第49話 罪滅ぼし
落合と名手は宮部の元まで転移した。
宮部は団地の近くにある茂みの影で一人泣いていた。
名手は考える前に身体が動き宮部の近くに寄ってしゃがむ
そして宮部の髪の毛をゆっくりと撫でてからなにも言わず抱きしめた。
例えその結果宮部から突き放されるような結果になったとしても名手はそれを受け止めるつもりでいたしかし宮部が名手の腕を突き放す事はなかった。
「で? あの子はどうするつもりだ?」
落合はこっそり後をつけてきていたアコウギに声をかける
「ずっとここに幽閉しているつもりか?」
「……あの子が居なければここの住民たちは……」
「この団地には声を発せられてない者が多いようだな、声を出せない生き物はこの世界じゃ立場が弱くなる、そういった連中をココで養ってるのか?」
「……あぁ」
「お優しいことだな」
「私を拾って下さったあの頃の黒尾様なら必ずこうする、そう思い、安い同情心でこの地の者たちを救った。しかし結果はこのザマだあの子の力を借りなければこの地を護ることもままらなくなってしまった」
「へぇ、アンタも結構つよいハズだろ? 相手はもっと強いのか? えっと高野豆腐とやらだっけか?」
「光夜連合だ。誰も彼も黒尾様やお前の様に圧倒的な力を持っていると思うな、一人一人の戦力はそう高くなくても集団で来られては手に負えん」
アコウギは足元にあった石ころを蹴飛ばす。
石ころは硬いコンクリートに当たって弾けた。
「悔しいか? 自分が情けないか?」
「……意地の悪い質問をするな」
「クククッアイツも同じ事を言ってたよ」
「え……?」
「アイツも最初はただ護りたいだけだった。この世界のすべてをな、それが大きな責任と膨大な力を得て気がついたらアイツ自身も思ってもなかった方向に歩み出していた。結果はお前も知っての通りだ」
アコウギは嘗て崇拝していた黒尾の知らぬ一面を知りその落合の話に興味を持ちはじめた。
「なにかを護り切るには綺麗事ばかり言ってられなかったんだろうがアイツはやり過ぎた。だから俺はアイツを殺した。俺の独断でな」
「後悔しているのか?」
「いいや、全く、クククッなんだ心配してくれたのか? 嬉しいねぇ」
「……いいや、全く」
とプイッとそっぽを向くアコウギ
その頃には宮部も泣きやみ、名手に感謝の意を伝えていた。
「奈々ちゃん、無理しなくていいんだよ今は私の胸でゆっくり泣いてていいんだよ」
と言って名手は宮部の髪の毛を撫で続けている
「ごめんなさい……ここの人たちはみんないい人なんです。ただ私がわがままでわがままな事してみんな困らせて……悪い子なんです。だからお姉ちゃんも……」
「そんなことないよ、奈々ちゃんのお姉ちゃんはそんなことで奈々ちゃんを見捨てる人じゃないよ」
少しムッとした顔をする宮部
「お姉さんはお姉ちゃんに会ったことないじゃないですか……それなのにそんなことわかるわけないじゃないですか……」
「わかるよ、だって奈々ちゃんのお姉ちゃんだもん!」
「な、なんですか……それ……ヘンですよ」
「そかな?」
と言ってえへへと笑う名手を見て宮部の心は暖かくなった。
「やっぱヘンです。お姉さんは」
そんな様子を見ていたアコウギは顔を俯かせる
「……私も最期の時の黒尾様と変わらない」
「だから? また私を殺せとでも言う気か?」
「……」
「あの子の姉が見つからないという話だがお前もあの子の姉についてなにか分かっている事はないのか?」
「私も探したがそれらしい人物は発見できなかった……」
「ふーん……」
落合は顎を擦る
「だったら俺たちと一緒に探さないか?」
「え?」
「クククッちょうどあの子への罪滅ぼしをしたい気分なんじゃないかっと思ってな、どうだ? 安心しろお前がここを離れてる間はここの結界は俺が張ってやる」
「……」
その落合の提案にアコウギは黙ってうなずいた。
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