1-5 聖女召喚 5
二人がファベルに案内されて、通された部屋は大きな部屋だった。部屋の中央には十人以上が一度に座れるほどの長いテーブルがあり、その上に真っ白なクロスが敷かれてあった。椅子も淵には金色が入っていて、かなり豪華な椅子だと一目でわかるようなものだ。そして、テーブルには王様の分と、龍樹と小鳥の分しか載っていない。テーブルの一番奥に食器などが置いてあり、その正面の二席に同じものが置いてある。彼らから見れば、それは高級レストランでしかないような織機の並べ方をしていて、ナイフやフォークなどが綺麗に並べられている。彼らは一応、マナーはちしきとしては知っているが、それを使ったこともないため、それを見ただけで、緊張していた。
「さぁ、こちらに来て座ってほしい。夕食を食べよう」
王様がそういうと、一番に席に座った。それは彼らが気を遣わないようにするための行動だったが、彼らはそんなことには気が付かずに、王様と対面する席に座った。そして、ファベル以外のメイドも入ってきて、料理を並べていく。見た目にはどこかで見たような洋風の料理のようだが、材料が肉か野菜かくらいしかわからない。とりあえずは、目の前にはパンが入ったバケットと野菜スープらしきものに、鶏肉を使ったような料理がそこに並べられていた。見た目にはおいしそうな色や盛り付けをしているが、それがどんな味をするのかは想像つかなかった。
そもそも、二人はあまり舌が肥えているわけではない。元の世界においても、コンビニ弁当ですらおいしいと感じるし、チェーン店のファミレスに入れば、よりおいしいと感る程度の舌だ。好き嫌いは多少はあれど、何を食べてもおいしいをと思える程度の舌しか持っていないのだ。
王様がナイフとフォークを使って、綺麗に上品に鶏肉っぽい料理を口に運んだ。二人は彼と同じようにして、料理を口に運んだ。その瞬間、小鳥の目が輝いた。どうやら、彼女はその料理が好きだったようだ。彼女はそのまま、ナイフとフォークを使って、一口サイズに切り分けて、口に運んでいく。その様子を王様は微笑ましく見ていた。
「口に合ったようでよかった。異世界の人はどんなものを食べているかわからなかったから、一般的な料理を出させてもらったのだが、おいしかったようでよかった」
「小鳥も喜んでるよ。ありがとう、王様」
小鳥は食事に夢中で、二人の話は聞いていない。料理を一人で食べ勧める彼女をとがめることなく、龍樹と王は会話しながら、料理を食べ勧める。その中で、先ほどの文字についての話をすると、二つ返事で受けてくれた。魔法を教えてくれる講師が文字を教えることができるらしく、その人がそれを引き受けてくれるように手配してくれるようだ。
お互いに食事が終わって、ひと段落した後、王様は愚息のことだが、と前置きして、話始めた。
「まずは、改めて謝罪を。本当に不躾なやつですまなかった。教育はしているつもりなのだが、どうしても甘くなっていしまってな。それで、愚息の処遇だが、とりあえず、君たちに近づかせないということに決まった。さらにこれから罰が追加されていくかもしれないが、それはベルシャインが考えなしだったからな。仕方なない。だが、どうか処刑や国外追放にだけはしないでやってほしい」
龍樹はそう言われて、小鳥を見た。彼女は彼を見て、首を縦に振っていた。おそらく、彼女の中ではすでに終わったことなのだろう。確かに怖い思いはしたが、今はそれなりにいい待遇を受けているせいで、かなり機嫌がいいようだ。
「小鳥も気にしないって言ってるから、俺たちに近づかせないというなら、それでいい。まぁ、王子様が俺を突破して、小鳥に近づくなんて無理だとは思うけど」
王様は息子を悪く言われたことを笑って流した。王自身も息子が彼に勝てるとは思っていないのだ。そもそも、この国を救うために召喚したというのに、王子に負ける程度の実力しかないなら、召喚した意味がない。彼にとっては王子よりも強いというのは召喚するにあたっては、前提条件に過ぎない。それが聖女ではなく、その付き人だったというだけの話なのだ。
夕食も終わり、ファベルに案内されて、自室に戻る。広い王宮の道順は未だに覚えていなかったため、案内してもらえるのは助かる。
「シャワーを浴びるのでしたら、お着替えはキャビネットに入っております。タオルなどもご自由にお使いください。着終わったものや使い終わったものは、この部屋に置いておいてくだされば、こちらで洗濯などさせていただきます。それでは、明日の朝にまたお声をかけさせていただきます。ごゆっくりお休みください」
彼女は淡々とそれだけ言うと、一礼して、部屋から出て行った。小鳥は既に疲れた様子で、眠そうだった。彼女を先に風呂に入るように促して、その後に龍樹が入った。彼が風呂から上がると、既にベッドで小鳥が眠っていた。
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