第46話 地響き
名手が壁に埋まっている女性の元まで向かうと壁の女性が何かを名手に向かって差し出して来た。
「え……」
「お礼にくれるってよ」
名手は首を振る
「いえいえいえいえ! も、貰えません! 私そんなつもりでココに来たんじゃ――ひゃ!?」
壁の女性は名手の胸ポケットに無理矢理ソレをねじ込む
そして壁の女性は壁の奥へとめり込んでゆき消えてしまった。
「あーあ、逃げちまったみたいだな」
「……あれが奈々ちゃんのお母さん?」
「はい、そうですよ」
「そなんだ……」
「良かったな、ソレ」
落合が名手の胸ポケットを指差す。
名手はそのキラキラした透明な鉱石を胸ポケットから取り出す。
「これって……ダイヤモンドでいいんだよね?」
「あぁ間違いない、これで億万長者の仲間入りだなクククッ」
「こんな高価な物貰えないよ……返さなきゃ」
「律儀だねぇ、それより言いたくなきゃ言わなくてもいいんだが何故君はこの世界で住んでるんだ? 宮部」
「あぁ! ですね、それ気になりますよね」
宮部はなんの躊躇もなくこの世界へ来た理由とここに現在住んでいる理由を語り出した。
「私、小さい頃に本当のお父さんとお母さんが事故で死んじゃってずっとお姉ちゃんと2人で住んでいたんです。でもそのお姉ちゃんもある日神隠しにあってしまって……」
「そのお姉さんを探す為にこの世界に来たってワケだ」
と突然落合が話しに割って入ってきたので困惑気味に「は、はい」と肯定する宮部
「ち、ちゃんと話は最後まで聞こうよ……まこまこ」
「あぁ悪いな、人の話を聞くのは苦手なんだ。そうだな姉を探していたらここへたどり着いた、が姉はまだ見つかっておらずここを拠点にしながら姉の捜索を今でも行ってるって感じか? ここを拠点に活動してるウチにあの壁の女が君の親代わりになったと」
「……そ、そうです! すごいです! なんでわかったんですか!?」
「なんとなくだ。なんとなく」
すごいすごい! とジャンプしてはしゃぐ宮部
いやーそれほどでもと言って照れる落合
それを微笑みながら眺めている名手
「まこまこの話が当たってるってことは奈々ちゃんのお姉ちゃんは……」
「はい、まだ見つかってないんです……みんなここから出してくれなくて……」
「ど、どういうこと?」
「心配してくれてるんだと思います。私のこと……外は危険がいっぱいだからって……」
「実際死にかけたしな」
「……はい、私がみんなの忠告を無視してお姉ちゃんを探しに行ったら知らない間に元の世界に戻ってて……気付いたらあの怖い人に追われてました」
「ねぇ奈々ちゃん、どうしてこっちの世界のお父さんとお母さんと仲悪くなっちゃったの?」
「今の話しを聞いてる限りは仲悪くなるような感じはしなかったしな」
「……あの2人は私の力が欲しくて私に近付いただけの人達ですから……」
純朴な少女から出たとは思えないような発言に名手は戸惑う
「それってどういう――」
疑問を口にしようとした瞬間、地面が揺れる
「な、なに!?」
「地響き……誰かの仕業だな、クククッさて、じゃあ挨拶をしに行こうか、準備はいいか? お二人さん?」
「え、ちょ――」
返答の前に三人はトイレから姿を消した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます