第48話 お節介という罪

 落合はアコウギを重力魔法でアコウギの身体のみを無重力状態にして浮かしてボールのようにポーンポーンと上空に弾いたりして遊んでいる

 その様子を見て宮部は顔を青くしている


「や、やめろ!!! 大魔術師!!!」

「じゃあ、俺の質問に答えてくれよ~お前は俺たちが来る前に一体なにと戦ってたんだ?」

「お、おまえには関係のない、話、だ!」

「ふーん……宮部、お前ならなんか知ってるんじゃないのか? コイツが何と戦ってて何を守ろうとしたのか」

「宮部! 余計な事は! 言わないで! いい!!」

「クククッこのままじゃこの可愛らしいアコウギちゃんが立派なバレーボールと化しちまうぜ?」

「アコウギさんは……この団地を守ってくれてるんです。光夜(こうや)連合の人たちから……」

「光夜連合? 今はその連中がここを牛耳っているのか? 可哀想にせめて名前ぐらいはまともな組織に統括してほしいもんだよな?」

「私を、おろせ! この!」


 落合を殴ろうとするがその小さな手では届かず


「ははっ見てみろ! まるで愛玩動物だな」

「も、もうやめなよ……まこまこ」

「だ、そうだ。この少女の寛大な心に感謝することだなアコウギちゃん」


 落合はアコウギにかけていた重力魔法を解除する

 ドスンと地面に落ちるアコウギ


「や、やさしくおろしてあげてよ!」

「あぁ悪かったよそこまで気が回らなくてな、で? その高野豆腐だったか? ソイツらはなぜココを襲ってくるんだ? もしやこの団地に大量の魔力……じゃなくて妖力が込められた魔石がある事が原因でお前はソイツらから襲われていてお前はこの団地を護るためにずっと奮闘してきてこの団地の連中から尊敬され気づけばこの団地の中で一番の権力者になっていた。そしてそんなある日に強力な倍加の術式を持った少女がお前たちの前に現れた、それがそこの宮部奈々だ。お前たちはこの子をココに泊める代わりにこの子の倍加の魔法を使ってここに張られている結界を強化していたがこの子が急に居なくなったのが原因


 で高野豆腐の侵入を許してしまったーてな感じ?」

「私に聞くまでもなく最初から分かってる癖に……癪に障る! 相変わらずのようだな……暴走した黒尾様を止めてくれたことには感謝している……だがお前の顔は見たくなかった」

「あぁそうかい、クククッそりゃいいが宮部には伝えたんだろうな? コイツの術式の事とお前たちがその術式を利用しているということ」

「……」

「まさか伝えてない? へぇこりゃ不味い、利用する為に幼女騙して幽閉してたのか? この団地によ」

「弁明はしない、気に入らないのなら私を殺せ、大魔術師」

「自暴自棄か、英雄扱いをされてもお前の中の虚無感は拭えなかったということか」

「……私はあの日に死んだのだ。黒尾様が死んだあの日にな、私にとってあの人こそがすべてだったのだ。年月が経つたびにそう思い知らされる……今の私はもぬけの殻だと」


 落合は泡は既に引き神妙な趣で落合たちの会話を聞いていた宮部に視線を落とす。


「君はここの連中に利用されてたことは知ってたんだな?」

「う、うん……お父さんとお母さんは私のこと……大事にしてくれてるんだって思ってた。本当のお父さんお母さんみたいに……でも本当は私の力が大事だっただけなんだってある日知ったんです」

「ふーん、で君は今でもこっちの両親が許せない?」

「……わかりません」

「まぁそりゃ気持ちの整理はつかんわな、急にもしかしたら自分は本当は愛されてないかもしれないなんて事実を突きつけられたらよ」

「ちゃんとお話したの? お母さんとお父さんとさ……どうやってその事を知ったのか知らないけどもしかしたら奈々ちゃんの勘違いかもしれないよ?」


 名手が割って入ってくる

 それに対して宮部は首を横にふった。


「だったら!」

「もういいんです!! もう!! アコウギさんだって認めたじゃないですか!? わ、私利用されてたんです……! だからもう放っておいて!」


 と悲鳴にも似た悲痛な声を上げその場から走り去ってしまった。

 その後を咄嗟に追う名手

 しかし途中で宮部を見失ってしまう名手


「さてどうする? ただあの子と親の関係を取り持つだけのつもりが大分ややこしい事になりそうだが、それでもお前はあの子にお節介を焼くのか?」

「当たり前でしょ!? 放って置けないよ!! わ、私、まこまこに助けられてばっかりだけど! それでも何か奈々ちゃんの役に立ちたいんだよ……目の前であんな小さな子が震えてるのになにも出来ないなんて……悔しいよ……」

「そうかい、クククッ悔しいか名手、そりゃそうだよな、じゃあトコトンまでお節介を焼いてやろう、宮部が例え俺たちを憎しむような事になったとしてもな」

「そ、それはヤダよまこまこ……」

「名手よーく覚えとけお前のその思いが例え純粋で高潔なモノだったとしても相手がどうその思いを受け取るかはその相手次第だ。お前がどれだけ純粋で高潔な気持ちで相手を助けたとしてもその相手がお前を親の仇の如く憎む様なことになる事もありえるという事だけは肝に銘じておけ、これから死ぬほどのお節介焼きとして生きていくつもりならな」


 と言って落合は歩みを進めた。

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