第33話 なんなんですか?


 落合は食堂で笠松と花梨と卓を囲み食事をとっている

 

「……なんか喋れよ」

「喋るって何を? というか食事中よ静かになさい」

「お、おいしいですね、ご飯」

「うん、そうね」

「だな……」


 落合がなんとか沈黙を破ろうとしたがその試みも無駄になり再び沈黙が流れ時間が止まる


「ウィザード!! ここで会ったが百年目!! 俺と勝負せい!!」


 一人の大魔術師が食堂に突入してきた。


「……二度目だ。こりゃ偶然か? それとも誰かの差し金? ……まぁどちらでもいい、この気まずい空気を一瞬でも忘れさせてくれただけでもありがたい」

「そのニヤけ面も今日までだ!」

「へぇソイツは楽しみだ。失望させてくれるなよ」


「もう! 葉! 聞いてるの!!? 私は貴方の為を思って!」

「はいはい聞いてますよぉ」

「ぐぬぬぬぬぬ……!!!!!」

(肩透かしだった……連中が俺を見つけられたのは最近調子に乗って解放を使いすぎた所為か? 意気の良い魔法使いを今日だけで大分殺しちまった。俺にさえ挑まなきゃもっと良い魔法使いになれてただろうにな)


「おやおやまーた夫婦げんかですかぁ? 見せつけてくれるねぇ……」


 一人の女子高生が落合達のテーブルに近付いて二人を煽る様な発言をしてきた。


「うげっ! 名手なで!?」

「うげっ! とは何事よ! うげっ! とは! 酷いよ! ヨーチン!」

「そのあだ名で呼ぶな! 気色悪い!」

「気色悪い!? わ、わたしの渾身の作品になんてことを……花っち~まこまこ~私は人生で一番の特大ダメージうけて瀕死状態に陥ってしまったよそんなわたしに慰めを~~」

「もうそういうのはいいから、何しに来たの? 私達を揶揄からかうため?」

「ちっがうよ、次回の演習会のメンバーが揃わなくてさ、ヨーチンはチームも組んで無きゃ常時暇人星人でしょ? だからー私達のチームに入ってほしーなぁって」

「ふっざけんな、冗談じゃねぇ、俺を巻き込むな俺を」


 ふぇーーーーんと花梨に泣きつく名手


「ごめんね、私はもうチーム決まってるから……」

「うぅ……まこまこ~」

「落合はまだ初心者だ。演習には出れねぇよ」

「大丈夫! 私と一緒に今日から猛特訓をしよう! だからいいでしょ!? ね! ね!? ね!??」


 という事でなんのこっちゃ分からないまま落合は名手の誘いに乗ることになったのだった。


「ご、ごめんね……梨里リリに強引につれて来られたんでしょ? もしイヤだったら帰ってもいいからね」


 とそんな落合を気遣ってくれているのは名手の親友荒川あらかわ小夜さよ


「強引とは失敬だな! ちゃーんとまこまこの了承も得ましたから!」

「ほんと? でも落合くんって転校して来たばっかだよね? 魔法はつかえるの?」

「えっと……あの……」

「ううん、ぜんぜん! でも大丈夫! そこは私がなんとかするから!」

「な、なんとかするってバカ! ごめんね落合くん! このバカには後でちゃんと言っておくから今日のところは帰っていいよ」

「帰らないでー!!!」


 落合に泣きつく名手


「柊せんせいにも許可とってきたから!!」

「いつの間に!? で、でも……」

「小夜ぉ……」


 うるうると潤ませた瞳で荒川を見つける名手


「うっ……落合くんがいいなら、いいけどさ……」

「やったー! よろしくね! まこまこ!」

「あの……」

「ん? どったの?」

「演習会って……なんなんですか?」

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