報告

・第一王女 メイティール


 司令部に行きリカルドが取次ぎを願うと、いやな目をした近衛兵が拒絶してきた。

 付いてきて良かった。私を認めた近衛兵は、あわてて取次ぎ、謁見の許可を持ってきた。


「元帥。報告したいことがあり参りました。」

 リカルドが言うと、兄上は面倒くさそうに我々を見て言った。

「メイティールも来ておったのか。ご苦労。だが今は蛮勇王が降伏してきての。明日にも詫びに来る。わしは忙しいのじゃ。後にできぬか?」

 

「兄上。蛮勇王の降伏は擬態ではありませぬか?油断召されぬよう願います」

「擬態じゃと?じゃが、敵兵力はわずか4千。わが軍は1万を超える。蛮勇王は恐れて降伏してきたのじゃ。それが擬態であろうと既に半包囲済み。何もできぬ。メイティールも意外と小心者じゃの」

 兄上の近習どもめ。笑い声をあげている。やはり歓迎されぬか。


 リカルドが手を挙げ発言を請うた。

「突然ながら隣国の賢者フルシーの動向について、なにかご存じないでしょうか?」

「フルシーだと?それがどうした?誰か知っておるか?」

 近習や近衛は首をかしげるばかりだ。

 将軍が言った。

「元帥。とくに知りませぬ。だがリカルドくん。フルシー殿は確かに高名ながら、わが軍は無敵。たとえフルシー殿が敵に回ったとしても、何もできぬ。問題ない」

「将軍。蛮勇王が隣国と組み、賢者フルシーをここへ派遣したとの噂があります。さらにその賢者は、なにやら新たな術を編み出しているとのことです」

「なんと!」

「リカルド君。新たな術とは?」

「大型のファイヤーボールです。直径3mにも及ぶとの噂があります」

「!」

皆が一瞬驚いたが、近習が言った。

「リカルド君は魔術が使えないからわからないかもしれないが、そんな大きなファイヤーボールはおとぎ話だよ。お父君にも教わらなかったのかな?」

司令部は笑いにつつまれた。


近習や近衛兵があからさまにバカにしたやじを飛ばす。

誰だ。私のリカルドを侮辱する奴は。

リカルドは辛そうだ。 

「リカルドくん。君の情報は確かなのかね?」

「商人たちの噂になった情報です。確認をさせている最中です」

「商人の噂話などで我々を煩わせるな!下がれ!」

「は!申し訳ありませんでした。失礼いたします」


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