第20話 魔法の取り扱い



「笠松、打ち込みが甘い」

「っ!」


 笠松と柊がカタナ同士で鍔迫り合いを演じている

 しかしパワーバランスが崩れ柊が笠松を吹き飛ばした。


「くっ……」


 吹き飛ばされ地面に尻餅をつく笠松、表情には焦り


「神託の力を失い、以前の様に戻ろうと焦っているといった所か?」

「……」


 図星

 なので笠松は柊から目を逸らす。


「諦めろ、以前のようには戻れない」

「分かってますよ、でも俺は強くならなきゃいけない、それが昨日ハッキリと分かった」


(俺は奴らと鉢合わせた時に何も出来なかった。俺はただの足手纏いだった……だから)


 笠松はカタナを杖代わりにしてヨロヨロと立ち上がる

 そんな笠松を見て柊がため息を吐いてカタナを納めた。


「元に戻ることは出来ない、だが強くなれない訳ではない、新しいお前の型を見つければいいんだ」

「新しい型……?」

「以前の未来視の魔眼に頼りきりの戦法はもうできん、だから今からお前には今から通常の戦闘訓練を受けてもらう、私や烏間達がウケてきたような訓練をな、神託の力を我が物にする為の訓練ばかりしていてお前はあまり通常の戦闘訓練は受けてこなかっただろう?」

「……分かりました」

「先ず戦闘中や警戒態勢時には常に目に魔力は集中させておき敵の魔力を見逃さぬ事を心掛けること、これが戦いの基本だ」

「魔力を目に集中させるのは魔眼があった頃もやってましたよ」

「そうか、では問題ないな、では次だ。敵が目の前に現れた時用心しなくてはならない仕草はなんだ?」

「手をこちらへ翳して来た時」

「そうだ。それは魔法をこちらへ放ってくる合図でもあるからな、あとは絶対に手に触れない事、触れて発動する魔法は基本即死級の魔法だ。触れたら基本死ぬと思え」


 柊が片手を天井に向けて翳す。

 白い塊が浮かび上がった。


「これが魔法の基礎ともいえる技術、己の魔力を出力し保持するこれから教える技術は全てこの技の応用であり全ての技の源であることから全(ぜん)と呼ばれている」

「それも知ってる」

「これはあくまでも復習、小等部の頃から教わっている事とはいえ復習をすれば何かしらの気付きがあるかもしれんからな、では続けるぞ、この全を対象に向けて飛ばすのを”矢”と呼ぶ」


 柊が飛ばした矢が空き缶に穴を空ける

 その頃一方落合は人の胸に風穴を開けていた。


「どうだ? 矢は基礎的な魔法だが光速より素早く次元の壁をも貫通する程の鋭さを兼ね合わせていたら十分脅威だろ? これで一つ勉強になったな、まぁ死んじまってるから次に活かす事は出来んだろうがね、これで23人目、先はまだまだ長いぞ!」


 その光景を目の当たりにして絶句している奏とカルフォン

 話は柊に戻る


「次は強、魔力を己の身体に纏い自身の運動性能を強化する技、これで刀を振る速度を上げたり人間の身体ではあり得ない程の跳躍力を出したり素早く動く事が可能になる」


 次は落合


「強化しすぎて手で押しただけで上半身吹き飛ばしちまった。いやー悪い悪い、これで260」


 次は柊


「己の魔力を床や物に付着させ距離が放れた状態で維持をする設(せつ)、それに全身から魔力を放出し辺りを己の魔力で覆う開、魔力の形を変形させる造(ぞう)これらは己の身体に流れている基礎的な魔法だけでは意味を成さない」


 柊は全で再び魔力の玉を掌に生みだした。

 それがみるみるうちに黒く染まる


「今、真っ白だった魔力に私の術式を刻み込んだ。これを術と呼ぶ、この術と併用することにより先程の設、開、造という技は意味を成す。私の術式は影、主に設を使い相手が私が設置した魔力を踏んだ瞬間拘束したりする事が可能だ。この技の名は影縄(かげなわ)という、では次に詠唱について教えよう、私が先程言った影縄、格好付けで名付けた訳ではなく、この名を口にする事で詠唱と同じ役割を果たし技の効果が底上げされるという立派な技なのだ。なので魔法使いは基本的に自分の技に名があり使う前にその名を口にする、発音する時は早口になったり噛んだりしないこと、しっかりした発音で詠唱しないと効果がなくなるから注意しろ」


 次に奏


「落合さんは一体どんな術式を持って居るんですか? さっきから色んな魔法を使ってますけど術式というのは一人の人間に一つと学校では習いました」

「あぁ、確かに人間は生まれた時に一つだけ自動的に術式が付与される仕組みになっていて生涯その術式しか使えないことになっているがしかし俺はその術式を自分で自由自在に生みだし行使する事が出来るのだよ、ははは、凄いだろ?」

「そ、そんなことができるんですか? ど、どうやって……」

「教えて欲しい? 無料って訳にはいかないな一億万円払ってくれたら教えてあげない事もないぜ?」

「なにを言ってるんだカル……大人げないカル……」

「うるさいぞ妖精さん、その耳の穴に綿飴でもつっこんでベトベトにしてやろうか?」

「地味なイタズラはやめろカル!」


 次に笠松


「まった。もう十分だ。そんな事よりも俺が知りたいのは魔術の天辺だ」

「……解放のことを言っているのか? お前にはまだ無理だ。お前はまだ魔力量も足りなければ魔力の制御もおぼつかないのだからな……解放は詠唱の一つで先程の技名の時とは桁違いの術の強化が出来るがその分魔力消費量も跳ね上がる、基本一回使ってしまったら魔力は枯渇してしまう諸刃の奥義、それが――」


 解放


「俺が造り広めた技だ。すごいだろ? なぁ? それ相応の魔力の練度と必要魔力量に到達しなければ使えない仕様にしたのも俺、扱い方を間違えると自分が死にかねないもんでねこれは」

「こ、ころせ、はやくおれを……」

「なんだよつれないな、お前で最後なんだからもう少し俺の自慢話に付き合ってくれてもいいだろ? 俺は基本的に詠唱による術の強化はしないが俺の技で一つだけ名があるモノがある、それがこの解放」


 目の前の男は落合の解放をくらって身動きがとれないでいる


「俺がこの詠唱で何を強化したかったのかというと技の発動速度でね、この技、詠唱なしだと発動に1秒かかる、が詠唱のおかげで0,001秒までタイムを落とす事が出来たというワケよ、だがおかしいよな? 詠唱最大のデメリット、口から言葉を発して言葉をちゃんと言い終えてからでないと効果が発動しないというデメリットがあるから普通だったら3秒ほどは掛かってしまう筈……だったのだがしかし俺はこれを言葉を細工する事でクリアした」

「ころしてくれ……」

「効果の先取り、俺の詠唱は言葉より先に効果が発動する、詠唱を唱え発動したという結果を未来から引っ張って来てるなので詠唱を唱えつつ0,001秒というタイムを実現する事が可能となったというワケだよ」

「……」

「な? 凄いだろ?」

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