第16話 魔法少女株式会社

「ワッハッハッ! お前ら全員の負の欠片を奪い取ってやるのだ!」


 事件はとある街のとある繁華街で起きた。突然巨大な黒い豚のような姿をした怪物が現れ辺りにいた人間達を食べようとしている 

 

「待ちなさい!!」

「き、貴様! なにものだ!?」


 大きな杖を持った綺麗なドレスを着た女性がそんな怪物の前に立ち塞がる


「休日の昼、家族サービスに明け暮れ平日以上に疲弊しているお父さん達を襲う不届き者め! このフィニーキャラッタが成敗してやるんだから! 覚悟――」


 することね! と言う前に怪物は彼女の前から姿を消した。

 その変わりに現れたのは斑目の男


「よぉ! 昨日以来だな」

「へっ……? あ、貴方は!?」

「落合真だ。よろしくなフィニーキャラッタちゃん」

「あ、あの怪物は……」

「普通の豚に変えた」


 落合の背後から一匹の豚が出てくる


「昨日会ってからずっと気になっててな、アンタのその力、何処の誰から授かったんだ?」

「え? えっと……」


 ここは繁華街、辺りには大量の人が居るのでそんな事は話せないとフィニーキャラッタは思ったがそれを察してか落合は言った。


「コイツらは俺達のことを認識出来てないから安心しろ……と言っても最初はなかなか信用できないわな」


 落合は転移魔法で人が一人もいないマリアナ海溝のチャレンジャー海淵と呼ばれる深海まで転移した。


「!?!?」


 混乱するフィニーキャラッタ

 そんな彼女に落合は自慢話でもするかの様に何が起こりここが何処であるかを伝えた。


「深海だが結界に護られてるから溺れる心配も水圧に押しつぶされる心配も酸欠になる心配もしなくていい、灯りもあるぞ」


 落合たちの頭上には光の塊が浮いている


「ここなら安心して話が出来るだろ?」

「う、うん……」


 フィニーキャラッタは変身を解く、すると身体は一気に縮み高校生ぐらいの背丈から小学生程度の背丈に変わった。


「変身する度に身体が成長するヤツ居るのか? 無駄なその手順、身体が成長したからって魔力の強化がされる訳でもないのに」

「わたしに聞かれても……」

「見せかけだけの魔法か、ふーむ……益々気になるなその魔法が何処からやって来て何故お前に託されたのか……」


 落合はジッと彼女を見詰める


「都奏(みやこかなで)です」

「ん? どういう事だ?」

「わ、私の名前です。自己紹介、まだだったなって思って……」


 あぁ、そういうこと、と落合は納得し


「落合真だ。よろしくな奏」

「は、はい!」


 落合と奏は握手をする


「自己紹介のすぐ後で悪いが早速教えて貰えないか? 誰からその魔法を託されたのか」



「き、きみは誰っカル!!」

「落合真、それにこっちは……紹介は要らないな? 妖精さんよ」


 落合たちの目の前には小さな犬のような生き物がいる


「と、とつぜん現れてなにを言って……」

「へぇ人の希望の玉とやらを栄養として成長する生き物か、色んな世界を渡り歩いて来たがアンタみたいな不思議生物に会ったのは初めてだ。見た目も可愛いな、それに変な語尾、まるで人に可愛いと思わせる為に生まれたかの様な生き物だな」


 落合は斑色の瞳で妖精と呼んだソレを見詰める


「……ッチ、事態は思ってたより深刻かもな」

「ねぇ、奏、この人はさっきから何を言ってるんだっカル?」

「わからないよ……」


 一人ブツブツと呟いている落合を見て怯える二人


「というかなんで希望の玉を知ってるんだっカル!? キミは何者カル!!」

「落合真、だ。なんてそういう事を聞きたい訳じゃないんだろ? 俺は最強の魔術師だ。改めてになるがよろしく頼むぜ妖精さん」

「僕にはカルフォンというちゃんとした名前があるっカルよ!」

「自己紹介のすぐ後になって悪いが早速、お前達に質問してもいいか? なぜお前は異世界からこの世界にやって来て何故この都奏に魔力を与えたんだ?」

「なんでキミにそんなことを――」

「お前の世界に魔王が現れ、お前の世界は絶体絶命の大ピンチ、しかしお前の世界には魔王に抵抗できるモノは存在しなかった。しかしそんな時にとある伝承を思い出す。異世界よりいでし伝説の魔法使いの伝承を……異世界から伝説の魔法使いの”適性”を持つ少女を見つけ出し、その少女に魔王を討ち滅ぼさせる事がお前の任務。違うか」


 カルフォンは落合のその言葉を聞き一語一句、間違いのないその語りに驚愕し絶句してしまう


「当たりか、なるほど、最悪のパターンを引いちまったみたいだな」

「あの!」


 奏が勇気を振り絞って落合に声をかける


「私と一緒に魔王を倒してくれませんか! 私一人じゃとても敵わないと思うけど貴方が居れば……」

「ザンネンながらもうそういう次元の問題じゃ済みそうにない」

「え?」

「なぁ妖精さん、もしお前とお前の種族にその世界それにお前の世界を脅かす魔王すらも一人の少女の為に造られたモノだと言われたら信用するか?」

「な、なにを――」

「実はこの世にはとんでもない変態共が居てな、魔法少女愛好家とでも呼ぶべきか……何も知らない少女に魔力を与えて敵と戦わせ戦い終える度に一つありがたい教訓を与える……その模様を映像に収めてそういった映像が大好物な変態共に売りつける変態がいるんだ」

「ど、どういうこと?」

「奏とカルフォン、真実を知り見れば間違いなく大きな傷を負うだろう、だがそれを承知で俺はお前達に事実を突き出す事にするよ、行くぞ真実を探求する旅に」


 落合が指を鳴らすと奏とカルフォンは突然、別の場所へと転移されてしまった。

 転移先は真っ白な空間に一つ大きな工場のような見た目をした建物がポツンと佇む不思議な場所だった。


「ここは……?」

「宇宙の外、世界と世界の狭間さ」

「???」

「クククッまぁ深く理解する必要はない」


 一人の男性が工場のような建物から出てくる


「よぉ、久しぶりだな死に損ない」

「ウィザード……よくも私の”作品”を台無しにしてくれたな」

「今は落合真って名でね、そう呼んでくれると助かるよ、変態野郎」


 落合は斑色の瞳で変態野郎を捉え、口元を歪めた。


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