ただ生きる

・リカルド

悪夢は見なかった。

あの夜、聖女に何をするのもあきらめ、寝た。

聖女が添い寝していた。寝言でも言っただろうか。


ミーア。フィーナ。姫。

心配かけた。

皆の好意が有難い。俺は転生者。俺の精神年齢からすれば、彼女たちは皆娘に等しい少女達。

だが、思う。


ミーアは真摯だ。俺のようなやつに忠実に仕えてくれている。

上司に不満ばかり持って、適当に仕事していた”俺”とは違う。


フィーナも真面目だ。そして善良だ。

その在り方が眩し過ぎる。


姫は芯が強い。剛毅果断とでも言おうか。

俺のような優柔不断の”愚図”と違うな。


俺は歳ばかり取った。

いつまでも子供で、周りに流され、社会に依存し、中途半端な生き方をしてきた。

”適当”でいい加減。

・・・悪い意味で・・・

彼女たちを娘のように思うだなんて、おかしな話だ。俺より随分立派な大人。


俺に向けてくれる好意はわかる。その覚悟も。

だが、俺は”その重さ”に釣り合わない。


やめよう。

俺は生きる。ただ生きる。狡く、自分の幸せを目指して、ただ、ただ生きるのだ。


・・・・・・


商会のみんな。

心配かけたな。

補給を命ぜられたが、危険だと思った。皆にも相談した。調べてくれた。やはり危険だった。

なのに俺に付いてきてくれた。本当の意味で、命が助かった。ありがたかった。

6名死んだ。3名は柵の中。後の3名は俺についてきて死んだ。


カール。マルコ。ジョン。

俺が姫を援護に行こうとして、とっさに護衛についてきた。柵の外。俺の護衛にならなければ死なずに済んだと思う。

俺の判断が殺した。そんな罪悪感がある。


ポール。カルロ。ピエール。

柵の中で死んだ。彼らは荷駄隊に参加する危険性はわかっていたはずだ。自己責任だ。

俺のせいではない。俺のせいではない。

・・・そんな訳ないな・・・


敵。

ダイナマイトで沢山殺した。

俺のせいか?でも、俺を殺しに来ている。当然だ?


・・・

死者にも、俺にとって階級がある。

変な話だ。


遠くの国で、勝手に戦って死んだ人。

俺のせいではない。命が軽い。

変な話だ。なにか間違っている。



やめよう。

考えるのをやめよう。

俺は生きる。ただ生きる。狡く、自分の幸せを目指して、ただ、ただ生きるのだ。


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