二 再見
それから三日後のこと。俺の足はまたあの河原へと向っていた……。
「──おっと。うっかり来てしまった……」
習慣とは恐ろしいものだ。また仕事で嫌なことのあった俺は、灼熱の暑さもすっかり忘れていつもの場所へ来てしまったのである。
あの後も、梅雨だというのに雨が一滴も降らない日はなおも続いていた……。
土手から河原を見下ろせば、ちょろちょろ流れていた小川もますます細くなり、最早、流れているかも疑わしいような水量となっている……こんなにずっと雨降らないで、農作物とかダムの貯水量とかは大丈夫だろうか?
そういえば、スーパーの野菜の値段が高くなったような気がするし、水道も給水制限するようなことニュースで言っていたような……。
「とりあえず喫茶店にでも行くか……」
この暑さでは、お気に入りの避難場所も無駄に汗をかくだけなので、陽炎に歪む土手上の道で踵を返すと、俺は近くの喫茶店へと向かうことにした。
「……ん? あれは……」
だが、立ち去ろうとした俺の視界の隅に、どこか既視感のあるものが不意に映り込む……そちらを振り返って目を凝らせば、やはりあの先日見た釣り人風のおっさんである。
ここまでその声は聞こえてこないが、天に両手を掲げたあの格好からして、やはり雨乞いをしているのであろう。
「もしかして、毎日ここで雨乞いしてるのか? この炎天下にご苦労なこった……」
無論、この二日間は見に来ていないのであるが、その間も雨は降っていないし、そう考える方がむしろ自然だ。
しかし、なんでこんな河原の真ん中で雨乞いしてんだろう? するにしても神社やお寺とか、あるいは霊山の頂上とか、普通、そういうとこでやるもんじゃないのか? しかも、見た感じからして神職や坊さんじゃなく、ただの釣り人のおっさんのようだし……。
その異様な熱心さに最早、呆れを通り越して感心すらしてしまう俺であったが、よくよく考えてみればいろいろと疑問が湧いてくる。
「うん。何も見なかったことにしよう……」
彼がなぜそんなに熱心に雨乞いをしているのか? ちょっと興味を持ってしまったのは確かであるが、やっぱりヤバイやつには違いない……俺は改めて踵を返すと、気怠い足取りで河原の反対側へと土手を下った──。
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