第42話 ご飯の時間

 頭を吹き飛ばされた追跡者が頭がないにもかかわらず動き出し失った頭が再生されてゆく


「自動再生持ちか頭がなくても再生できるのは素晴らしい、物理攻撃と変態くんは相性が悪いってことだな」


 様々な色で万華鏡の如く輝く斑色の瞳を持つ最強の魔術師こと落合真はその瞳で追跡者をジックリと見つめる


「あぁなるほどオタク元人間だな? 分不相応な量の魔力を得ようとした結果、魔力が暴走、その結果が最早人間とも呼べないような化け物になってしまったという所か」


 追跡者が落合に向かって爪を飛ばしてくるが落合には当たらない


「お前と同じく俺も物理攻撃には強くてな、まぁ話すと長くなるから詳しい事は割愛するが簡単に言ってしまえばすーぱーむてきばりあーが俺の周りには張られててね、物理攻撃は俺には当たらん」

「え、えさえさ」

「エサ、人肉か? いや人間の魂だな、お前が欲してるのエサというのはそれがお前の栄養源、可哀想に案外大変だろ? 人間の魂の調達ってのは……お前程度の実力じゃ」


 落合は追跡者の両手を吹き飛ばす。


「クククッ再生してみな、ホラホラ」


 雄叫びを上げ落合に向かって追跡者は突撃してくる


「再生能力をもってしても残念ながら不死は再現できなかった。”外”の魔術師たちも俺の解放から逃れるタメに必死に不死の研究をしていた時期があってな、再生能力は不死に一番近い技術だと思われていて真っ先に研究対象に選ばれたんだが再生には限界があるという結論に至った。無尽蔵の攻撃を間もなくくらい続けたら再生に使う魔力は何れ尽きる」

「あ、あぁあああああ!!!」


 追跡者は一ミリの球体になるまで圧力をかけられる


「特に圧縮には弱くてな、圧縮魔法に対処しなければいけないから細切れにされるよりも再生までに時間が掛かる上に消費魔力も多くなる」


 球体はそのまま再生することはなかった。


「あぁ限界? まぁ仕方ない元々大した魔力は持ってなかったしな」


 落合は不敵に笑いながらその球体を拾い上げる


「だがまだ死んじゃ居ないな、よしよし良い子だ」


 落合は球体を目の前に投げつけるすると球体は人型に戻って行き1人の男の人間となった。

 男は気絶していて固いアスファルトの上にに倒れたままでいる

 しかし落合の口は止まらない


「身体は元に戻したもう再生能力も術式も使えないがまぁいいだろ? そろそろ学園から教師諸君がここへやってくるからそれまでココで寝てな、それと――」


 落合は後ろを振り向いて名手の様子を確認する


「アンタもな、そこで待ってな」


 名手は落合を認識できていない、彼女は震えていてその場でうずくまって泣いている

 そのまま落合は寮に転移しようとした。しかしそれは名手の泣き声が止める


「……」


 何れここには落合が呼んだ教師達が来て彼女も保護されるだろうだから大丈夫なんの問題も無いハズ……と落合は思おうと思っていた

 暫く落合はうずくまる彼女を斑色の瞳で見下ろす。

 そしてため息を漏らした。


「……世話になったからな」


「ひっ……ひっ……」

「よ! 名手」

「!?」


 慌て顔を見上げる名手

 そこには斑色の瞳をした男が立って居た。


「ま、まこまこ!? だめ! ここには魔獣が!?」

「魔獣!? そんな物騒なもんがここいらで彷徨いてんのか? 怖いなぁ……なーんてな、アイツなら倒したよ、どう? ビックリした?」

「え……」

「落ち着いて周りを見渡してみな、もう化け物はいないだろ?」


 名手はその充血した目で辺りを見渡す。確かに落合の言った通り追跡者は消えていた。


「メシでも食べにいかないか? 今から」

「え?」

「ご飯だよご飯、1人寂しく飯食いたくねぇんだ。いいだろ?」

「ど、どういう――」

「えぇ!? いいのか!? よかったよかった! なにがいい? 和? 洋? 中? それともタイとか? いやいやまさかのベトナム? まさかまさかのドンデン返しでメキシコ?」

「ま、まって話しを――」


 名手に有無を言わさず2人はその場から転移して消え去ってしまったのだった。 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る