目覚め

・リカルド


 長い夢を見ている。

 何回もの死。殴られたり刺されて内臓がはみ出たり。

 自分が死んでゆく。

 だが、これは前世の記憶とは違う。


 夢だ。


 夢は脳が記憶を整理する過程で見る。

 戦場でみた悲劇。この記憶を脳が整理しているのだ。夢だ。

 

 前世の死の記憶に比べ、鮮明さに欠けている。

 そうだ夢だ。夢であってくれ。


 俺は、夢の中でも夢だとわかることがある。今回もそうだ。考えることに、つじつまが合ってない。それを分かれば、俺は破局前に目を覚ますことができるはずだ。


 そんなことまで考えられるのに、今回は起きられない。

 体がしびれている。何も動かせない。

 永遠と続く悪夢に縛り付けられた罪人。


 そうだ。これが地獄なのだろう。とうとう堕ちてしまったか。


 ダイナマイトはどうなるのだろう。この世界を破滅に導いたのは俺になってしまうのか!道路工事や鉱山開発には必須だ。だから開発した。たくさんの奴隷が苦役に喘いでいるのを、見ていられなかったからだ。

 奴隷達は解放した。私の商社に吸収した。できるだけのことはした。善行だ。

 こんな所に堕とされる謂れはない。神よ、間違っている!

 

 突然口の中に、さわやかな柑橘の香りが広がった。ほしい。もっとだ。天を恨みながらも、それでも救いを求める。渇きを癒す雫。もっと欲しいと舌を突き出すと、舌を、何かがくすぐってくる。

 急に尿意に襲われた。そして右足の痛み。そして呼ばれた。

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