第29話 ルール
「師よ……貴方はまだそこに居るのですか? すみません、もう目も見えないので」
真っ黒な美しい金色の柄の着物を着た女性が落合(ウィザード)の前で倒れている
「クククッ黒尾、俺を相手にするにはまだ早かったな」
落合は倒れている黒尾の隣に座り込む
「あの子は?」
「姫のことか? そこで気絶してる安心しな命には別状ねぇからよ」
「そうか……」
黒尾は真っ黒な空を見上げそう呟くように言った。
「気がかりか?」
「……」
「あの娘を残して逝くことが」
「まさか、私はあの子を捨てた女、そんな事を口にする資格はない」
「資格ねぇ相変わらず律儀な性格してやがんな」
「師、私は最後まで酷い母親だったとそう姫には伝えてください、私は同情の余地もないただの悪女だったのだと」
「クククッ冗談、娘を愛してなかったという嘘を貫きたきゃ俺に勝つべきだったな、負けたヤツが生意気言ってんじゃねぇよ」
それを聞いた黒尾は頬笑んだ。
「あぁ、そうですね、その通りです。師、やっぱり貴方は強いですね、私の憧れの人は本当に強い人だった。もし姫が貴方の前に立ち塞がるような事があったとしても迷いなく打ちのめしてあげてください、同情など無用ですから、私の自慢の娘に」
「はぁ? お前に言われるまでもねぇよ、もしそんな日が来たら二度と立ち上がれなくなるまでぶっ潰してやるよ」
「……それを聞いて安心しました。これで、私は――」
落合の目の前には気絶した姫と水野が横たわっている
「勝負ついたね、君の勝ちだ。真」
ルシファーがそう口にすると光は自分の為に傷つき気絶している二人に駆け寄り泣きじゃくる
「二人とも私のために……」
「光ちゃん……」
落合は片手にストップウォッチが握られておりそこにはジャスト50秒と表示されていた。
「クククッなかなかやるようになったじゃないか」
「……彼女達が負けた。光ちゃんは私が預かろう、それでいいね? 真」
「なんの為の確認だ? 好きにすりゃいいだろ」
「君ならどうにでも出来る事態なんだろう? それでも君はこのまま彼女を家族と引き離すという選択をとるのかい?」
「あぁ、それでいい、俺はこの件でお前らの世界のルールをめちゃくちゃにする気はねぇ」
「めちゃくちゃか……そうか君は私達の世界のルールに敬意を払ってくれているのか、分かったよこれ以上は何も言わない、さぁ行こうか光ちゃん」
「あ、あの落合……さん?」
光が立ち上がり落合を見つめる
「なんだ? 殴りたいか?」
光は首を振る
「……私、姫のお荷物になりたくないのだから……ここに残るよ、姫のお師匠さまなんだよね? だったら姫の事を……お願いします」
そう言い残し光はお辞儀をしルシファーに連れられていった。
その後、落合は姫を家までつれていく
「二度と顔を見せるな、もうお前の顔など見たくない」
「そうかい、光のこと家族にはお前が伝えるか?」
「お前には関係のない話だ」
姫はそう叫ぶと乱暴に玄関の扉を閉める
落合の隣に居た水野はなにも言葉を発さない
店に戻ると心配そうに子供達が落合達を出迎えた。
「悪いなパーティーの途中で抜け出して」
「水野さん顔色悪いけどどうかしたんですか?」
「……いや」
水野はそのまま店の奥へと消えていった。
「色々あってな、さてまだ俺の分の料理は残ってるか?」
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