第27話 趣味嗜好
「つまらん」
そう一言、小さな箱部屋で呟いたのは蔵人(くらうど)土紋(どもん)という名の男
目の前には落合真とその他の仲間達
「え?」
「俺が築き上げた完璧な計画が大魔術師の登場で全てご破算などという結末はつまらん、そう言ったのだ。何か言ったらどうなんだ? そこの大魔術師」
「そう言われてもな、光の身体に付着していた魔力を辿ったらお前に辿り着いちまったんだ。恨むならその半人前な腕を恨みな」
「挨拶はその辺で終わりにして貰っていいかい? 話しを進めよう、君が西宮光を陽の世界へと転移させたってことで間違いないね?」
「間違いない」
「そう、じゃあ早速で悪いんだけどさ君を逮捕するよ蔵人くん」
「その前に聞いておこか? なぜこのような事を?」
「逆になぜこうしない? 彼女の居場所はこちらの世界ではなくあちらの世界にあるというのに……」
「そうやってこっちの世界の物や者をあっちの世界に好き勝手に持ち出した結果地球が吹き飛びかけた事があってな、三回ほど」
「我々と当時の陽の世界の住民達はその事実を重く受け止め、私達は金輪際他の世界に干渉することをやめたってワケ」
「私も西宮光と同じ願いを受け誕生した生き物だ。生をウケることも出来ずなんの選択肢も与えられずに理不尽に死ぬしかなかった水子、その幻想が私達だ」
「だからと言って君たちに同情をして好きにアチラの世界に行ってよいという事にしてあげる事は出来ないんだよ、ザンネンだけどね」
蔵人は光を見る
「ではあの子をこの世界に連れ帰るか? そんな事をしたら彼女の両親がどうなるか……分かっているだろう?」
「クククッ良くて精神病院、最悪ジサツって所か?」
「秩序を護るという大義のタメお前達は家族を一つ粉々に粉砕しようというのか? お前らはそれを望んでいるのか?」
「そんなモノ望んじゃいないさ私も光ちゃんの家族には幸せになって欲しいと思っている、しかし西宮光という子供が死んだという事実は確かにあったんだ。それを秩序を脅かしてまでねじ曲げるのは頂けない、蔵人くん……秩序とはこういうモノさ、冷たく痛い現実を直視しそれを背負って初めて実現できるのが秩序というモノなんだ。都合のよい夢(モノ)ばかりを見てそれだけを抱いていては秩序はたちまち消えてなくなってしまう」
「アンタには、ロマンがないな」
「だね」
とルシファーは寂しげに蔵人に微笑みかけた。
「お前の力であの家族を救ってみせろよ、”大”魔術師なんだろうが、お前は……!」
「クククッやめておく、勘違いするな俺は正義のヒーローじゃねぇんだよ」
「……ふ、出来ないだけだろう? なんせ弟子の暴走も止められなかった男だものな、お前が介入する頃にはもう弟子を殺すしかなくなっていた。そうだったろ?」
「詳しいな、誰からその情報を聞いた?」
「俺の記憶でも読めばいい、出来るんだろ?」
「出来るが人の記憶を見るのは趣味じゃないのさ」
「趣味じゃないか……その言葉の所為で一体どれだけの人間が悲しみ息絶える事になるのか、お前には分からないのか?」
落合に向かって諦めと軽蔑の意を込めそう言い放ち蔵人は消えて行く
「光はワシの家族じゃ! ヌシ等の好きにはさせんぞ!」
姫はモチロン、落合たちの判断には大反対
「じゃあ、どうする? 姫、家族を護るタメにお前は一体何をどうするんだ?」
落合が姫の前に立ちはだかる
「お前はこうなる事が分かった上で光をここへ連れてきた……そうだな?」
「あぁ」
「……」
姫が落合に向かって手を翳す。その隣には水野
この二人が落合の前に立ちふさがった。
「そりゃそうか、そりゃそうだな、クククッ」
「……簡単な話だったな、自分の家族を護れるのは自分しかいない、誰も信用なんてするべきでなかった。特にヌシはな……」
「西宮光は生まれた所が此処でも育ったのはあちらの世界、彼女から全てを奪う権利はお前にも無い筈だ」
「別に権利なんざ主張する気はない、そうするべきだと思うからそうするそれだけだ。この世界には光のような生まれの生き物がごまんと居る、この子だけ特別扱いとはいかんだろ」
落合の言葉は非情
その非情な言葉を素直に受け止められるわけがなかった。
だからこそ水野と姫の二人は落合の前に立ちふさがるのだ。勝てないと分かっていても
「俺をねじ伏せるか殺すしかない訳だ。お前らの道理や想いを貫くには、クククッ何時でも何処からでも構わねぇよ、来な」
「解放 十十!」
「解放(リベレイト) サジタリウス」
「解――、なんてな、クククッ」
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