第43話 一杯のオレンジジュース
落合と名手はとあるファミリーレストランにいた。
「色々考えたがやっぱこういうなんでもあるレストランとかが一番無難だよな、好きなの頼んでくれよモチロン俺の奢りだ。君もな」
落合の視線の先には追跡者に追われていた少女がいた。
彼女も何が起こったのか理解出来ていない様子で呆然としている
唖然としたまま名手と少女の2人はレストランの席に着いてしまっていた。
そこではっとする名手
「あ、あの君! き、傷は……」
少女の背中にあった傷の事が気になり背中を覗くがそこには傷はなく切り裂かれていた服も綺麗に治っていた。
「すごいだろ、俺が治したんだ。それより何頼む? 期間限定でタコライスがあるらしいが」
「……ま、まこまこって一体何者……なの?」
「すごーい魔法使い」
とデカイメニュー表をペラペラと捲りながら言う落合
「……」
「取り敢えずポテトでも頼むか、その様子じゃ定食とか頼んでも食えないだろ?」
落合は店員を呼びポテトフライとドリンクバーを3人分頼む
そして知らぬ間に名手の前にはオレンジジュース
少女の前にはメロンソーダが置かれていた。
落合の前には黒酢あんかけ焼きそば風ソーダが置かれていた。
落合はソーダを一口飲んで興味本位で持って来た事を後悔しつつ名手に向かって口を開く
「そこの子、お前のおかげで今生きてるんだ」
戸惑いながらもメロンソーダをストローでちゅーと吸っている少女を落合はストローで指す。
「え……?」
「何れ死を目の前にしたお前は恐怖心と同時に無力感に苛まれる事になるだろうだが……お前が無謀にも敵に挑んだおかげで1人の人間が救われたそれは間違いの無い事実、だからその時が来てもあまり自分を責めてやるなよ」
強敵を目の前にして名手はただ泣き叫ぶことしか出来なかった。
そんな自分を名手は恥じ更に心の傷が増すと落合は分かっていただからそんなことを口走ったのだ。
「まこまこ……あの……えぅと……」
「今は考えもまとまってないだろうし感情もグチャグチャでなにがなにやらって感じだろうから無理して話そうとしなくてもいい、そこで今はゆっくりと気持ちを整理してな」
「……」
名手はオレンジジュースを手に取る
「甘い……」
その甘さが自分が確かに今、生きているんだという実感を与えてくれた。
今までは半分夢を見ているかのような状態だったが一杯のオレンジジュースが名手にここは現実なのだと知らせてくれた。
安堵感からか名手の眼から大量の涙がこぼれ落ちる
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