カルテ4 高橋みやびと林 夕季

TS科の待合室では思いがけない出会いがある。

例えば、恋人や友達にばったり出会い、お互いがTS病に罹患してた事を

初めて知る事があるが、私の病院でもこれはそれなりの頻度で起こっている。

そして、今日もそんな出会いがあったようだ。


高橋みやび 17歳。

外見と声は完全に女子だけど、TS病で女子になりかけの男子。

TS病の3つある段階のうちのステージIIでさらにさに3つある段階があるうちの

中期と後期の間と言った所で間もなく後期になろうとしているところ。


 胸が膨らみ、声も女の子になってるけど、下の方は男女中間で両方の性器がある

ある状態だけど、おしっこが出る位置はまだ男子の方。

花巻先生が言うにはもうすぐ女子の位置になるらし。

既に立っておしっこする事が物理的に難しいくなって来たのもあるけど、精神的にも

立っておしっこが出来なくなってきているから、どちらかと言うと早く女の子の位置になって欲しい。

トイレは外見が女の子なので女子トイレを使てるけど、気を使うしまだまだ慣れないな。

おしっこの出る位置が女の子の位置になれば、戸籍上も女の子に変えらるので

気にせずに使えるけど、女風呂にはまだ入れないから入浴施設には行けない。


 高橋みやびという名前は男子時代の名前が高橋まさだったので

そのまま「みやび」としたけど、漢字だと男子ぽいからひらがなにした。

だから、改名はすんなり決まった。

性別の変更に関しては、両性期の後期にならないとできないそうなので

まだ男のままではあるけど、学校ではすでに女子の制服で通っている。


 TS科の待合室にいるって事は、当たり前だけどTS科にかかってる人たち。

付き添いの人ももちろんいるけど、大体は自分と同じ患者さん。

TS科の予約数は少ないけど、それでも1人の先生あたり12,3人は予約が入っており

1人あたりの時間が長いので予約時間より遅く来ても待たされるが

今日はお盆休みが終わってすぐのせいか、さらに時間がかかっている。


「予約時間より遅く来たけど、もう1時間か」


はため息をつくが、まだ一人称は「ぼく」のままだ。

話し方は女の子ぽくなってきたけど、わたしはなんかいいにくい。

男性でもわたくというので、わたしと言ってもいいかもしれないけど

なんかむず痒いと言うか、恥ずかしいと言うか、とにかくいいにくい。


「スマホのバッテリーも思ったより少ないし、どうしよう」


ぼくが待ちくたびれて伸びをすると


「あら、もしかして……みやび!?」


と聞き覚えのある声がしたが、この声は付き合ってる彼女の林夕季17歳であった。


「ゆ、夕季が、なんでTS科に」

「そ、それはこっちのセリフだけど……まさか、みやびも……」

「ということは、夕季も……」


そう、ぼくたちはお互いTS病と言う事を隠して、付き合っていたのがばれたのであった。

ぼくと夕季の間に気まずい空気が流れるが、ばれた以上仕方がない。


「黙ってたのは悪いけど、言いだせなくて……」

「わたしも言いだせなくて……」


ぼくと夕季は違う高校なので、学校で会う事がなくばれる事もなかったが

考えてみたら、いつか言わないとならなかったから、逆にここで出会ったのは良かったかもしれない。


「でも、いつか言わないとならなかったから、いい機会かも」

「そうね、説明する必要もないし」

「でも、同じ病院でもなんで今まで会わなかったのかな」

「いつもなら火曜日に予約を入れてたけど、お盆休みでずれたからかな」

「ぼくは木曜日だったから、それでね会わなかったんだ」


つまり、同じ病院でも曜日が違ったから会わなかったのであった。

ぼくがTS科に通院して、7か月経つが連休、お盆、年末年始等で休みがあっても

同じ日になる事がなかったので、今回同じ日になったのは本当に偶然。


「みやびは今どの段階なの?」

「ぼくはステージIIの中期と後期の間ぐらい。だから、戸籍上はまだ男だよ」

「わたしはステージII後期だけど、ステージIIIになってもうすぐ完了って所。

わたしはもう戸籍も女の子だけど、夢に見た女の子同士で付き合ってたと思ったら、実はまだ男女のカップルだったのね」

「ははは、ごめん。ぼくも女の子同士で付き合いたいと思てったけど、夕季の告白を

OKした時にちゃんと話せばよかったかも」


ぼくたちが付き合い始めて2か月であるが、その時はステージIIの中期であったが

外見と声は既に女の子になってて、改名手続きをした後であったが

変更までに2週間かかるため、まだ雅であったが夕季にはみやびと

名乗ってから、騙してたみたいで余計に悪いかな。


「実は夕季とあった頃はまだ正式改名してなかったんだ」

「そうなんだ。前は何て名前だったの?」

「雅だったけど、みやびとも読めるからみやびにした」

「元の名前の読み方を変えてひらがなにしただけなんだ」

「夕季はどうなの?」

「実は名前は変えてないの」

「そうなんだ」


「ゆうき」は男女両方の名前と思うけど、夕季と書いても男女両方かな。

夕季もひらがなにするかどうか考えたけど、ひらがなにするにも手続きがいるので

そのままにしたそうだ。


「ある意味、ぼくたちは名前を変えてない同士か」

「みやびの場合、ちょっと違う気もするけど、元の名前からだよね」


ぼくたちは笑い合うけど、お互いが元男子と言う事は気にしてない。

むしろ、元男子同士だから気が合うかも。


「なんか、思いがけないかたちでばれたけど、隠してた事はあやまるよ。ごめん」

「わたしこそあやまるね、ごめん」

「これでお互い様だね、これからもよろしくね」

「うん、よろしく」


ぼくたちは改めて握手をすると、ぼくの番号が呼ばれた。

診察では女子の部分の尿道が出来ていたので、ステージII後期に入った所。

男性器は前よりも小さくなって、前回は6㎝あったのが今日は4㎝だった。

初潮は2か月まえに来たので、尿道の位置が変われば戸籍も女子に出来る。


「何か相談したい事はある?」

「あると言えばありますが……」

「あるなら何でも話してね。性的な事でも、学校や勉強の悩み事、何でも聞くわ」

「それなら、さっき待合室で……」


花巻先生に待つ相室の事を話したが、先生はよくある事でお互いが納得しなら

気にする事はないと言われた。


「わかしまた、ありがとうございます」

「他にはない?」

「あとは生理が始まったばかりなので、まだ慣れない事です」

「生理痛とかはどう?」

「痛みはありますが、ちょっとチクチクするぐらいです。血が出る量はわかりません」

「ナプキンはどれぐらいの頻度で変える?」

「起きてる時は2,3回ぐらいです。寝る時は夜用を使いますが1晩ちゃんと持ちます」

「それぐらいなら、大丈夫ね」

「生理ってもっとつらいって聞きましたが、そうでもないですね。

ナプキンを変えるのが面倒ですが」

「みやびさんは軽い方ね。私も初めは出血量が多くて痛みも強かったから

大変だったけど、今はピルとか漢方薬を使って今は楽になったから、羨ましいわ」

「そうなんですね」

「他にはない?」

「はい、大丈夫です」

「それなら、薬を出しておきますね。お大事に」


診察が終わるが、夕季の姿がないがトイレに行ってもいなかったので呼ばれたようだ。

夕季の担当医は花巻先生じゃなくて、大森先生と言う事に。

大森先生は花巻先生と違って軽い感じの人で、担当じゃないのに

話しかけられたことがあるけど、ちょっとセクハラ発言が多いけどいい先生と思う。


 待合室で夕季の診察が終わるのを待っていると、夕季が診察室から出て来た。


「わたしもみやびの方呼ばれてすぐ呼ばれたけど、みやびは早かったね」

「聞く事もあまりないし、相談する事も少しだったからね」

「そう。ところで、どうだった?」

「ステージIIの後期で、もうすぐ女子の位置の尿道が出来るんだって」

「そうなんだ。わたしはステージIIIに入って、もう少しあそこが小さくなった

そろそろ完了だって」

「同じ年だけど、女の子としては夕季の方が先輩か」

「あら、誕生日もわたしのほうが早いからわたしの方がお姉さんよ」

「はやいって1日だけだよね」

「1日でも早く生まれればお姉さんだかね。芸人だったら姉さんって呼ばないと駄目よ」

「そうだけど、なんか違うが気もするけど、いいか」


夕季はお笑いが好きであるが、コアというよりちょっと詳しいライト層。

ぼくもお笑いは好きな方ではあるけど、夕季ほどではないけど話はあう。


「みやび、今日はこの後どうするの?」

「今日は1日休む事にしたから、家に帰るだけで暇かな」

「わたしも、1日休みだで時間がから家に来ない?」

「それって……」


夕季がニコッと笑うと耳元で


「この時間なら、家族はいなし帰るのも遅いから……」


というが、つまりそう言う事である。

実はぼくたちは既にキスはしたが、その先はTS病と言う事を隠すために

言い出せなかったが、お互いがTS病と言う事がわかったからもう気にする事はない。

なので、ぼくの返事はもちろんOKっであった。

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