第30話 代償


 悲劇の夜は過ぎ去り何事もなかったかのように次の朝がやってきた。

 落合は寮を出て学び舎に向かい己の机に着席し次の授業の予定を確認しようとしたそのところ


「落合君、今日は魔法実技の授業あるけど大丈夫そう?」 


 大音寺花梨が落合の席までやって来てそう尋ねて来たので落合は勿論


「ふぇ……じ、実技ですか?」


 自信なさげに小さな声で言葉を返した。


「魔法を使うのにまだ不安があると思うけど……先生たちもいるから安心して私達もバックアップするしさ」

「あ、ありがとうございます……が、がんばります……」


 落合達クラスメートは演習場に向かった。


「私は雷迅蘭々(らいじんらら)というのこれからは私が貴方に魔法の扱い方をマンツーマンで教えるわ。よろしくね!」

「よろしくおねがいしますぅ……」

「そんな緊張しないでも大丈夫! なんせこの蘭々お姉さんが先生なんだからね! 明日には立派な魔法使いになれてること間違いなし! だよ!! 真くんの魔法の系統は火でいいんだよね?」

「はいぃ……」

「私も真くんと同じように火の系統を扱えるんだ! それとそれとね、雷の系統も使えるの! なんと私、珍しい二つの属性を持つ魔法使いなんだよ! すごいでしょ! ねぇねぇすごいよね!?」

「……先生、生徒相手に自慢話をするのはやめてくださいよ」


 と自慢話をグイグイとしてくる雷迅に対してツッコミをいれる笠松


「うぅ……でもすごいでしょ?」

「すごいのは分かりましたから落合の教育をしっかりやってあげてくださいね」

「わかってるよ! もぉ笠松くんは心配性なんだから……」

「じゃあ、また後でな」


 と言って笠松は落合から離れて行く


「学校へ転校して来て早々良い友達ができたようで先生嬉しいよ! じゃあ笠松くんにまた怒られる前に授業始めようか?」 


 雷迅は魔法を扱うのに必要な最低限の知識を教え、さっそく火の魔法をつかってみようという話になった。


「ふふん、どうですか私の火は灯るいでしょ!?」


 と自分が出した火の自慢を始める雷迅


「お、おぉ!」


 と目をキラキラとさせる落合を見て雷迅は満足げに微笑む


「こんなことも出来るんだよ!」


 と火を飛ばし予め用意してあった焚き火に火を灯す。


「おぉ!!」

「更にこんなことも!」

「おぉ!!!」

「更に更にこんなことも!!」

「おぉ!!!!」

「更に更に更に――」

「おぉ――」


「先生!! 燃えてます!!」

「へ?」

「先生の火が! 校舎に燃え移ってます!!!」

「きゃああああああ!!?」

「しょ、消火器!!」

「水! 水使えるやついねぇか!?」

「このお調子者が!!!!」

「ご、ごめんなさいー!!!」


 雷迅はそう泣きながら必死に消火活動に勤しむのであった。

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