第47話 生殺与奪の権の在り処

 落合たちが転移して来たのは団地近くの大きな公園

 その名をアオバ公園


「よぉ!」


 と落合は公園の大きな滑り台の頂上に君臨している白い鳥に挨拶をした。

 そのモノはギラリと落合を睨みつける


「お前……」

「クククッどこかで会ったかな?」

「大魔術師……」


 落合を見て彼は大魔術師だと分かったという事はその白い鳥は百年前から生きているというのは確実


「あぁ。思い出したお前黒尾の部下か、確か名前は……」

「アコウギだ。大魔術師」

「そうそう、そんな名前だったなお前」


 へらへらとした態度で落合はアコウギに接しているそれを傍からひやひやとした表情で見守っている宮部


「しょしょんな態度とっちゃだめですよ……! まこまこさん! アコウギさんはすっごく偉い方で……」

「偉い? それがなんだこっちは最強だぞ」


 と言って落合はアコウギの頭上に転移する


「ひょひょえ……」

「”偉さ”も”最強”もどちらも相対的な評価だがどっちが上かって言ったらどう考えても最強だろ、宮部」

「ひゃわわわわ……」

「まこまこやめて! 菜々ちゃんが泡吹いてるよ!」

「クククッ揶揄甲斐があって大変よろしいな」


 落合はいつの間にか宮部の隣にいた。


「で? さっきの地響きはなんだったんだ? 求愛の踊りを踊ってたらあまりの凄まじい足捌きによって地面が揺れたとか?」

「そのトボケた態度はいつになっても変わらないようだな、大魔術師」

「まこまこあの偉い人と知り合いなの……?」

「まぁな、すごいか? すごいだろ? はははっそこまで言う必要はないだろ、照れるぜ」

「……」

「先程の揺れは私が外部からやって来た者たちを追い払った時に使った妖力の影響だ」

「妖力! 妖力ねぇまだこっちじゃ妖力なんて言葉使ってんのか、魔力で統一すりゃいいのに」

「お前には関係のない話だ。大魔術師」

「クククッそりゃそうだな」

「どうして今になってお前が現れる……百年の間姿を現さなかったお前が……」

「ひゃ百年!?」


 次は名手が泡を吹いて倒れそうになる


(ま、まこまこ……すごい事は分かってたけどほ、本当に何者なの?)


「クククッいいリアクションだな名手、隠してた甲斐があったな」

「私の質問に答えろ大魔術師」

「なんで? どうして? なぜ? なぜなぜなぁぜ? なんでお前なんかの質問に答えなきゃならない? 格下のお前のよ」


 落合の瞳が怪しく輝く


「そうか、ではココで私を殺せ、大魔術師、私の質問に答えないのなら私はお前を攻撃する」

「えぇ? 自殺するつもり? やるねぇ……」


 落合の弟子である黒尾とアコウギの間には大きな実力の差がありアコウギが黒尾に勝てた事は一度もなかった。

 それなのに黒尾を一蹴した落合にアコウギが勝てる訳もない、それはアコウギも分かっている、しかし彼は落合に挑んだ。


「それならお前のその覚悟には応えてやらなきゃなぁ? 来いよ、攻撃してくるんだろ? 一撃は打たせてやる、なにも出来ずにわけもわからない内に死ぬなんてあまりにも可愛そうだからな」


 落合の眼が美しく輝く


「ま、まこまこ……じょ、冗談だよね?」

「引っ込んでな、こっから先は意地の戦い生半可な覚悟なら頭突っ込むのはやめとけ」


 落合のとんでもない殺気に名手はその場で動けなくなってしまう、宮部も同じく

 双方これで準備は整った。


「解放 アラバニスカンタルニア」

「変な詠唱だな、クククッどんなもんが飛び出してくんだ?」


 飛び出してきたのは巨大な腕それが地響きと共に地面から落合に向かって飛び出してきた。

 その腕に吹き飛ばされ団地まで吹き飛ばされる落合

 団地の一部は崩壊し砂煙で落合の姿は見えなくなる

 その間に地面から巨大な何かが這い出てきた。

 それは巨大な人の形をした人形


「へぇ、術式の系統は黒尾と似てるな、要するに人形遣いだな、材質や付随してる能力に違いはあるが……俺からすれば大差ない」


 落合は何事もなかったかのようにアコウギの頭上に当たり前のような顔をしてそこにいた。


「……ワザと攻撃に当たったな? どういうつもりだ?」


 それに対してアコウギは驚いた様子を見せることもなく冷静に疑問に感じたことを問う


「死ぬ前にいい冥土の土産になっただろ? 俺に一撃食らわせられたんだからよ」


 落合はにたにたとアコウギは上空から見下している

 鉄で出来たその人型の人形は落合に向かって右手を振り上げて攻撃を繰り出そうとするしかし落合によって粉々になるまで分解されてしまう


「次は俺の番ってことでいいよな? アコウギくん?」


 アコウギは落合の魔力の衝撃によって吹き飛ばされ滑り台の頂上から引きずり落とされその上


「な……これは……」

「お前を吹き飛ばす次いでにお前に掛かってた变化の魔法も解いておいた。恥ずかしがり屋さんめ、自分の本当の姿を見られるのは恥ずかしかったのか?」


 アコウギの本当の姿は仮面をかぶり浴衣を着た幼い少女

 アコウギはこのか弱い自分の姿が嫌で嫌で仕方がなかったので普段は变化の魔法で白い鳥に化けている

 しかしその魔法は落合により無理やり引き剥がされた。


「殺せ……!」

「クククッ嫌だね」

「なんだと……」

「弱い奴は死ぬ自由すら与えられないという事だよ残念でした~」


 と滑り台の頂上で胡座をかきながら落合はケタケタと笑いながら言った。

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