カルテ1 大橋直之(注:性器の直接表現があります)
「後天性性転換症候群 Acquired sex change syndrome (ASS)」
が1990年に世界で初めて報告されて70年。
今は体も心も法的にも女性である。
ASSは病態がわかって来たのと、治療法の確立で死亡率は1%程となった。
以前は死亡率が非常に高く、初期に報告された患者は全員死亡している。
治療法と言っても、性別の変化を止める方法は現在もなく
急激な症状による死亡やダメージを受けるて起こる後遺症を防ぐ療法を取っている。
現在も後遺症を0にするのは不可能であるが、重篤な後遺症は
以前と比べてほぼなくなっており予後はかなり改善されている。
早期発見が出来、性別の変化によって起こる症状を抑える方法はみつかったが
性別の変化を止める方法自体はまだない。
研究はされているものの、性転換が進んだ状態で進行を止めるても
男女の性器を持つ状態になり、そこから元に戻れないならば進行を止める
意味がないのではとなり研究があまり進んでいない。
そのため、進行を止めるのといより、数週間から1か月で性別が変わるのを
1~2年かけてゆっくりと変化させのが現在の標準だ。
急激な症状で搬送される事は以前より減ったが、今度はゆっくり変化する事に
よっておこる精神面の問題がある。
痛みや体調不良、ホルモンバランスの変化によって起こる精神的な問題や
性別が変ことによる事による環境の変化など、ASS専門医は精神面の
ケアも大事な仕事となる。
そのため、ASSに罹患した医師が多く、私が勤務するとよやま病院のASS科の
医師は全員罹患者である。
「よう、椿、元気か」
同僚のASS科女性医師、大森あきらに挨拶として胸を揉まれるがこれは毎回である。
AAS科の医師と言う事は、あきらも元男性。
と言っても女性になったのは7歳時。
ASSは15から25歳に発症する事が多く、全体の90%がこの年齢層だ。
残りの10%は26から32歳が8%で15歳未満は1%、33歳以上が1%となっている。
現在報告されている中では最も低い年齢は6歳、最も高い年齢は55歳であるが
7歳での発症はかなりの低年齢で論文にもなっている。
7歳で発症して女の子として育った割に、性格は男性的で戸籍も男性のまま変更していない。
「毎回、胸を揉むけど飽きないわね。私だからセクハラで訴えないけど
前の病院はセクハラで訴えれそうになって、ここに来たんでしょ」
「それをいうなよ。女だから大丈夫と思ったら、セクハラになるんだな」
「ハラスメントは異性、同性関係ないわ。あきらの場合、戸籍も男性のままだから余計厄介よ」
「おれは女と結婚したいから、戸籍を変えてないんだよ。変える変えないは本人の自由だし、マイナカードがあるからトラブルはないぞ」
後天的に性別が変わる人間が触れたので、マイナンバーににTS病罹患者と記録されている。
戸籍に性別を変える変えないは自由であるが、結婚後AASになった場合に
問題となったので同性婚が認めれたので、性別を変えても結婚は出来るのだけど。
「あきらの場合、自分が原因のトラブルが多いでしょ。ここに来た理由が理由だから
医師、看護師の評判もかなり悪いのはわかってる?」
「わかってるよ。だから、椿、手を出すのはおまえだけだぞ」
「つまり、わたしが訴えれば、あきらを追い出せる訳ね」
「え、それってまさか……」
「そろそろ外来の診療時間だから、行かないと」
「椿、答えてえてくれよ~」
私は外来診療があるので、無視して診察室へ向かう。
もっとも、あきらを訴えるつもりは現時点ではない。
ただ、あくまでも現時点であるので、あきらの運命は私次第と言う事だ。
私の診療科は正式にはASS科であるが、TS科となっている。
理由は一般ではASSをTS病と呼ばれて定着しているので、わかりやすいように
病院もTS科を使用している。
TS科の外来は、ほとんどが血液データーの比較と経過観察であるが経過観察には
性器の変化も含まれるので、かなりナイーブである。
わたしは訴えれた事はないが、知り合いの医師はセクハラと言われて
訴えれた事があり、専門の弁護士を雇って何とか裁判に勝ったが
裁判の間は診療もできるず、かなりやつれていた。
今は復帰して、この病院で勤務しているが、念のために言っておくがあきらではない。
「今日の予約は6人なのね」
診療の前に今日の予約を確認するが、1日の患者数が6人なの少ない方。
もっとも、私の担当の患者数だけで、TS科外来自体はもっと多い。
ただ、最近は新規の患者もあまりおらず、肉体的、精神的に安定して
通院自体がひとまず終わる患者も多く、安心している。
私の患者は元男性ばかりであるが、TS科の医師は救急時以外は
元の性別と同じ医師が担当している。
理由は罹患者だけあり、精神面のケアがしやすく患者と話やすいためだ。
つまり、私の担当の担当の患者は元男性か、女性になりつつある男性である。
今日の患者はほとんどが完全に女性になった患者のため、血液のデータをみて
経過観察や相談したい事を話すだけであるが、1人だけ身体の変化が終わっていない患者がいる。
患者の名前は大橋直之 16歳で今日最後の患者だ。
15,6歳で発症する患者が多く、私も16歳に発症した。
私の両親は同じくTS病罹患者だったので、肌の変化ですぐTS科に行き
調べたところ、TS病を示すTSマーカーが検出され、すぐ治療にとりかかった。
変化の途中でかならず男女両方の外性器と性腺がある、いわゆるふたなり状態が
あるがこの状態が個人差があるが6か月近くあるので、ホルモンバランスが不安定で
肉体的にも精神的にも辛い時期である。
これが原因でイライラして、人に当たったり、逆にやる気が無くなったりしたほか
性の面でも不安定で、ここでは言えない事もあったが。
ただ、この期間を乗り越えれば肉体面が安定して、精神面も落ち着いてくる。
あと、初潮が来た時はびっくりしたけど、初潮がくると変化がほぼ終わる頃でもある。
「先生、こんにちは」
女の子服装をしているが直之君は現在、ステージIIの後期で完全に女性になる手前である。
「こんにちは、体調はどう?」
「時々だるいですが以前よりは、やる気があって安定します」
「それはよかった。血液のデーターも問題はないわね」
「そうですか」
「あとは胸のほうだけど、大分多いくなったわね」
「またブラのサイズが1カップ大きくなったから、買い替えが大変です」
「そうか。でも、ブラジャーをするのを嫌がる患者さんは多いけど、直之君はそうでもないのね」
「姉が4人いるせいか、あまり抵抗はありませんでした。
ただ、女子の制服にするかはまだまだ悩む所です」
男性から女性になる場合、下着やブラの問題があるが、自分が女性になった事を
認めたくないため、特にブラをつけるのが嫌がる患者さんは多い。
ただ、これに関しては医者がどうこう言える事ではないので、相談されない限りは何も言わない。
「胸のサイズをは測らせてもらうけど、いいかな?」
「はい」
「正確に測るから、ブラを取って立ってね」
「はい」
直之君はブラを取って、起立をする。
胸のサイズは身体の変化のデーターとしてとらないとならない。
ただ、胸のサイズを測る時は性器同様、デリケートである。
こちらにはいやらしい気持ちはないが、患者が信用するかは別。
直之君は素直なので、問題ないが担当した中にセクハラされると言って拒否され
事もあったが、データーのために最低3回は計らないといけないのでかなり苦労した。
「胸囲は88.5㎝ね。先月は86㎝だから大きくなってるわね」
「ブラのサイズもCからDカップになりましたが、大きい方ですか?」
「年齢にしたら大きい方だわ。わたしも16歳でTS病になったけど直之君よりも大きくなったわ」
「あの……先生のブラのサイズを聞いてたらセクハラになりませんか?」
「別にいいわよ。Eカップだけど、女性になってから変わってないわ」
「えーと、先生は僕と同じ年齢でEカップになったのですか?」
「正確には17歳でだけど、高校生でEカップになったわ」
「そうですか。僕もあと1カップ大きくなるかな?」
「断言はしないけど、6か月でDカップになったからなるかもね。
あと、胸が大きくなるには年齢は関係ないわよ。若い方が大きくなりやすいけど」
「わかりました、がんばります」
何を頑張るかわからないけど、直之君は胸が大きくなりたいとい事はわかる。
「ブラと服を着たら、次は性器の方だけど、いいかな?」
「はい、大丈夫です」
「それでは、ベッドに横なてね。脱ぐのは毛布をかけてからでいいわ」
看護師に毛布を持って来てもらうが、これは目隠しのためでもある。
性器を診るのは本人にとって恥ずかしいのもあるが、胸以上に
セクハラと言われる可能性が高いので、気を付けないならない。
基本的は触れないのだが、どれぐらい男性器が委縮した計測をしないと
ならないのため、どうしても触れないとならない。
「準備ができたらからいいかな?」
「大丈夫です」
「失礼します」
直之君のまだ尿道が男性の位置なのでまだ男性器となるものの、サイズは
かなり小さくなっているて、立って用を足す事が難しい。
女性器の方も膣が開口しており、内性器もCTの検査では子宮は年齢にしては
小さいが卵巣、膣といった女性器がちゃんとあり機能している。
初潮も既に迎えているが、月経が始まるのはやや早い方。
「先月よりも、陰茎のサイズは小さくなってるわね」
「自分でもかなり小さくなった思いますが、まだ男性器なんですか?」
「おしっこが出る位置がまだ男性の位置だからね。
女の子の位置になったら、陰核になるわよ」
「そうでなんですね」
男性器と陰核の違いはサイズと尿道が通っているかどうかだけで元は一緒。
直之君の場合、まだ男性器であるが女性の位置の尿道口が出来ているので
次の通院までにこちらから出るようになり、女性になっているだろう。
ただ、陰茎が完全に陰核のサイズになるかと言うとほぼなくて
尿道が無くなっても、平均で2㎝ほどと女性としてはかなり大きいサイズ。
通常の女性のサイズにするには陰核縮小術、要は外科手術しかないが
場所が場所なのとかなり減ったと言っても感覚が無くなる
事もあるので、手術を受けるのは患者もかなり悩む。
私もかなり悩んだけど、結局は受けいないが自然に1㎝まで小さくなったのもあるからだ。
1㎝でも大きい方であるが、元男性としたら小さい方。
ただ、手術受ける率は全体の40%と半数以下である。
術後のケアや場所が場所なので、受ける方が少ないのが現実である。
「サイズを測りたいけど、いいかな?」
「はい、大丈夫です」
「手袋とアルコール面をお願い」
「わかりました」
看護師に手袋とアルコール綿を持て来てもらい、測定をする。
「アルコールのアレルギーは大丈夫だよね」
「大丈夫です」
「ちょっと冷たいけど我慢してね」
アルコール綿で消毒して、男性器のサイズを測る。
サイズは4㎝であるが、弛緩時のサイズは平均で8㎝ほどなのでかなり小さくなっている。
ここまで小さくなり、初潮も来ているので次の来院時はステージIIIになる可能性が高い。
ステージIIIは3段階ある最後の段階で、陰茎の尿道が塞がりさらに小さくなり
精巣が消失したら完了女性となるが、直之君は既に精巣は消失したか、触れる事が出来ないサイズになっている。
「終わったわ。説明するから、下着とズボンを穿いてまた椅子に座ってね」
「わかりました」
直之君は下着とズボンを穿いて再び椅子に座る。
「男性器は4㎝まで委縮したけど、ここまで小さくなったら、おしっこが
出る位置が女の子の位置になったら、身体の変化も終ると思うわ。
すでに、女の子の位置に尿道口ができてるから、2週間前後でそこからおしっこ出るようになるわ」
「僕もついに女の子になるんですね」
「そうね。直之君は精神的に落ち着いてて良かったわ」
「不思議と女の子になる事に不安はなかったです」
「それはよかった。でも、何か相談したい事はない?」
「はい、あります」
相談内容は大体決まっていて、服装と改名、性別の変更である。
直祐君はは良い名前が思いつかなくて改名の手続きが決まっていない。
ただ、候補はいくつかあるらしい。
私の前の名前は花巻 誠之輔と今時の名前でなかったが、今は花巻 椿。
椿は先祖の名前なのと、2月生まれで季節の花だからだ。
あとは、響きがなんか好きでだったのもある。
「何を相談したいの?」
「えーと、服装の事で。学校以外は女の子の格好だけど、学校だけは女の子の制服が着れなくて…」
「そうなんだ。でも、私もそうだったからわかるわ」
私もすぐに下着は女性も服も女性ものにできたけど、制服だけは最後になった。
学校では女子の制服を着るの恥ずかしいのと、いじめられると思ってきれなかったが
意を決して着て行ったら、逆に人気物になったから気にしすぎていただけだった。
ただ、すべてが私の様に受け入れてもらえる訳ではなく、実際にいじめもある。
なので、安易に薦めれないが、直之君は外見からして女子の制服でもいいとは思う。
「先生は受け入れられたのですね」
「みんな優しかったからのもあるわ。直之君はどうなの?」
「周りには早く女の子の制服を着てきてと言われてます」
「断言は出来ないけど、それなら大丈夫かな。身体の変化もそろそろ終わるから
そろそろ女子制服にしてもいいかもね」
「女の子はスカートかパンツを選べるから、パンツだと変わるのは上だけだけど
僕はスカートがいいかも」
「どうするかは、自分で選んでね」
「はい、わかりました。女子の制服にしたら先生にも見せますね」
「そうね、楽しみにしてるわ。他にない?」
「後は改名ですね。次の時には決めて手続きをすることぐらでもう、他はないです」
「わかったわ。薬の処方だけど、症状がないならそろそろやめてもいいわよ」
「まだ、少しだるいので同じ薬をお願いします」
「わかったわでは、お大事に」
「ありがとうございます」
薬の処方と、次回の予約をして診察は終わる。
これで今日の外来診療は終わりであるが、今日は人数も少なく楽であった。
今日は直之君は普段着で女の子の服装で来たけど、女子の制服姿の
直之君を見るのが楽しみになってきたけど、変な意味はないからね。
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