第25話 理想の子


「ルシファーさんって本当はとってもいい人なんですね! すっごく面白いし!」

「ハハハッそう言って貰えると嬉しいな」


 ルシファーは光を喜ばせるために数々の手品を披露しそれが功をなし無事彼女の心を掴むことに成功した。


「少し待っていてくれ、私は落合とお話をしないといけないからね、また後で手品を見せよう」

「はい!」


 と無邪気に喜ぶ光を遠巻きから寂しそうな瞳で見つめる姫


「……光を連れてきたのは故意だろう?」


 と姫が落合に問う


「クククッ賢いじゃないか正解」

「ヌシのしょうもない持論のため、光を傷つけるつもりか」

「それも正解」

「……ヌシなど――」


 帰って来なければよかったのに……

 という彼女の言葉を聞き落合はニッと笑う


「言えてるな」

「いやー悪いね待たせた。それで、落合一体どんな用があってここに来たんだい? 挨拶をする為だけに顔を出すような人じゃないでしょ?」

「その前に此処を一回ぶらりと回りたい、随分と変わったんだろ?」

「あぁいいよ、この私が直々に案内して差し上げよう」


 ルシファーは落合達を中央ステーションと呼ばれている場所まで案内した。


「……クククッありとあらゆる国や時代の建築物が無造作に積み重ねられて出来た歪なオブジェ、これがお前らの住処か?」

「見てくれはあんまよくないけど、住み心地は良いよ、なんせ家賃もタダだし」


 中央ステーションとはこの世界の住民たちが身を寄せ合い住んでいる、集合住宅街

 中央ステーションから一人の少女がるんるんとスキップをしながら出てきた。


「あ!? あれは! 魔法少女アリサちゃん!?」


 光は歓喜の声をあげた。

 確かにその少女は日曜日の朝によくみたアニメの登場人物、魔法少女アリサに違いなかった。


「魔法少女……アニメかなんかのキャラか?」

「は、はい、でもどうして……こ、コスプレ?」

「クククッ言っただろ? この世界は人々の夢から生まれた生物たちが生息する世界だってな、あの子もファンの君や他のファンたちの想いによって生まれた存在だ」

「私の様な古くから恐れられている神話の存在もいれば君たちにとって馴染み深いアニメやゲームの登場人物もここにはいるよ」

「す、すごいすごい!」

 

 とぴょんぴょんと跳ねる光


「そしてお前もその中の一人だ」


 という落合の一言で光の足は止まる


「ど、どういう事ですか?」

「そのままの意味さ、西宮光、君はこの翳の世界の出身なんだよ」

「え……?」


 落合の冗談だと思った。

 しかし姫の尋常ではない顔を見てその考えは改められる


「君が一体どんな願いや希望を元にして生まれた存在かは分からない、しかし間違いないんだ君はこの世界の生き物なのだ」


 ルシファーは光の表情を伺いながらそう発言する


「……姫?」


 光のその声を聞き姫は怯えた子供のようにビクッと跳ねる


「もう終わりにしたらどうだ? お前が家にずっと引きこもってたのもこの子が理由なんじゃないのか?」

「違う!!」


 落合の言葉を全てなぎ払う勢いで姫はその言葉を否定した。  

 しかしその姫の異常な反応を見て光の半信半疑だった心は確信へと転じてしまった。


「……姫、そうなの?」


 姫は違うと嘘を言ったがそれで納得されるワケもなく

 三回否定した後にとうとう姫も諦め語り始めた。

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