第54話 嘘

「コイツは容疑を認めた。黒尾復活のタメにアチラの世界から子供を拉致し記憶を改変した。その時にその子供の父親の記憶を改変し無理心中を引き起こさせ両親を殺害した。クククッおいおいマズいんじゃないの? これ」


 落合は脱力の魔法で馬頭鬼の身体の自由を奪い光夜連合の幹部たちにそういって凄む


「馬頭鬼、アンタは認めんだね? 彼の言ったこと全部」

「……」


 黙秘

 

「それは肯定と受け取っていいんだね?」


 美しい着物を着た女性がため息を吐く


「こりゃ悪いことしたね、こんな身勝手許されるわけがないそれもあの黒尾の復活のタメ? 馬鹿も休み休み言いな!」


 落合は馬頭鬼の身体を吹き飛ばし宮部奈々の前に差し出す。


「え……?」

「処分はお前に任せる」


 落合は小さなナイフを宮部に渡す。


「ソイツはなんでも斬れる、力も必要ない」

「ま、まこまこなにしてんの!?」


 宮部からナイフを奪おうと名手が宮部に近寄ろうとしたがそれをジョンが止めた。


「幼い子供の手が汚れる所を見たくないというお前の気持ちも分かるが今は堪えろ、この子の人生だ。復讐心に子供も大人も関係ない」

「で、でも! 奈々ちゃん!!」

「……」


 ゆっくりと宮部は立ち上がりナイフの刃先を見下ろした。


「なんで……なんで……こんなこと……」


 ゆっくりとゆっくりと頭馬鬼に近寄る


「お前が全部!! お前が全部こわしたんだ!!!」


 勢いよく刃が振り上げられた。

「私、奈々の笑顔大好きなんだ」


 それは姉の声、存在しもしない姉との記憶


「ど、どうしたの? いきなり……」

「えへへ、おどろいた?」


 奈々の両頬をびよーんと伸ばす。姉


「だからさずーと奈々には笑顔でいて欲しいんだ」

「……う、うん」

「後悔とか、してほしくないんだ自分の選択に」

「……」

「大好きだよ、奈々、私は何があっても奈々の味方だからね」


 涙が零れ宮部の手が止まる

 存在しない姉

 ありもしない記憶

 それが宮部の手を止めた。

 ナイフは手から滑り落ち、地面に落ち

 宮部は泣いた。

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