第39話 カレー味のアイス

「よーし! じゃあ今日はまこまこの加入と勝利を祝して! かんぱーい!」


 喫茶店 名手にて明るい声が店内に響き渡る


「もう! 梨里! 営業中よ! 静かに!」


 名手の母である甘奈あまながカウンターの向こうからそう娘である梨里を叱りつける、しかし梨里はどこ吹く風


「いいでしょーどうせお客さんもいないんだしー」

「もうこの子は……みんな梨里に振り回されて大変でしょう? 今日はそのお礼をしたいから遠慮なしにジャンジャン食べていってね、全部この子の奢りだから」

「えぇ!? な、なによ! それ!」

「大声出した罰よ」

「うぅ……もうこんなけちけちおばばの事は放っておこ! 今日はおめでたい日なんだから盛り上がってこー!」

「だから大声はやめなさいっちゅーに……」


 梨里の前には好物のあまあまのケチャップを使ったナポリタンスパゲッティとオレンジジュースが

 荒川の前にはダイエット中なので紅茶とサラダが

 寧々不死の前にはカレー味のアイスが

 華山の前にはカレーライスとたらこスパゲッティとピザトーストとドリアとメロンソーダが

 落合の前にはカレー味のアイスが


「……そのアイス、おいし?」


 と梨里が寧々不死と落合に向かって怪訝そうな顔で質問してきた。


「うん、カオス」

「……」


(すごくマズい……寧々不死に釣られて注文しちまったが……すっごくマズい……なんだこれは)


「ウチのお母さんの創作アイス、食べる人あんまりというか、全くいないからさ……お母さん喜んでたけどあんまし無理して食べなくていいからね、身体壊しちゃいけないし」

「大丈夫、カオスだけどこれは良いカオスだから」

「……」


(そ、そうか?)


「そ、そうかだったらいいんだ。でも本当、辛かったら残して良いんだからね?」


 顔を青くしながらカレー味のアイスを食べている横でもぐもぐと美味しそうにカレーライスを頬張っている華山


「相変わらず名手さんのお母様のご飯は美味しいです」

「えへへ、でしょーけちけちおばばだけど料理の腕はピカイチなんだぁ」


 とニコニコしながら梨里はスパゲッティを口にした。


「ふふっ」

「どったの? 小夜」

「口、ついてますよケチャップ」

「えへへ、ナポリタンの定番だよねほっぺたにケチャップは」

「ほら、こっち向いて拭いてあげるから」

「えぇ、いいよ、どうせまたつくし」

「いいから」


「うーん、ピザもおいしいです!」

「カオス……おぉカオス」

「……」

 

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