第47話 おぉ、凄いですね
暫く真凛ちゃんの可愛さに悶え苦しんでいると、定員さんが注文を取りに来て一瞬焦ったが、無事注文をし終える事が出来た。
店員さんと話していたおかげか、少し冷静さを取り戻せ真凛ちゃんとも普通に話せている。
「蓮兄さんは、この後何見たいですか?」
「この後か」
見たい物は特になく、真凛ちゃんとぶらぶらすると思っていた。真凛ちゃんとならどこでもいいと答えたいけど、初デートをそんな相手任せにしてしまっていいのだろうか。
「えっと、今回って何があるんだっけ」
「蓮兄さん調べてないんですか?」
「…」
そう言われてしまい、黙ってしまう。
普通目的の場所に行って、はい終わりとはならないくらい分かっていたはずなのにどうしてその後の事を考えていなかったんだ。デート慣れしていない事がバレてしまう…
自分の姉と2年付き合っていたのに、デートの一つも碌に出来ないなんてと思われてしまうのだけは阻止しないと。
真凛ちゃんの前ではかっこ悪い所は見せたくない。でも、嘘は付きたくなくて、
「ごめん、真凛ちゃんとならどこでも楽しいから、真凛ちゃんの楽しめる所行ってみたいなって…」
「そ、そうですか、仕方ないですね蓮兄さんは。次のデートでは考えといて下さいね?」
真凛ちゃんは少し恥ずかしそうにすると上目遣いで言って来る。
いつもならちゃんと目を見て返事が出来るのに、上手く出来ない。
真凛ちゃんに次があると言ってくれた事が嬉しくて…次回はきちんとリード出来ればと密かに強く思う。
俺は照れ隠しもかねて若干目を逸らしぎこちなく「うん、次…はね」と言うと、
「お、お願いします…」
小さく聞こえてきてチラッと真凛ちゃんを見ると、恥ずかしそうにしながらもきちんとこちらを見ていた。
透き通るようなその
「お待たせしましたー」
店員さんの声が聞こえなければ、つい好きだと言ってしまう所だった。
一度ふぅと少し長く息を吐き、注文したものが並べられていく机に目を止める。
真凛ちゃんの前にはネギ豚チャーハンとコラボドリンクのヒロインをモチーフにしたウーロン茶が届き、こっちには紫色をした大きいパフェが届く。
因みに俺は主人公のコラボドリンクを頼み、付いてきたコースターは貰えるらしい。
俺は届けてくれた店員さんにお礼を言って目の前のパフェに再び視線を送ると、
「おぉ、凄いですね」
「う、うん。こんなに大きかったんだ」
少し離れていたからはっきりとした大きさまでは分からなかった。そのせいで、あまりの大きさに俺も真凛ちゃんと同様驚いてしまう。
何と比べると分かりやすいだろうか、パッとは出てこないが最近設計図に使ったA4用紙よりも高さがあり、食べきれるか不安になってくる。
「蓮兄さん、全部食べれますか?」
「どうだろ、想像の1.5倍は大きかったからね。真凛ちゃんに手伝って貰わないと流石に無理かな」
「良いですよ?でもただ食べるのは面白みに欠けると思うんですよ」
「うん…ん?面白みって?」
「そうですね。例えば、蓮兄さんが1つひとつ私に食べさせてくれる…とか」
「……、え?」
少し反応が遅れてしまったが、真凛ちゃん今食べさせて欲しいって言ったのか?いやいや、例えばの話だよな。
でも、料理を教えて貰っている時味見と言ってたまに食べさせているし、それの延長と考えれば…
「デートなんですから、そう言う事したいです」
いや無理だわ。
めちゃくちゃ意識してしまう。
でも、真凛ちゃんからそんな事を言って来るなんて思いもしなかった。
真凛ちゃんも俺の事が…
いや、まだ分からないだろ。
結論付けるには早すぎる。
これくらい友達の間でもする事なのに、どうしてだろう持とうとして掴んだスプーンが震えるのは。
緊張しているのかな、家でする時はすんなり出来たのに場所が違うだけで真凛ちゃんとする事なす事がどうも普段通りに出来ない。
「蓮兄さん、無理ならやっぱり――」
「するよ。いや、させて欲しい」
真凛ちゃんが何だか寂しそうな表情をして、言い終わる前に反射的にそう言ってしまった。
考えるよりも前に先に口が動いてしまったのは驚きだけど、初デートなのに真凛ちゃんにそんな顔はして欲しくない。
俺だって別にしたくない訳じゃないしな。
「じゃ、じゃあお願いしますね」
そう言った真凛ちゃんは髪を耳に掛けて目を瞑り、小さな口をゆっくり開ける。
家とは違い大人っぽいせいか、最低かもしれないがとてもエロく見えてしまい、ここが家じゃなくてよかったと思ってしまう。
前までこんな風に感じなかったのに、この急激な変化はどうしてなんだろうか。
真凛ちゃんを見る目が邪な物に変わってしまっているなら多分このままじゃいけない気がする。
男がダメでも俺は大丈夫だと言ってくれた事、凄く嬉しかった。
でも、それはこの込み上がって来る邪な感情を向けて良い理由にはならない。
俺は真凛ちゃんに楽しく生きて欲しい。
いつまでも笑顔のまま隣に居て欲しい。
ずっと一緒に居たいから。
パフェに付いている長いスプーンでクリームを掬い真凛ちゃんの口の中に入れると、パクッと口を閉じ頬に手を当てて美味しそうに顔を歪ませる。
可愛いな。
こんな子に怖いって思われるような事は決してできない。
自分の気持ちが徐々にハッキリしてきているのに、その一線を越える勇気が中々出てこなくて告白をする事を先送りにしてしまう。
徹の話ちゃんと聞いて置けば良かった。
どうやって好きな気持ちを伝えたのか、勇気はどうやって出したのか。これは誰かに聞いてどうなる物でもないとは分かっているけど、弱い自分が足を引っ張って来るんだ。
こんな調子で告白出来るんだろうか。
俺は真凛ちゃんに2口目を入れながら考え込んだ。
∩ ∩
(・×・)
パフェ美味しい。
この甘さの暴力、癖になりそう。
紫芋を使っていて、純正の生クリームと比べると甘さは控えめだけどケーキとは違いクリームだけというのが身体に悪い物を食べている感が堪らない。
しかも蓮兄さんに食べさせて貰っているからさらに甘さが増している気がする。最高…
私も蓮兄さんにあーんしてあげたいなぁ。
そんな事を思いながら瞑っていた目を開けると、蓮兄さんは少し難しい顔をしていた。
「蓮兄さん、どうかしました?」
「え?あ、いや何でもないよ。それよりもはい、口開けて?」
そう言った蓮兄さんは笑顔を作って次のクリームを口の前に持って来てくれる。
それを口の中に入れて味わう。
「美味しい?」
「は、はい」
美味しい、はずなのにさっきの何かを考えている顔が気になって甘さをあまり感じなかった。
何を考えているんだろう、そう思い始めると色んな物が出てきて止まらない。
私となら楽しいって言ってくれていても本当はどうなのか分からない。
やっぱり私よりもお姉ちゃんが良いのかな…
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次回:第48話 何か私に言いたい事ないですか?
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