第31話 演習

「ごめんね、落合君、今日は私が代わりに落合君の先生をやるね、あのバカは今日は帰って来れないだろうからさ」


 と演習場を燃やしかけた雷迅に代わりメメリアン・カートランドという名の女性が落合の先生になる事となった。


(ちとやり過ぎたな、俺もお調子者の彼女のことを笑えんぐらいお調子者だから彼女の気持ちはよく分かる、クククッ)


「えっと……あのバカは何処まで落合君に教えたのかな?」

「あ、あのその……」

 

 その後は火事になることもなく順調に授業は進んだ。

 

「いくよ! 走って走って! 魔法使いには体力も必要!」

「ひぃーーーー!!!!!」


 と巨大な重機に乗ったメメリアンに追いかけられている落合

 そんな落合を遠巻きで見ているクラスメート


「め、メメリアン先生相変わらずのスパルタ振りね……」

「止めた方がいいんじゃないか?」

「でも落合君を思っての行動だし……」

「あのままじゃ魔法使いになるまえに挽肉になっちゃうんじゃないのぉ?」


 笠松たちは魔法初心者の落合とは別メニューの授業をウケている


「まぁ今日はアレでいいよ、演習、攻撃と防衛二手に分かれてすきにやってくれ」


 と演習場に似つかわしくない家庭的なソファに寝そべっている男が生徒達に言った。


「せ、先生、それってサボれるから私達に演習させてるだけでしょ?」

「いや、まさか、そんなことはない、全くなまったく」

「……」

「まぁいいじゃん、アタシ、好きだし五月蠅いセンコウ共に指図もされないしねぇ」

「ハッハ! センコウとは! 今どきにしては古くさい言葉遣いをするんですね! サスガ! このご時世にスケバンなどと名乗っているだけはある!」

「あぁん!? やんのかお前!!」

「もう! 喧嘩しないでよ二人とも! みんなー! 集まって! 演習のチーム別けをするよ!!」


 数十分後


「マズいよ! 笠松っち! どうしよう!」

「ハッハ! こんなのはどうでしょう!? 全員で白旗を振って降参! なんてのはハハッ」

「……全員こっちに来い、俺に考えがある……」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「うおおおおおお!!!! 笠松ごらぁああああ!! って……」

「ゲッ!? 糸!?」

「マズい!!! 罠だ!!!」

「ぎゃあああああ!!!!」


 笠松の糸同士を絡めて作られた網に閉じ込められる四人の生徒


「助かったぜ脳筋4人組、いつも通り俺の罠に引っかかってくれて、これで人数差はなくなったな」

「ベタベタするぞこの糸!!」

「動けねぇ!!!」

「服弁償しろ!」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「サスガ! 笠松くん! いやー彼には感服させられます。なぜこの様な余興であそこまでホンキになれるのか?」

「おい、不気味ヤロウ、サシでケリ付けようじゃないか」

「ハハッスケバンさん、貴方のしつこさには驚かせられますねぇ、何がそこまで貴方を駆り立てるのか」

「そのむかつくニヤけ面……ぶっ潰してやるよ」

「ハッ! 言葉だけは勇ましい! 言葉だけは!」 


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「あーら貴方こんな所でなーにしてるのぉ?」

「え!? にゃはは見つかってしまいましたかぁ、こんにちわ~」

「……どうせサボっていたのでしょう? まったく、貴方もやれば出来る子なのに」

「君にそこまで言わせるなんて私のぉ才能は怖いですなぁって思う次第なワケですよ」

「まぁ見つかってしまったのだから一先ず私にやられて置きなさい、貴方」

「えぇ!? 戦いますぅ? この流れで? ここはそのふとーい心でこの哀れな子羊ちゃんを見逃してはくれませんか?」

「広いよ、心が広いの! 太くないわ!」

「そこツッコミます? 最近太いって言葉に敏感ですよねぇ? まさか……そのお腹……」

「せや!!」

「ちょ! いきなり襲ってこないでくださいよ!!?」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「ラスト一周! 頑張っていこ!!」

「ひぃーーーー!!!!!!!!!!!!!!!」


 ――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


「落合くん、はいお水」


 と花梨が汗だくの落合に水を差し出す。

 それを受け取って一気に飲み干そうとする落合


「だ、ダメだよ! ゆっくりゆっくりだよ」

「は、はいぃ……すみません……」

「貴方も悲惨だったわねぇ? 落合さん。カートランド先生に付き合わされる結果になるなんて」


 と言いながら小さな扇で涼をとっている生徒が近付いて来た。


「御影(みかげ)さん、先生の影口言わないの!」

「あぁらごめんなさいクラス委員長さん、つい口が滑ってしまったわ、と口が滑ったついでに落合さんに自己紹介をして置きましょうか、私は御影 春(はる)よろしくお願いいたしますわ」

「よろしくお願いしますぅ……」

「元気のないお返事、シャキっとなさい!」

「ひぃ……」

「うひゃこわー、さっすが我がクラスが誇る女王様!」

「誰が女王様よ、女帝と呼びなさい」

「へへぇ……」

「七歩(しちぶ)さん、演習サボっていたらしいわね」


 と花梨が冷たい視線を七歩に投げつける


「ニャハッ!? 御影っち! あのことは私と御影っちだけの秘密だって言いましたよね!?」

「あら、そうだったかしら? 忘れたわ」

「酷い!?」

「後でお話しましょうね、七尾さん?」

「……」

「落合さん、彼女の名前は七尾 雫(しずく)さん見ての通りだらしなく自堕落的な女性だけれど仲良くしてあげてね、ほどほどに」


「ハハッ! 相変わらず勇ましいのは口だけでしたねぇ?」

「……うるせぇ!! 何時か! 何時かアンタはぶったおす!!」

「楽しみにしてますよ! それが何時になるか分かりませんが! 私が生きているウチにお願いしまーす!」

「こ、この野郎……!!」


「元気いいわねぇあの二人」

「仲いいよねぇ、毎日けんかしてるし」

「来栖さんが一方的に絡んでいってるだけな気もしますけどねぇ」

「落合さん、あの二人は女性の方が来栖アゲハさん男性の方がベルフェゴールくん、なんか有名な悪魔らしいよ」

「なんでそんな悪魔が学校にと思ったでしょ? 私達にも分からないから聞かないで頂戴ね」


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る