第11話 地盤沈下
妖狐 姫の最大の魔法といえる十十(トト)
効果は鵺(ぬえ)と呼ばれる妖怪を召喚する魔法である、姫はこの妖怪に十十という名を付け可愛がっている
召喚された十十は敵に向かい大きな口を開きながら突進してゆく
しかしその敵も自身の身体を電気に変化させ高速でその突進を躱し、姫に向かって逆に攻撃を仕掛けようとするが
何かに足を掴まれ攻撃は中断、何が足を掴んでいるか視線を落とすと女がそこにはいた。
「エリ……?」
男にはその女に見覚えがあった。
(いや、惑わされるな……これがあの女のペットの能力……見た者によりその姿形を変え相手を惑わせる変幻自在の力、それがこの鵺最大の能力。私の嘗ての嫁に扮し私の気を散らそうなど小賢しい手を使う)
男は電気になる
男の足を掴んでいた十十は感電するが大したダメージは受けていない
が男の足は十十の手からスルリと抜け無事十十からの脱出を果たすことに成功した男は再び姫の首を狙おうとする
「花舞演舞(はなまいえんぶ)」
首を斬ろうとした瞬間、姫がそう呟く
すると大量の色とりどりの花びらが姫の背後から突然現れ男に向かって襲いかかる
「!!」
男の身体は大量の花びらによって吹き飛ばされアスファルトの地面に叩き付けられる
この時の衝撃により内臓と脳、骨に大きなダメージをウケ、戦闘不能
身体を電気に変化する魔法も解除された。
「あの鵺は……”ブラフ”だったか……私をお前に近付けるための……」
遠距離戦に持ち込まれたらどう転ぶか分からなかったが近距離戦であれば確実に勝てるという自信があった姫は鵺を使って男の行動を自分に近付ける様に誘導したのだ。
鵺の力により近しい者の姿を目にした事で男の判断力も低下し簡単に姫の策に嵌まってしまった。
「十十、その男を呑み込め」
十十は姫の命令通り、男を丸呑みする
「一人確保、じゃな」
姫は落合たちの元へひょこひょこと歩いて来た。
「無事か?」
「は、はい! あの……ありがとう御座いました!」
と一人の少女いうとそれに釣られ他の子供たちや落合も礼を述べ深々と頭を下げた。
「礼はいい、それより汝(うぬ)等はどうしてここへ? 立ち入り禁止になってる筈だが」
「私達は、友達を追ってここへ来たんです」
「友人がここに? 敵に連れ去られたのか?」
「いいえ、違います……そういうワケではありません」
と少女の一人が俯き言った。
そんな子供の様子を見た姫はそんな悲しそうな顔をしている子供たちを放って置くことも出来ず時間はないが話しを聞く事にした。
「そうか……君たちの友人はディープの一員だったのか」
「ディープ……?」
と落合が聞く
「今回のこの騒動を引き起こした連中の名だ」
と姫は落合の目を見て言った。
(よーし、姫も俺の正体に気付いてる様子はないな、やったね)
「で、でもニナは何の理由もなく人を傷つけるような子じゃないんです! なにか理由があるはず!」
「それを直接本人に会って聞こうとしているワケじゃな?」
「はい」
「……そうか、しかしヌシ等を危険な目に遭わせるワケにはいかぬ、ここはワシ等を信じ、ヌシ等は学園に戻れ」
「でも――」
と少女が姫に向かって言った時
けたたましい地響きと共に辺りのビルが次々と倒壊を始める
「十十!」
十十はその身を大きく広げ落合や姫たちの上に覆い被さった。
「走るぞ! ついてこい!」
「は、はいぃ……!」
半分混乱しながらも少年少女たちは姫の後を追う
がしかし
「!?」
姫たちの足下のアスファルト製の地面が崩れ、そのまま全員地下に落ちて行ってしまったのだった。
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