第53話 真実

 馬頭鬼から全ての真相とやらを聞かされた落合は怪訝そうに不愉快そうに顎を摩っていた。


「私が彼女を助けなければどの道彼女は死んでいた。記憶を改変しなければ心は病んだままだった。それでもお前は私のやった事に口だしをするのか黒尾様の時のように」

「クククッ弁解は終わり? そう? だったら俺の番だな、なぁんかうさんくせぇんだよその話、宮部の父が家族と無理心中をしようとしたんだっけか? それをお前が颯爽と助けた! いいねぇ! 格好いいじゃないか、その話に嘘偽りがなかったらな」


 落合の瞳がキラリと輝く


「お前、宮部奈々だけじゃなくて父親の記憶も改変して無理心中を起こさせたろ? この子をこの世界に連れてくるのに親は邪魔だもんな? 精神を弱らせた方が後々操り易いもんな? なぁそうじゃないのか? 馬頭鬼くん」

「ハッなにを証拠に……」


 落合がいつの間にかに馬頭鬼の目の前に立っており彼の頭をトントンとつつく


「こういった場合は記憶を覗くのが一番手っ取り早い、その脳味噌の中の映像を誰でも可視化できるように変換しスクリーンにでも流すか? いや俺の趣味じゃないって事で時間を巻き戻す事にしたよ」


 落合と馬頭鬼の二人は真っ暗な住宅街のアスファルトの上に立っていた。

 街灯には虫が集っている

 そのアスファルトの上には気絶し横たわっているスーツを着た男性

 そして馬頭鬼が立ってスーツを着た男性に何かの魔法を発動しようとしている所だった。

 それを落合が阻止し重力魔法で地面に叩き付けて拘束する


「クククッ今、この男に記憶改変の魔法を使おうとしたな? したよな?」


 背後にいるもう一人の馬頭鬼に落合はそう問い掛ける


「そしてこの男は宮部奈々の父親、記憶を覗かなくても顔を見りゃわかる」

「……」

「確定だな、お前は宮部の父親の記憶を改変し無理心中を起こすように仕組んだ」


 スーツを着た男は目を擦りながらその場で起き、自分が道路の真ん中で倒れていた事を知り何事が起きたのかと驚いている


「こうして過去を変えても新たな世界線が産まれるだけであの世界になんら影響を及ぼさない、元の世界の宮部奈々は両親を亡くし記憶を改変させられた子供のままだ」


 落合は元の時間へと戻る


「分かったな? 俺に証拠は必要ない、事実を目の前まで持ってこれる手段を持って居る俺にはそんなもん必要ないんだ。すごいだろ?」

「……」

「先程、お前が何をしていたのかココに居る連中の脳味噌の中に直接映像を流し込む事も出来るが……まぁそんな気色悪いことしなくても自白してくれるだろ? な?」

 

 と言って落合は馬頭鬼の肩に手を置いたのだった。



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