もないじゃないの?」
「わたしの精通は13歳だから、4年ぐらいかな。美浜先輩よりは長いですよ」
「確かに、私よりは長いけど……」
史乃矢君は考えるが、そろそろ診察室に行かないとならない。
「2人ともそろそろ行くわよ。由芽さんは大川先生の所に早く
行かないとまた怒られうわよ」
「わかりました」
「大川先生、かわいいのに怒ると怖いから行きますね」
史乃矢君と外来へ向かうが、実際に性的な悩みがある。
「さっきの話ですが、まだ自分でうまく処理できないのです」
「仕方がないわ、慣れていくしかないわ」
「学生時代には彼氏もいて、女性としての経験はありますが
今度は逆の立場になった事も悩んでいます」
「恋人が出来たの?」
「いえ、出来てません。出来てから考えた方がいいかもしれませんが
女性としての経験があるので、余計悩みます」
「そう。また今度相談に乗るわ」
「お願いします」
私と史乃矢君はそれぞれの診察室に入り、診療を開始した。
*********
今日も仕事が終わったが、今日は珍しく早く終わった。
TS科は患者数は他の科と比べたら少ないが、その分医師も数ない。
TS科医師は全分で7人で外来は2人が担当するが、木曜日だけ3人が担当。
それ以外は女性医師1人、男性医師1人である。
土日の診療はないが、緊急の呼び出しがたまにある。
「史乃矢君と由芽さんもあがり?」
「はい、花巻先生もですか?」
「そうよ」
「あの、時間があるなら相談に乗って……」
史乃矢君が言いかけると
「わたしも行きますー」
と由芽さんが割り込んだ。
「性的な相談なんでしょ?」
「な、なんでわかるんだ……」
「へー、本当にそうなんだ」
「なっ」
「わたしも花巻先輩にしてるからだよ」
「そうなんだって、10年経ってても相談する事なんてあるの?」
「一応ね」
「せっかくだから3人で話しましょ、ご馳走するわ。
呼び出しに備えてお酒は飲めないけど、いいお店を知っているわ」
「もちろんいきますー」
「はい、ご一緒します」
病院から私の車で3人で太一と良く行くお店に行く。
地方では居酒屋以外で珍しく、個室があるお店。
その割に安い……と言っても、どちらかという高級店にはなるが
個室なので周りに聞かれなため性的な話もしやすい。
「こんないいお店でおごっていただてすみません」
「美浜先輩、花巻先輩から言ったのだから気にしなくてもいいです」」
「そうよ、由芽さんの言う通りだわ」
「わかりました」
食事をしながら仕事の事や患者さんの事を話したが、ついに本題に入る。
「あの、先輩は女性になってからの初めって……いつでした?」
「私の初めては23歳よ」
「わたしは19歳だよー」
聞いてない由芽さんも答えるが、由芽さんは18歳9か月で完全に女性に
なったそうだけど、そう考えると経験が早い方だ。
「そうなんですか。私は女性としての経験はありますが、
男性としてのまだ経験してないです」
「先輩は完全に男性になって6か月ぐらいですから、そんなものですよ」
由芽さんはそれぐらい経験してるけど、黙っておく。
「男性はあの……入れる方じゃないですか」
「そうだけど、それが問題なんですか?」
「今まで入れらる方だったから……」
「もしかして、先輩は男性になっても受けなんですか?」
「なっ、違うぞ」
さっきから芽衣さんが答えてるけど、この2人は見てて楽しい。
正直、お酒を飲みながら2人を見たいが、車なのでお酒がないのが残念。
「それじゃなにが問題なんです?」
「あの……男性側ってリードしないといけないじゃないですか。
私はやってもらうのが好きだったので、自分からやるのって苦手なんです」
「なんだ、そんな事気にしてたんですが」
由芽さんが史乃矢君の背中を叩くが、軽くというより結構力が入ってる。
「板垣、痛いって。力加減考えてよ」
「ごめん、ごめん。今時男がリードなんて考えが古いですよ」
「そうなの?」
「わたしは始めは男性にリードしてもらったけど、2回目からは自分から
ガンガン行きましたよ。ね、花巻先輩」
「私に振らないでよ。ただ、今は私からも行くわね」
「でしょ?だから美浜先輩も気にしない」
「そうだとしても、相手から頼まれたら困るし……」
「そん時はそん時ですよ。とにかく経験しましょう。
何なら、わたしが相手しますよ」
「え、板垣が?」
面白い展開になってきたけど、由芽さんが史乃矢君の事を好きと言う事は
薄々感じてはいたけど、どうやら本当に好きみたい。
医者同士の恋愛は禁止ではないので、仕事に影響がないなら構わないけど。
「女から誘ってるのに、断るんですか?」
「そ、それは……」
「据え膳食わぬはなんとやらですよ。それに、これは男になるため通る道です!」
「お願いします……」
「わかりました」
こうして、史乃矢君は由芽さんに押し切れたのであった。
「花巻先輩、ごちそうまでした」
「花巻さん、ありがとうございます」
「どういたしまして。私は帰るけど、2人はどうするの?」
「もちろん、する事をしに行きますよ」
「そう、楽しんでね」
「はい、楽しんできます」
由芽さんは笑っているが、史乃矢君は苦笑していた。
私は2人とわかれるが、2人はそのままホテル街に向かって行ったが
この時点で史乃矢君は由芽さんにリードされていた。
2人の姿が見えなくなったのを確認し、駐車場に戻ると
私は一太に連絡し、自宅に帰らずにそのまま一太の部屋に向かったのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます