助ける順番

・小聖女 アルフィーナ


 天罰が下った。

 

 遠く離れた戦場から、大きな音が響いてきた。

 聞いたことのない音だ。

  ドーン。

  ドーン。

 しばらくして勝った。だが負傷者多数。至急参られたしと言われた。

 戦場は多くの人が倒れていた。

 血の匂い。うめき声。ひどい。

 とっさに目の前の人を助けようと手をかざすと、

「小聖女様、第二王子様が負傷されています。あとにして下さい」

 着飾った伝令兵に言われて、私は”カッ”となった。

「だめです。この人を見捨てられません。王子を治させたかったら、ここに連れてきてください」

「何を言っている!小聖女の役割は貴族の治癒だ。雑兵など捨て置け。教会から言われなかったか!?」

「いやです。神の前に人はすべて平等です。この人をこのままにしておけません。治させないなら今後、誰も治しません」

 

 倒れた兵士たちが、驚き、そして私にすがるような眼を向けてきた。

 違います。私はただ、与えられた力を正しく使いたい。そうしないと、力が失われてしまうと恐れているだけです。


 強情な私を見て、その伝令兵は、”ムダだ”と言うや否や、この負傷兵を斬り捨てようとした。

 私の侍女が体当たりして止めた。

 まだ動ける兵士も、伝令兵を止めた。

 私は負傷兵に急いで手をかざし、神に祈った。


 内臓が傷ついている。

 白血球さん。ばい菌退治を頑張って。血管さん、つながって。

 大丈夫。まだ使える。神には見放されてない。


 他にも治療を待っている人がいる。急がないと。

 応急の治癒魔法を施し、あとは侍女に頼む。

「持ってきた糸と針で、傷をふさいで。お願い。私は次を見る。」

 次だ。

 足を切られ、頭と胸にも大きな傷が・・・。出血がひどい。

 ごめん。もう治せない。

 目が合った。痛いのだろう。

「神のお導きあらんことを。」

 祈りながら神経ブロックをする。

 ありがとう。そういわれた気がした。

 リカルド様に教わった痛み止め。私の得意な魔法。

 もう、彼にできることはない。次だ。

 第二王子のことなど知らない。

 神のもとに平等。

 そして私は神のご意思によって動く。たくさんの人を救うのだ。

 きっとそれだけが、神罰を避けうる方法だ。

 

 死んでしまった人には申し訳ない。

 だけど、たくさんの人を助けることができた。

 治った人は私を拝む。

 そして思った。

 私は神に愛されている。


 このあたり一帯にいた怪我人達を、皆であらかた治療した。

 そして「もうダメ」と倒れそうになった。

 その時、メイティール様がやってきた。

「アルフィーナ。お願い。リカルドを救って」


 神罰が下った。


 私は真っ暗になって、意識を失ってしまった。

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