第12話 危険性


 十十が下敷きになってくれたおかげで落合たちは全員無傷に地面に着陸することができた。

 しかし災難は続く

 赤色の無数の触手たちが落合たちを襲って来たのだ。


(この数! この子たちを護りながら捌ききれるか!? いややるしかない、やるしかないんだ)


 と姫は自分を鼓舞し正体不明の触手たちから少年少女、落合を護りながら撃退してゆく


(もって1分といった所か……そろそろ限界だな、可愛い弟子にちったぁ手を貸してやるか)


 と落合が辺りの触手を一掃しようとした瞬間、落合の隣で凄まじい光が発生したので落合は一先ず触手一掃大作戦を中止する

 隣に居た少女の一人の身体からその光は出ていた。


(……この世界の魔力じゃない別世界の魔力、そんな力がなぜこの子に? この子は異世界人なのか? それか異世界人から力を授かったのか?)


 光が消えるとそこには先程の少女の姿はなく一人の美しいドレスを着た成人女性がいた。


(身体は大きくなってるが間違いなく先程の子だ。魔法で強制的に成長させたのか自分の身体を、それにそのドレスと杖……強力な魔力が込められているな、この子の魔法とは思えない恐らく異世界人から力を貰ったな? チッ子供を巻き込みやがって……)


「私も戦います!」


 ドレスを着た女性が姫にそう提案する


「! ぬ、ヌシのその姿は一体……」

「話は後でします! 今はコイツらを倒す事に専念しましょう!」

「俺達も戦うぞ!」


 と剣を持った少年がそう言って姫の隣に立つ


(名前は知らんが剣の少年に青目を持って居る明宮の少女、突然身体が魔法で成長した少女に気弱そうな少女の四人に加えて姫の五人でヤツに立ち向かおうとしてるが5分だな、戦えて5分、姫以外の四人は戦闘経験に乏しいことはその魔力の扱い方を見たら分かる、身体中の魔力の移動がぎこちないし遅い上に効率も悪い、そのまま戦えばその小さな身体に秘められた少量の魔力はすぐ尽きる)


 落合は小さな勇者たちの後ろでジッと彼等を見詰める


(ふーん、少し観察させて貰おうか、君たちの実力を)


 落合は加勢するのをやめ後ろで観察することに決めた。

 触手が一斉に姫たちに向かって襲いかかる

 応戦する五人

 落合はというと後ろでひぃ……! と情けない声を上げながらその場でうずくまっていた。

 そして4分42秒ごに気弱そうな少女の魔力が切れ応戦する力を失ってしまった。

 次に明宮の少女

 次は剣の少年

 次は成人女性に姿を変えた少女


(一人戦闘出来なくなればソイツを守るため、他のメンバーは消費魔力を増やさなければならなくなるし意識をしなければならない事が増え神経も磨り減り方も早まる、戦闘不能になった者が増えればモチロンその消費と負担も増す。クククッ苦しいだろ? 姫)


 一人健気に戦っている姫を見て落合はほくそ笑む


(なかなかやるね見違えたよ、未熟だったただの妖狐が……クククッ)


「先生(せんせい)! どうですか!? わっちの魔法は!」

「そうだな威力は凄まじいが――」


 砕かれた岩を指差すウィザード


「それだけだ。魔力のコントロールはめちゃくちゃだし魔力効率も悪い、それよりなにより魔法発動までの時間が掛かりすぎ、15秒も呑気に詠唱してたら確実にお亡くなりになるぞ」

「わっちの魔法……」


 涙目になって俯く姫


「まぁそう落ち込むな最初は全員そんなもんだ」

「うん……」


 涙を振り払う姫


「先生、わっち強くなりたい! お母様に負けないぐらい強く! だからお母様と同じように稽古をつけてほしいのです! です!」

「はっソイツは御免だ。俺がお前に教えるのはその魔力の制御の仕方だけだ。それ以外の事は教える気はねぇよ」

「な、なぜですか!?」

「お前の母親がどうなったのか忘れたのか?」

「……」

「俺は確かにアイツに稽古をつけただが結果があれだ。膨大過ぎる力に溺れ最後は暴走……結局俺がトドメを刺す羽目になった。俺も懲りたよ今回の件でまさか弟子9人を殺すことになるとはな」

「わっちは……あぁはなりません」

「クククッどうかな? アイツも最初からあぁなりたくてなったワケじゃない、お前はアイツと似て責任感が強いアイツは自分の力で同胞の妖怪達を護るという気持ちと責任感が強すぎてドンドンと狂っていったんだぜ? お前は力に溺れる資質は十二分にある、そこに関しては俺が保証してやるよ、俺が教えた以上のことを知りたかったら自分で探しな」

「……」


 ウィザードは姫の肩をポンポンと叩く


「ハハハッまぁそんな顔をするな最低限の面倒はみてやるからよ、それよりどうしてお前は力を欲するんだ? お前の母親が造った国を護るためか?」


 首を振る姫


「あの国にはわっちより相応しい人が居ますから……わっちはこの世界で困ってる人達を誰でも良いから! 一人でも多く救いたい! だから力がほしいのです!」

「クククッやっぱお前、力に溺れる資質あるよ、デカすぎる夢とその責任感」

「うっ……」

「だが嫌いじゃない」

「え?」

「だからこそ力が欲しいならお前の手で掴み取ってみせろ、俺という近道は使わずにな、お前もアイツらを見て居たなら分かる筈だ近道を使う危険性が」

「……はい、先生が言うなら、わっち自分で強くなります! この世界の皆を護れるように!」


 昔の記憶

 そんな彼女が今、戦っている皆を護るために


(強くなったよ、お前は)


 しかしそんな姫にも限界が近付いてきてる

 触手が少年に向かって飛んできたそれを庇うため姫が少年の盾になろうとする、モチロン捨て身で

 向かってくる触手がその場で消滅する

 消滅させた男の目は斑色


「だが俺ほどじゃないけどな!」

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